(画像=PIXTA)
以下の取材記事は金融ライターK氏が執筆したものです。その内容について当社が保証するものではありません。
共和党のドナルド・トランプ氏が2025年1月20日、第47代大統領に就任し、トランプ第2次政権がスタートしました。みなさんは2024年の米大統領選挙後に起きた暗号資産最大手「ビットコイン」の急騰を覚えていますか?トランプ大統領の勝利が確定すると価格は急上昇、その後も高値圏で推移し、就任式の直前には、史上最高値となる10万9,000ドル(約1,700万円)を突破しました。これはトランプ政権下で実行される金融政策が、暗号資産市場の「追い風」になるという期待感から、大量の資金が流れ込んだからです。今後4年にわたって続くトランプ第2次政権下で、暗号資産市場はどうなるのでしょうか?トランプ大統領が掲げる金融・経済政策から、暗号資産市場の今後について考えてみました。
暗号資産推進の大統領令
米大統領選挙で「米国を地球上の暗号資産の中心地にする」という公約を掲げたドナルド・トランプ大統領。就任すると「米国第一主義」を実現するとして、次々に大統領令を発布し、1月23日には「暗号資産」振興のための大統領令に署名しました。それはビットコインなどの暗号資産だけではなく、ブロックチェーン技術を用いたすべてのデジタル資産が含まれるという内容で、暗号資産を国家として戦略的に備蓄することやブロックチェーン技術の促進支援などが表明されました。
これによりトランプ大統領は、証券法違反などで多くの暗号資産業者を米国証券取引委員会(SEC)に摘発させてきたバイデン前大統領とは異なる大幅な規制緩和の方針を打ち出したわけです。
トランプ政権の「暗号資産」に関する大統領令の主な内容
・国家経済会議(NEC)下でデジタル資産に関する作業部会設置
・デジタル資産に関する規制の枠組みを半年以内に策定
・ドルの裏付けを持つ合法的で正当性のあるステーブルコインの開発と成長を促進
・作業部会で戦略的なデジタル資産の国家備蓄の評価実施
・作業部会はAI・暗号資産担当のデービッド・サックス氏が議長を務め、司法長官、財務長官、SECなどがメンバーとして参加
・中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行の禁止
作業部会の責任者には、PayPalの元COO(最高執行責任者)で暗号資産推進派のサックス氏が就任しているほか、SEC委員長には暗号資産を支持してきたSEC委員のマーク・ウエダ氏が1月21日から代行委員長を務めています。なお、次期委員長への就任が見込まれているポール・アトキンス氏はブロックチェーンを推進する組織の会長で、暗号資産推進派としても知られています。
このように人事面においても、バイデン政権下で暗号資産業界と対立してきたSECの方針転換を、トランプ大統領は明確に打ち出しています。
また、FRB(連邦制度準備理事会)によるCBDCの発行禁止も暗号資産市場の自由化を後押しするものになるでしょう。トランプ政権で財務長官に就任したヘッジファンド出身のスコット・ベッセント氏が財務長官指名公聴会において、「米国はCBDCを持つ理由がない」と答弁しています。つまり、今後トランプ政権下においては、ビットコインのような民間発行の暗号資産が、暗号資産市場の中心になっていくことが強く予想されるのです。
トランプ家の暗号資産ビジネス
トランプ大統領の家族は、本人も含めて暗号資産ビジネスと深い関わり合いを持っています。大統領選挙が始まる約2カ月前に、ワールドリバティファイナンシャル(WLF)という暗号資産のプラットフォームが立ち上がりました。これは中央銀行によるCBDCに頼らない金融システムとしての機能や、個人間の暗号資産取引が手軽に進められる環境の構築を目指しており、トランプ大統領の子ども3人のうち2人が、WLFの「Web3アンバサダー(大使)」、もうひとりは「分散型金融(DeFI)ビジョナリー(案内人)」に任命されています。加えてトランプ大統領自身も「主席暗号資産推進者(チーフ・クリプト・アドボケート)」という立場で関与しています。
このWLFでは「WLFI」というトークンを発行しており、イーサリアムなどの暗号資産で購入できるようになっています。設立当初はトークンの売上は伸び悩んでいましたが、大統領選挙でトランプ大統領が勝利を収めた後の11月下旬に、暗号資産「トロン」の創始者であるジャスティン・サン氏から3,000万ドル(約50億円)の資金を受けたことで注目を集め、トランプ政権発足までの3カ月で売上を大きく伸ばしました。
現在は固定価格で譲渡できない条件が設定されており、暗号資産取引所に上場していませんから、手軽な投資対象とはいえませんが、WLFは2024年12月以降、イーサリアムやチェーンリンクなどにトークンを使って投資活動を行っており、それに追従した動きも出て、投資を受けた暗号資産の価格が大きく上昇しています。こうしたことから今後の動向に大きな注目が集まっています。
なお、WLFは非営利団体であり、トランプ氏とその家族は出資者でも運営者でもなく、トランプ大統領自身の政治活動とは関係がないという旨が公表されていますが、トランプ大統領の利益相反の可能性を指摘する声もあります。
これとは別に、トランプ大統領が公認した「ミームコイン(※1)」もあります。「TRUMP」という暗号資産は大統領就任式前に取引が開始され、本人がSNSで発行することを発表すると価格は暴騰しました。また、メラニア大統領夫人のミームコイン「MELANIA」も就任式直前に発行されていることを考えると、まさに「家族総出」で暗号資産ビジネスに関わっているといえそうです。
ミームコイン(※1):「ミーム(meme)」とはネット上で拡散される文章や画像、動画などのコンテンツのこと。ミームコインはそうした「ミーム」をもとに開発された暗号資産。ある特定の面白さやコミュニティを重視する人々から人気を集めるため、価格変動が大きくリスクも高い。
暗号資産関連ビジネスの可能性
大統領選挙が始まる直前から自身のことを「クリプト大統領」と名乗り、「暗号資産の推進」を公約にしてきたトランプ政権の誕生は、暗号資産のみならず暗号資産取引所などの関連ビジネスの成長を後押しすることになるでしょう。暗号資産の取引量が増加すれば、当然、暗号資産取引所の取引手数料も増加します。
たとえば、トランプ大統領のミームコイン「TRUMP」は、大統領就任式の直前には時価総額が145億ドル(約2兆2,500億円)を超えました。そのときに暗号資産取引所では、1日に3,500万ドル(約54億2,500万円)を超える取引手数料が発生したということが報道されています。また、米有名経済誌で「世界で最も信頼できる暗号資産取引所」ランキングで第1位に選ばれたコインベースが、トランプ大統領のミームコイン「TRUMP」やメラニア夫人の「MERANIA」を上場させることを発表すると、大きな注目を集めました。
こうしたことから株式市場に上場している暗号資産取引所の株価も上昇しています。NASDAQ市場に上場しているコインベースでは、トランプ政権下で米国のデジタル資産の中核を担うと考えられているビットコインや代表的な暗号資産のイーサリアムの取引仲介量も多く、2024年11月にトランプ大統領の当選が確実になった11月6日の終値は前日比31.11%高の254.11ドルとなり、1日の上昇率としては過去最大を記録しています。
米国株式CFDのコインベースで暗号資産の成長を享受
個人投資家としてもトランプ政権がもたらす暗号資産資産市場の成長を享受したいところですが、「ビットコインなどの暗号資産はボラティリティが高いので、直接投資するのは不安だ」という人も多いのではないでしょうか。
米国では1848年にカリフォルニア州で金が発見され、「一攫千金」を夢見る人たちが全米中から殺到する「ゴールドラッシュ」が起きました。多くの人たちは金脈を探し当てようと必死に地面を掘りました。もちろん、金脈を見つけた人は大金持ちになれますが、掘り当てることは極めて難しく、見つけられなかった人は文無しです。「金探し」は非常にハイリスク・ハイリターンなビジネスだったのです。ところが「ゴールドラッシュ」で長期に渡り利益を得ていた人たちがいます。それは採掘者たちに金探しのための道具や生活必需品、サービスを製造・販売・提供していた人たちなのです。世界的に有名な米国のジーンズブランドはその代表例です。
実は暗号資産と暗号資産取引所の関係はこれと同じです。暗号資産に直接投資する必要はありません。コインベースのような株式市場に上場している暗号資産取引所に投資すれば、日本国内からでも暗号資産市場の成長の恩恵を受けることができます。世界最大の暗号資産取引所であるコインベースの株価は、ビットコインの価格との連動性が高く、トランプ大統領が推進する暗号資産ビジネスの規制緩和はコインベースの業績を高める要因になるでしょう。
米国株の現物は1株からでも購入できますので、コインベースの株式も1株から購入できます。ただ、株価が上昇すれば、購入価格も上昇することになり、投資するために多額の資金が必要になります。その際、株式CFDを使えば、株式への直接投資よりも、少額資金で手軽に投資することができます。またCFDなので株価の下落局面でも利益が狙えます。
ちなみにビットコインのような暗号資産への投資は、総合課税の対象なので最大税率が55%になりますが、CFDはFXなどと同じ申告分離課税の対象なので、税率は20.315%が適用されます。
暗号資産への投資よりも税制的に有利で、株式投資よりも少額から始められるCFDを利用して、トランプ政権下で急拡大が見込まれる暗号資産ビジネスの成長に投資の狙いを定めてみてはどうでしょうか。
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ライターK
大学卒業後、テレビ制作会社に勤務、NHKや民放局の報道番組でディレクターを務める。その後、出版業界に転じて金融・経済誌の編集者や記者として、政治・経済・金融などの記事制作に携わってきた。現在はフリーで活動中。FX歴は10年以上。実際にポジションを持って、FXトレーダーたちのトレード手法を確認する日々を送っている。