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図表で見る米国株テスラ(TESLA)の2025年3月期(1Q)決算と株価動向分析

(画像=iStock)

 2024年の米大統領選挙で、ドナルド・トランプ候補支持を表明したイーロン・マスク氏。同氏がトランプ陣営に参加したことは、トランプ大統領の勝利に大きな影響を与えました。その後、トランプ候補が大統領に就任すると、米国政府の支出削減、官僚制度の簡素化など、効率性と生産性向上を目的に鳴物入りで発足した「DOGE(米国政府効率化省)」を、マスク氏が「特別職員」として率いることが発表され、大きな話題となりました。

 ご存知の通り、マスク氏は電動自動車と自動運転の最前線を走るテスラ(TESLA)社の経営者です。テスラ(TESLA)は米国株式市場を牽引するハイテク関連株のひとつです。果たしてマスク氏は、トランプ政権での仕事と実業家としての仕事を、両立させることができるのか?投資家のみならず、多くの人たちから注目を集めています。今回はマスク氏が「二刀流」となって初めて迎えたテスラ(TESLA)社の2025年3月(FY25 1Q:第1四半期)の決算内容を、図表を用いながら分析してみます。

テスラ(TESLA)の損益計算書

 まずは損益計算書です。2025年3月期(FY25 1Q)ベースと2020年から2024年までの通期ベースの両方を使って分析します。

 

(1)売上高の成長鈍化

 四半期毎の売上高と2025年3月期(FY25 1Q)の売上高を比較します。

・売上高:19,335百万ドル(前年同期比△9.2%)

 前年同期(FY24 1Q)の21,301百万ドルから、19,335百万ドルまで落ち込んでいます。これはEV市場の需要調整や価格競争激化などが影響していると考えられます。

 続いて2020年~2024年の通期で比較してみます。

・売上高の推移:2020年:31,536 → 2021年:53,823 → 2022年:81,462 → 2023年:96,773 → 2024年:97,690

・売上高成長率:2021+70.7%、2022+51.4%、2023+18.8%、2024+0.95%

 2020~22年にかけてテスラ(TESLA)の売上高は急上昇しました。2023年も売上高成長率は18.8%と伸びを維持しましたが、2024年の売上高はほぼ横ばいとなり、成長の節目を迎えたことが分かります。

(2)営業利益・営業利益率の変動

 今度は営業利益について、四半期毎のデータと2025年3月期(FY25 1Q)を比較します。

・営業利益:493百万ドル(営業利益率2.1%、前年同期比△65.9%)

 売上急減の結果、固定費負担が相対的に増加したことで、利益率は過去最低水準にまで低下しました。

 それでは2020年~2024年の通期ベースで営業利益を比較してみましょう。

・営業利益の推移:2020年1,951 → 2021年6,523 → 2022年13,692 → 2023年8,891 → 2024年7,659

・営業利益成長率:2021+234.3%、2022+109.9%、2023△35.1%、2024△13.9%

 営業利益は2021~22年にかけてスケールメリットで急拡大しましたが、2023年以降はコスト高と競争圧力で減少に転じています。FY25 1Qの営業利益率は2.1%です。これは「売上100ドルに対して営業利益が2.1ドルしか残らない」ことを意味しています。

 日本の自動車メーカーの営業利益率は約4.5%〜12%ですから、テスラ(TESLA)の2.1%は非常に低い水準です 。テスラ(TESLA)自身も通期ベースでは2023~2024年に6~8%台の営業利益率を維持しています。FY25 1Qの2.1%は「同社の最近の実績を大きく下回る水準」です。

 営業利益率が2.1%というのは、売上の大半がコストに吸われ、利益余地が非常に小さいことを示しており、「小さなコスト増で利益がすぐに圧迫されるリスクが高い状態」と言えます。

(3)純利益の大幅減少

 過去の四半期毎の純利益と2025年3月期(FY25 1Q)の純利益を比較します。

・四半期純利益:409百万ドル(前期比△70.6%)

 研究開発費や設備投資の先行コスト増が響き、純利益も大幅に減少しました。

 続いて2020年~2024年の通期ベースで純利益を見てみます。

・当期利益:2020年721 → 2021年5,519 → 2022年12,556 → 2023年14,997 → 2024年7,091

・当期利益成長率:2021+665.5%、2022+127.5%、2023+19.4%、2024△52.7%

 2021~22年の税制メリットや営業利益拡大で急増した純利益は、2024年に一過性要因の剥落で半減しました。

(4)EPS と投資家評価(PER/PBR)の推移

  1)EPS※1は2020年の0.21ドルから2023年に4.30ドルまで上昇後、2024年は2.04ドルに反落しています。

 2)PER※2は2020年の1,110倍から2022年に34倍へ低下したものの、2024年は198倍と再び高水準に戻しています。

 3)PBR※3は2022年の8.7倍が「底」で、2024年には17.8倍まで上昇しています。

※1EPS:一株あたりの当期利益。
※2PER:株価を一株あたりの当期利益で割った値。数値が大きいと株価は割高。
※3PBR:株価を一株あたりの純資産で割った値。1倍未満は割安、1倍以上は割高。

テスラ(TESLA)の貸借対照表

 続いて貸借対照表のデータから分析してみます。



(5)資産の拡大

・FY2020–FY2024

 流動資産は26,717→58,360百万ドルと約2.2倍に増加。固定資産は25,431→63,710百万ドルと約2.5倍に増加しています。これは事業拡大に伴う運転資金(在庫・売掛金・現金)の積み上げと、生産・研究設備への投資が継続的に行われているからです。

・FY25 1Q

 流動資産は58,360→59,389百万ドル(+1,029百万ドル)、固定資産は63,710→65,722百万ドル(+2,012百万ドル)と引き続き増加しています。言い換えると、四半期ベースでも生産能力強化や運転資金の確保が継続していることがうかがえます。

(6)負債の推移

・FY2020–FY2024

 流動負債は14,248→28,821百万ドルと約2倍に増加。固定負債は14,221→19,569百万ドルに増加しています。運転資金の需要が高まり、短期債務が増加しているのと、設備投資資金の一部を長期借入でまかなう動きが見られます。

・FY25 1Q

 流動負債は28,821→29,753百万ドル(+932百万ドル)。固定負債は19,569→19,940百万ドル(+371百万ドル)といずれも増加しています。資産増にともなう負債の積み増しで、キャッシュフローバランスを保とうとする姿勢が浮き彫りになりました。

(7)純資産の積み上げ

・FY2020–FY2024

 純資産は23,679→73,680百万ドルと約3.1倍に拡大。内部留保の蓄積や増資によって自己資本を厚くし、財務基盤の強化が進んでいます。

・FY25 1Q

 純資産は73,680→75,418百万ドル(+1,738百万ドル)に増加しました。利益剰余金の積み増しが続き、四半期でも着実に自己資本が伸びています。

(8)流動比率の動向

・FY2020–FY2024

 流動比率(流動資産÷流動負債)は187.5%→202.5%に改善しました。短期債務の増加以上に流動資産を積み増して、支払余力を強化しています。

・FY25 1Q

 流動比率は202.49%→199.61%(△2.88ポイント)。わずかに低下したものの、依然として200%近い高水準を維持し、短期的な資金繰りリスクは低い状態です。

(9)自己資本比率の動向

・FY2020–FY2024

 自己資本比率(純資産÷総資産)は45.4%→60.4%へ上昇しています。資産増とバランスを取るように自己資本をより厚くすることで、借入依存度を低減し、財務健全性を高める努力をしています。

・FY25 1Q

 自己資本比率は60.36%→60.28%(△0.08ポイント)。四半期単位でもほぼ横ばいで高水準を維持。中長期的な安定性が担保されています。

 テスラはFY2020~FY2024にかけて、資産・負債・純資産のいずれも大きく拡大させつつ、流動比率・自己資本比率を改善してきました。FY25 1Qでも同様のトレンドが継続し、「成長投資を積極的に行いながらも、短期・長期の安全余力を高いレベルで維持する財務運営を続けている」と考えられます。

テスラ(TESLA)のキャッシュフロー計算書

 さて、最後にキャッシュフロー計算書を見てみましょう。

(10)営業キャッシュ・フロー(営業CF)の動向

・FY2020–FY2024

 営業CFはFY2020の+5,943からFY2022に+14,724まで拡大し、その後FY2023+13,256、FY2024+14,923と高水準を維持しています。本業の売上増加に加えて、運転資本の効率改善や減価償却費といった非現金費用がキャッシュ創出を下支えしており、テスラの事業モデルの強固なキャッシュ力がうかがえます。

・FY25 1Q

 1Q単独では+2,156。FY2024の月平均(約1,244)を上回るペースながら、四半期平均(約3,731)には届かず、季節要因や設備稼働調整の影響で、やや落ち着いた水準です。それでも、依然として本業で20億ドル超を稼ぎ出せる力強さを示しています。

(11) 投資キャッシュ・フロー(投資CF)の動向

・FY2020–FY2024

投資CFはFY2020の△3,132から年々マイナス幅が拡大し、FY2024には△18,787に達しました。これは工場建設やバッテリー技術開発、研究設備への先行投資の激増を反映しています。

・FY25 1Q

1Q単独の投資CFは△1,651と通期平均(約△4,697)を大きく下回る支出状況です。年度初めは投資ペースを抑制しつつ、四半期後半で再び積極投資に転換する可能性があります。短期的にはやや慎重な投資姿勢を見せています。

(12)財務キャッシュ・フロー(財務CF)の動向

・FY2020–FY2024

財務CFはFY2020に+9,973と大きな資金調達を行った後、FY2021は△5,203、FY2022は△3,527で、自社株買いや借入返済が主因となりました。FY2023は+2,589、2024は+3,853と再びプラスに転換し、増資や長期借入で投資資金を一部賄っています。

・FY25 1Q

1Q単独は△332と小幅にマイナス。まだ四半期ベースの株主還元(自社株買いなど)や借入返済を継続していますが、その規模は通期平均の約△771(FY2021–24平均)を下回り、2025年度は財務CFの自己資本・負債バランスを、より慎重に調整するフェーズに入っているようです。

 FY2020–FY2024の通期ベースでは、営業CFの急拡大に対して、投資CFのマイナス拡大が並走し、財務CFで不足資金を調達する構図でした。FY25 Q1では、営業CFは堅調ながら、やや四半期平均を下回る伸びとなっており、投資CFは一時的に抑制、財務CFは引き続き自己株買いなどから、マイナスという組み合わせで、「本業でのキャッシュ創出力を維持しつつ、投資と株主還元のバランスを四半期ごとに微調整する」戦略が鮮明になっています。この流れを注視することで、テスラの財務戦略と成長投資の度合いは的確に把握できるでしょう。

 以上が、テスラ(TESLA)のFY2020~FY2024の通期データと2025年3月期1Qの最新データを横断的に分析した結果です。

テスラ(TESLA) 2025年3月期(1Q)決算の総括 

 最後に改めてポイントを整理します。

 損益計算書(P/L)では、2022年までの急成長期に売上・利益が飛躍的に拡大したものの、その反動もあり2023~2024年は成長率・利益率は急速に鈍化しました。FY25 1Qでは売上・営業利益ともに前期比で大きく落ち込み、採算性の課題が浮き彫りになっています。

 貸借対照表(B/S)では、FY2020~FY2024で流動・固定資産が2倍以上に膨張しましたが、自己資本比率を45%→60%へ高めることで堅固な体質を構築しています。FY25 1Qにおいても資産・負債・純資産の増減で「成長投資と安全性の両立」を継続しています。

 キャッシュ・フロー計算書(C/F)では、営業CFの高水準維持に対し、投資CFの大幅マイナスが先行しています。財務CFで調達と株主還元を組み合わせる構図が、FY2020~FY2024に定着し、FY25 1Qでも同様のバランス調整が見られます。

 通期ベースで見ると、テスラは「本業で稼ぐ力」「先行投資を続ける力」「資金調達と還元を両立する力」を総合的に運用し、極めて強力な財務基盤を築いてきました。他方で、2025年3月期(FY25 1Q)は、成長の一服感が鮮明になっており、今後はコスト構造の改善や新しい収益源の確保が再成長の鍵になるでしょう。トランプ政権での特別職員という仕事は期限付きですが、最近はイーロン・マスク氏の退任を巡る報道も出ています。2025年3月期(FY25 1Q)の減益は、マスク氏の政治的な言動に対する不買運動の結果という見方もあります。今後テスラ(TESLA)がどのような対策を取るのか、引き続き決算報告書の内容から分析していきたいと思います。

(本文ここまで)

 
岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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