【外為総研 House View】
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円 2月の推移
・2月の各市場
・2月のユーロ/円ポジション動向
・3月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 3月の見通し
ユーロ/円
ユーロ/円の基調と予想レンジ
ユーロ/円 2月の推移
2月のユーロ/円相場は154.798~161.190円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約2.9%下落した(ユーロ安・円高)。米国の関税発動を巡る不透明感からユーロは下方向に「マド」を開けてスタート。米国がカナダとメキシコへの関税発動を1カ月先送りすると発表したため持ち直したものの上値は重かった。トランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領がウクライナ戦争の停戦協議で合意したことを好感して13日には161.19円前後まで上昇したが、やはり上値は重くユーロ買いは続かなかった。一方で、ドイツの景気後退を巡る過度な懸念が和らぐ中、独DAX指数は連日で上昇し、19日には過去最高値を更新。ユーロも対ドルでは底堅く推移した。米国のトランプ大統領が打ち出す関税政策を巡る不透明感が米景気の先行き不安に繋がりドルの重しとなった面もある。一方で、日銀の追加利上げ観測などを背景に円が強含んだことがユーロ/円の下落に影響した。28日には154.80円前後まで下値を切り下げて2024年8月以来、およそ半年ぶりの安値を付ける場面もあった。
始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
158.460 | 161.190 | 154.798 | 156.233 |
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
3日
ユーロ圏1月消費者物価指数(HICP)・速報値は、前年比+2.5%と市場予想や前月(ともに+2.4%)を上回る伸びとなった。食品とエネルギーを除いたHICPコア指数は前年比+2.7%と市場予想(+2.6%)を上回り前月から横ばいだった。
7日
独12月鉱工業生産は前月比-2.4%と予想(-0.7%)を超える大幅な落ち込みとなった。一方、同時に発表された独12月貿易収支は207億ユーロの黒字となり、輸出の増加を背景に黒字額は市場予想(170億ユーロ)を上回った。米国のトランプ大統領は、貿易相手国と同様の関税を課す「相互関税」の導入計画を来週にも公表する考えを示した。
10日
トランプ米大統領は、すべての国からの鉄鋼・アルミニウムの輸入に25%の関税を課す考えを発表。欧州中銀(ECB)のラガルド総裁は、「ユーロ圏におけるディスインフレ(物価鈍化)のプロセスは順調に進行している」と述べた上で、「世界的な貿易摩擦の増大は、域内のインフレ見通しをより不確実にするだろう」と言明した。
12日
トランプ米大統領は、ロシアのプーチン大統領と電話会談を行ったことを明らかにした。直後には、ウクライナ停戦に向けてプーチン大統領と合意したとも伝わった。
18日
独2月ZEW景気期待指数は26.0と市場予想(20.0)を上回り、前月(10.3)から上昇した。ZEW (欧州経済センター)は「新政権に行動力があるとの期待から楽観度が高まった可能性がある」とし、「停滞状態の個人消費が向こう半年の間に勢いづくことも予想される」との見解を示した。
21日
独2月製造業PMI・速報値は46.1、同サービス業PMI・速報値は52.2(予想45.5、52.5)、ユーロ圏2月製造業PMI・速報値は47.3、同サービス業PMI・速報値は50.7だった(予想47.0、51.5)。
24日
前日に行われた独総選挙の出口調査で、中道右派の最大野党キリスト教民主・社会同盟 (CDU・CSU)が勝利する見込みとなった。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が2位に躍進したものの想定内で、選挙に波乱がなかったとの受け止めからユーロは小幅高で取引を開始した。その後、CDUのメルツ党首はAfDと連立協議を行わない考えをあらためて表明。前与党の中道左派「ドイツ社会民主党(SPD)」との連立を模索する姿勢を示した。独2月IFO企業景況感は85.2と市場予想(85.8)を下回り前月から横ばいとなった。
25日
ECBは10-12月期妥結賃金が前年比+4.1%と7-9月期の+5.4%から減速したと発表。 その後、ドイツ連銀のナーゲル総裁は「インフレは今年半ばまでに目標値に戻るだろう」とした上で「私たちは、制限的な領域をほぼ脱し、中立的な領域に近づいている」との見方を示した。ECBのシュナーベル専務理事も、利下げについて「慎重に進むべきだ」と述べ、「われわれの政策が景気抑制的だともはや自信を持って言うことはできない」と続けた。
27日
ECBは4会合連続の利下げを決めた1月理事会の議事録を公表。「現在の中銀預金金利でも、金融政策は依然として景気抑制的であるとの評価が比較的妥当との認識が広くあった」として追加利下げの余地があることを示唆。米国のトランプ大統領が、前日に再延期を表明していたカナダとメキシコに対する関税を予定通りに3月4日に発動すると発表したことも相まってユーロが下落した。
28日
ウクライナ戦争の停戦に向けてゼレンスキー大統領とトランプ米大統領が会談。外交的解決を目指すべきとした米側の発言にゼレンスキー大統領が疑問を投げかけたことをきっかけにムードが急速に悪化。トランプ氏は「あなたは我々に指図する立場にない」「あなたは数百万人の命と第三次世界大戦を賭けたギャンブルをしている。やっていることは米国に対して非常に失礼だ」とまくしたてた。その結果、鉱物資源に関する協定署名は見送られ、昼食会や共同会見も中止になった。
2月の各市場
2月のユーロ/円ポジション動向
【情報提供:外為どっとコム】
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3月のユーロ圏注目イベント
ユーロ/円 3月の見通し
米国のトランプ大統領は、欧州連合(EU)からの輸入に対する25%の関税を課す可能性に言及。さらに「分野別関税」の一環として、EUからの輸入が多い自動車にも25%の関税を課す計画を打ち出している。EU側は米国との対話を重視する姿勢を示しているものの、2月28日にホワイトハウスでトランプ氏と会談したフランスのマクロン大統領は、関税を回避できるという希望を持てないまま米国を後にしたと述べた。現在2.5%の対EU自動車関税が大幅に引き上げられることになれば、自動車大国のドイツを中心に景気下振れリスクが意識されることになり、ユーロの重しになるだろう。また、3月6日の欧州中銀(ECB)理事会では5会合連続の利下げが決まる可能性が高く、政策金利である預金ファシリティ金利は2.75%から2.50%に引き下げられる見通しだ。現時点では3月に続き4月にも6会合連続の利下げを行うとの見方が優勢となっている。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は3月18-19日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を4.25%-4.50%に据え置くことがほぼ確実だ。市場は続く5月FOMCも金利据え置きを見込んでいる。欧・米の金融政策スタンスの違いからユーロ安・ドル高圧力がかかりやすい地合いと言えそうだ。日銀の利上げ観測がくすぶり続けているものの、市場は早くても利上げは7月と見ており、3月18-19日の金融政策決定会合で利上げ前倒しの観測が強まらなければ、円がユーロに対して大きく上昇する展開にはなりにくいだろう。ユーロ/ドルの下落とドル/円の上昇に挟まれる形で、3月のユーロ/円相場は方向感を欠く値動きが続きそうだ。
(予想レンジ:153.000~159.500円)
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外為どっとコム総合研究所の調査部に所属する外国為替市場の研究員が、FX初心者向けに平日毎日12時ごろからライブ配信を行っています。前日の振り返り、今日の相場ポイントなどをわかりやすく解説しています。YouTubeの「外為どっとコム公式FX初心者ch」でご覧いただけます。

神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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