執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年5月23日 12時25分
欧州通貨は底堅い展開か、円の動向次第で波乱も
ユーロ/円・ポンド/円、円高・米ドル安で値幅限定
ユーロ/円、ポンド/円はレンジ相場で推移しました。米ドル安と円高が互いに値動きを打ち消し合い、ユーロ/円は161.791円~163.410円、ポンド/円は191.896円~194.223円の限られた値幅での推移となりました。
また、英国の消費者物価指数は総合の前年比が3月の2.6%から3.5%へ上昇し、インフレ加速への警戒レベルが上がりました。ただ、4月は再加速が予測されていたため、ポンド/円相場への影響は限定され、やや拍子抜けする場面も見られました。(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
クロス円、円の動向を警戒もレンジプレイが継続
欧州連合(EU)は、米国に対して非重要農産物や工業製品の関税を段階的にゼロにすることを盛り込んだ修正案を提示したようです。この案には、国際的な労働権や環境基準、経済安全保障といった、米国が関心を示しそうな事項も含まれています。ただし、正式な交渉を開始するには、加盟国から交渉権限をEUが得る必要があり、通商交渉の合意には時間がかかると見られています。
こうした不確実性はユーロの上値を抑える要因となりますが、一方で米国の財政健全性に対する不安から欧州へ資金を移す動きも進んでおり、域内への資金流入がユーロの下値を支えると考えられます。そのため、ユーロは底堅い展開が続く可能性があります。ただし、ユーロ/円は米ドル安に伴う円高の影響を受けやすく、上値の重い展開になりやすいと見られます。
また、英国の4月消費者物価指数は、総合が3月の前年比2.6%から3.5%へ上昇し、サービス分野のインフレ率も3月の4.7%から5.4%に急上昇しました。この結果を受け、英中銀の6月追加利下げ期待はほぼ消滅しました。市場が次回の利下げを完全に織り込んでいるのは11月会合とされるなど、英中銀の利下げペースは鈍化しています。そのためユーロ圏、豪州、NZなどハト派寄りの政策を維持する国との金融政策の格差から、ユーロ、豪ドル、NZドルに対してポンドは底堅い推移が期待されます。ポンド/円もこうした部分が支えになり下値が限定されると見ますが、円の影響も受けやすいため、ポンドと円の力関係が拮抗して方向が見定めにくい展開となるのではないかと考えています。
ポンド/円、196円付近への戻りを期待(テクニカル分析)
ユーロ/円は短期サポートラインを下抜けました。ただし、下方向には200日移動平均線や日足一目均衡表の雲が位置しており、ユーロ/円に対するサポート力は比較的強いように感じられます。そのため、仮に下方向を試したとしても、一目均衡表の雲の下限付近である160.00円前後では押し目買いが入り、下げ渋る可能性が高いと考えています。
また、ポンド/円は昨年10月の高値199.805円から伸びる下降トレンドラインが上値を抑え、調整の動きが進んでいます。しかし、執筆時点で191.95円の日足一目均衡表・基準線付近で下げが一服しているほか、192.60円付近の200日線も支持線のままと判断できるため、目先、196円付近までの反発は想定されると見ています。もっとも、上昇の勢いが限定的な中、5月9日から12日にかけて形成された窓埋めに失敗し、下方向への調整が進む場合は、190.00円を目指す展開となる可能性もあると考えています。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:159.800-164.800
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:190.000-196.000
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一言コメント
イスラエルがイランの核施設攻撃を計画していると報じられた直後に、米ワシントンでイスラエル大使館職員が殺害されるなど、不穏なニュースが続いています。大使館職員殺害は単独犯行と考えられますが、もし組織的な犯行だった場合、中東リスクがさらに高まる可能性があるため、警戒が必要です。
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