総括
FX「11月中旬の円高。円買い介入と日銀利上げに日本は脆弱だが大丈夫か」
11月中旬の円高。円買い介入と日銀利上げに日本は脆弱だが大丈夫か
通貨ごとの注目ポイント
*円通貨10位(10位)、株価6位(7位)、11月中旬は円高の傾向。円買い介入と利上げに耐えられるほど日本経済は強くない
(米大統領選挙後のアップダウンはあっても円相場の位置は大きく変わらず)
米大統領選挙が終わって、円の年間10位は変わらない。月間では8位。日経平均は19市場中、6位と悪くはないが、7月の円買い介入と日銀利上げ以来、10月24日に一時4万円に乗せたが、長らく4万円のせから遠ざかっている。10年国債利回りは米金利の上昇に連れ1%台を回復した。
(7月の円買い介入と利上げの悪影響の露出)
今週は7-9月期GDPに注目したい。前期比0.2%(前期比年率0.8%)と2四半期連続のプラス成長になったが伸びが低い。災害の影響もあり個人消費の伸びが抑えられる。7月の円買い介入や日銀利上げの影響もあるだろう。既に年金運用の7-9月期の運用はマイナスだ。個人も同じようであるとすれば、資産価値の減少で消費も縮小する。円高で製造業の収益も悪化する。
ただ日本景気の悪化は、株安円高に繋がるので気をつけたい
(11月中旬の円高)
今週は11月中旬だが、例年11月中旬は外国債の利払いもあり円高になりやすい
(日銀総裁は利上げを示唆しているが日本経済はぜい弱だ)
植田総裁は、BIS会議にて日本は将来的に炭素税を導入する可能性が高く、それがインフレ期待に影響を与える可能性があると指摘した。 短期的には 基調的なインフレ率は現在まだ2%を下回っているため、日本は「当面はそのようなインフレ圧力に対応できる」と語った。日銀は常々金融引き締めではなく、正常化と言うが、日本経済は利上げに耐えられるのだろう。株価も介入や利上げに耐えらえるのだろうか。
最近の企業決算は勢いがなくなり最高益を更新する企業は減少、減益も多い。特に自動車業界。米関税不安、円買い介入、利上げのトリプルパンチだ
(少数与党でどうなるか)
国会の首相指名がある。過半数を得られなかった与党が政策を円滑に進められなくなる。野党の意見も取り入れられるメリットはあるが、個別案ごとに決裁へ時間がかかるデメリットがある。
*米ドル通貨3位(34位)、株価(NYダウ)7位(9位)、大統領選挙後は米株は上昇もドルは落ち着く。今週はCPI
(大統領選挙後は米株の上昇が目立つ)
トランプ氏が大統領選挙で勝利すれば「ドル高、株高、金利上昇」となると予想されていたが、株はその通り進んだ。ドルは直後に上昇したが、先週末は元に戻しつつある。ドル高は対ユーロで進んだ。
米長期金利も選挙開票直後は上昇したが、週末は戻してきている。
ドルは年間3位、月間は6位。株価はダウが7位で年初来16.71%高、ナスダックは28.48%高、S&Pは25.7%高。
(パウエル議長=経済が強い)
FOMCは予想通り0.25%の利下げとなった。フェッドウオッチでは12月FOMCの0.25%利下げ確率は71%。据え置きが29%。パウエルFRB議長は7日、足元の米国債利回りの急上昇について、トランプ次期政権の積極財政によるインフレへの懸念とはあまり関係がなく、経済成長が強まるとの予想を反映している面が大きいとの認識を示した。利回り上昇はインフレ期待の上昇を主因としておらず、「成長が強まり、おそらくは下振れリスクが弱まった」との見方を反映しているようだと述べた。
(今週は消費者物価に注目)
今週は注目の10月消費者物価の発表。9月は前月の2.5%から低下した2.4%であったが予想の2.3%からは強かったので以降ドルが上昇した。事実至上主義というか予想至上主義なので気をつけたい。11月1日の雇用統計も弱かったが、失業率と雇用者数の算出方法の違いで実際は米経済の実態より一時的な災害の影響が出ていることがわかりドルは上昇した。指標の予想、内容もチェックしたい。
現在CPIナウは2.67%(コアは3.31%)で若干市場予想より高めだ。GDPナウは2.5%、サプライチェーンインデックス(10月)は-0.32で問題ない。
(ムーディーズが敵か)
トランプ氏は大統領選挙に勝利し、上下院ともに共和党が多数を握り政策執行に有利な立場を手に入れた。今後の敵は格付け会社だろう。ムーディーズは、米国の財政状況がより高いリスクにさらされていると指摘した。「財政赤字の抑制に向けた政策措置がなければ、連邦政府の財政状態の悪化は米政府の信用力にますます重くのしかかるだろう。トランプ氏が公約に掲げた財政政策と、議会の構成の変化によりその政策の成立可能性が高いことを考慮すると、米国の財政リスクは高まっている」とした。
ムーディーズは、3大格付け機関の中で唯一、米政府に対する最高格付けを維持している。
*ユーロ通貨5位(5位)、株価9位(6位)DAX)、ユーロは米大統領選挙後に下落。牽引車の独仏に不安
(ユーロは米大統領選挙後に下落)
10月28日週はユーロが戻したが、大統領選挙後はユーロが一番の「トランプトレード」の対象となり下落した。月間では最弱、年間では5位。株価は多くの国の株価が上昇する中で独DAXは0.21%、仏CACは0.95%下落した。10月28日週は3Q・GDPの改善、予想より強かった10月消費者物価でユーロドルは戻したが、米大統領選の結果を受けて崩れた
(独仏の不安要因)
フランスが極右台頭で政局不安となったが、今回はドイツ。ショルツ首相が11月6日、自由民主党(FDP)のリントナー財務相を解任し、3党による連立政権が崩壊。来年3月に総選挙が実施される可能性がある。また、独連銀によると、化学品メーカーのBASFや自動車部品のZFフリードリヒスハーフェン、家電のミーレなどの企業が国外に資源を移し、2010年以降の純資本流出額は6500億ユーロ(約107兆円)を超える。
米大統領選挙でトランプ前大統領が歴史的勝利を収めたことにより、ドイツ企業には関税回避の目的で米国への投資を増やすよう圧力がかかる。これが資本流出を加速させる恐れもある。選択肢に乏しく次期総選挙の予定まで1年を切っていた中、経済再生を巡る論争がもとでショルツ首相はリントナー財務相を更迭。ドイツは05年以来の早期総選挙に向かう見通しとなった。
(自動車産業の不振)
欧州拠点のステランティスは販売不振で米工場で1100人削減する。またアウディは非生産職の従業員の約15%を一時解雇する計画だ。
(関税措置を導入すれば、欧州経済は打撃)
ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁は7日、米大統領選で返り咲きを決めたトランプ前大統領が確約通りに関税措置を導入すれば、欧州経済は打撃を受けるとし、ECBの政策運営にも影響が及ぶ可能性があるとの見方を示した。 ストゥルナラス総裁は、トランプ政権下で想定される政策で欧州経済がマイナスの影響を受け、為替相場にも影響が出る可能性があると指摘。「ECBの金融政策にも一定の影響が及ぶ可能性がある」と述べた。 ただ、次期米政権が具体的な措置を実施するまでECBは現在の路線を維持するとの見方を示した。
(独指標悪化、財政は)
独の9月の輸出は前月比1.7%減。予想は1.4%減だった。 9月の鉱工業生産は前月比2.5%低下。予想は1.0%低下。
フィッチはドイツの州の税収減少により、財政余地が制限されていると述べた。
*ポンド通貨2位(2位)、株価16位(16位)、今週は雇用とGDP。トランプ関税政策と英国予算案の狭間で
(ポンドは対ドルで6週連続下落しているが、年間では2位とドルより強い)
ポンドは対ドルで6週連続下落しているが、年間では2位とドルより強く1.46%高。対円では9.8%高。FT株価指数は年初来4.39%高と弱い。10年国債利回りは4.43%で米ドルより若干高い。
(今週は雇用とGDP)
今週は9月雇用統計と3QGDPの発表がある。失業率は4.1%の予想で前月は4.0%。賃金の伸びにも注目したい。3Q・GDPは前年比で1%増の予想、2Qは0.7%増だった。
(トランプ関税政策と英国予算案の狭間で)
ベイリー総裁は11月7日、段階的に利下げしていく考えを改めて示した。だが関税引き上げを提唱するトランプ氏の米大統領選勝利により、シナリオの修正を余儀なくされる可能性があると指摘されている。
英中銀は政策金利を0.25%引き下げた。ベイリー総裁は、経済が予想通りに進展する限り、政策金利は下がり続けるはずだと述べた。
しかしトランプ氏の勝利により、見通しが不透明になっている。
ただ米国への輸入品全てに10%以上の関税を課すという提案が実現すれば、すでに低迷している英国の経済成長率は半分以下に落ち込む恐れがある。 総裁は「世界経済の分断には多くのリスクが伴う。何が起きるか見守ろう。判断するには時期尚早だ」と述べた。
スターマー首相が率いる労働党政権が先週公表した予算案は、税金、歳出、借金の大幅増額を含むもので、中銀はインフレ率と経済成長率を押し上げると予想している。 金融政策は現在、トランプ氏と予算という2つの新たなインフレショックに対面している。
(バークレイズは12月の会合で政策金利を据え置く予想)
バークレイズは英中銀は12月の会合で政策金利を据え置くとの見方を示した。中銀が不確実性と緩やかな政策運営を強調していることが理由で、これまでの利下げ予想を変更した。英予算がインフレと経済成長加速につながると予想されるため、今後の利下げは緩やかになる可能性が高いとの見解を示した。
*豪ドル通貨6位(7位)、株価13位(14位)、根強いインフレで政策金利は据え置き。トランプ政権はインフレ・デフレ両方の可能性
(対円では底堅く感じるが、対ドルでは6週連続週足陰線と弱い)
豪ドルは円から見ると底堅く感じるが、対ドルでは6週連続週足陰線と弱い。年間6位、今月はここまで5位。株は19市場中で13位、年初来9.24%高。10年国債利回りはドルより若干高い4.53%。
(政策金利を4.35%に据え置き、根強いインフレ抑制に軸足を置く)
RBAは予想通り、政策金利を4.35%に据え置いた。RBAは金融緩和開始で他の中銀に出遅れている。RBAはコアインフレ率を目標範囲内まで減速させるには、引き締め政策の維持が必要だと改めて表明。年内の利下げ期待を打ち消した。 豪コアインフレ率は7-9月期の.5%から、年末までに3.4%にわずかに鈍化すると予想されているが、目標とする2-3%を依然上回る水準だ。
ブロックRBA総裁は短期的な利下げの見通しについて問われ「現時点では適切な設定になっている。状況が予想以上に悪化し始めたら、すぐに行動できるよう努める。だが、どうなるかは分からない」と述べた。
(今週は賃金と雇用に注目)
今週は金融政策に影響する。3Q賃金指数と10月雇用統計の発表がある。賃金指数は2Qの4.1%から3.6%へ低下する予想。失業率は9月の4.1%から4.2%へ上昇予想、雇用者数は2.5万人増加見込み(9月は6.41万人増)。11月14日はRBAブロック総裁の講演がある。その他11月消費者信頼感指数や10月企業信頼感指数の発表もある。
(トランプ大統領再登場で)
アルバニージー首相はトランプ次期大統領と話し、同盟の重要性と、安全保障、相互援助、貿易、投資における豪米関係の利点について話し合ったとした。RBAブロック総裁は、トランプ政権誕生が豪の物価に及ぼす影響を判断することは現時点で難しいと話した。「米の輸入関税と追加減税はインフレになるかもしれないが、中国がこの影響を大きく受けることになれば、別の意味でデフレになるかもしれない」と語った。
*NZドル通貨9位(9位)、株価14位(15位)、NZ経済、先行き厳しい
(対円では横ばい推移だが対ドルでは6週連続週足陰線と弱い)
NZドルは為替、株ともに豪よりやや下位で推移している。年初来で12通貨中9位、株価は19市場中で14位。10月から対円では横ばい推移だが対ドルでは6週連続週足陰線と弱い。
10年国債利回りは4.69%でこれは豪ドルより高い。
(失業率は悪化、今月は追加利下げか)
3Qの失業率は、景気低迷で職を求める人が減ったため、予想よりも低い上昇にとどまった。 3Qは4.8%、2Qは4.6%。予想は5%。雇用者数は前四半期比0.5減で、0.4%減の予想を上回り、年間賃金インフレ率は6四半期連続で鈍化した。経済は2Qに縮小し、3Qはさらに縮小すると予想されており、景気後退に再び陥ることになる。労働市場の緩和により、NZ中銀はインフレ抑制から成長回復へと方向転換する中で、引き続き金利を引き下げる余地がある。大半のエコノミストは、11月27日の今年最後の政策決定で2回連続の0.5%引き下げが行われ、政策金利は4.25%になると予想している。
年間インフレ率は3Qに3.3%から2.2%に急落し、3年ぶりに目標範囲である1-3%に戻った。賃金圧力の緩和により、引き続き全体的なインフレ率は鈍化するとみられる。
(トランプ氏の経済政策、十分に対応可能)
ホークスビーNZ中銀副総裁は、トランプ次期米大統領が掲げる経済政策はインフレを助長して貿易戦争を招く恐れがあるが、世界の中央銀行はそうしたシナリオを効果的に制御できるとの考えを示した。
トランプ氏は広範な輸入関税と追加減税を含む野心的な計画を掲げており、米経済を短期的に押し上げる一方、インフレ加速と財政赤字拡大ももたらすとみている。
トランプ氏は1期目から輸入品に一律10%の関税を課し、中国からの輸入にさらに高い課税を課すことで貿易政策を加速させようとしている。
ホークスビー氏は「トランプ氏の政策では他よりインフレ率が高くなるが、運営上独立した中銀の世界では十分に対応可能と考えている」とし、貿易と報復のエスカレーションに左右されるあらゆる要素にはリスクシナリオが付き物だと述べた。
(NZ経済、先行き厳しい)
NZ中銀は金融安定性報告で、国内経済について厳しい見通しを示した。失業が増大しており、企業も資金難で投資を遅らせているという。
中銀は、国内経済活動の弱さが以前よりも顕著になっており、世界経済の低迷と高金利を背景に需要が減少したと指摘。
また、企業は利益率低下と需要低迷に見舞われており、長引くコスト圧力で事業環境が一段と厳しくなっているという。
オア総裁は、実体経済が利下げに後れを取っており、そうしたラグが生じている期間中が懸念要因だと指摘。予想外のショックで経済が下振れることは望ましくないと述べた。
テクニカル分析
*ドル円「トランプ氏勝利で2σ上限へ上昇も週末に反落」
日足、ボリバン2σ上限から反落。雲の上維持。11月6日-8日の上昇ラインがサポート。11月7日-8日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向く、20日線上向き。
週足、10月28日週は2σ下限から雲の上に出る。ボリバン中位越え。10月21日週-11月4日週の上昇ラインがサポート。7月8日週-11月4日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向き20週線を上抜く。
月足、10月は4か月ぶり陽線。ボリバン中位を越える。5か月線下向き、20か月線上向き。9月-10月の上昇ラインがサポート。7月-10月の下降ラインを上抜いて11月はスタート。
年足、3年連続陽線。今年は介入で一時陰転するも再び陽転。ただここ3年は上ヒゲが長い=介入=ので3σ上限近くから下落。22年-23年の上昇ラインがサポート。1985年-2023年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「日足ボリバン2σ下限まで下落」
日足、先週末はボリバン2σ下限まで下落。11月6日-8日の上昇ラインがサポート。11月6日-8日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
週足、5週ぶり陽線後は急落。ボリバン下限に近い。雲下。4月15日週-11月4日週の上昇ラインがサポート。9月30日週-11月4日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向き、20週線上向き。
月足、10月は4か月ぶり陰線。9月は雲の上に出たが10月は反落、雲中へ。4月-6月の上昇ラインを下抜く、次のサポートは2σ下限。9月-10月の下降ラインが上値抵抗。5か月線上向き、20か月線下向き。
年足、24年は再び陰転。22年-23年の上昇ラインを下抜くか。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「先週末に急落、ボリバン中位下抜く」
日足、先週末に急落、ボリバン中位下抜く。9月30日-11月81日の上昇ラインがサポート。11月7日-8日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向く、20日線上向き。
週足、3週ぶり陰線で雲中へ下落。10月21日週-11月4日週の上昇ラインがサポート。10月28日週-11月4日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向き、20週線下向き。
月足、10月は4か月ぶり陽線も11月は陰線スタート。9月-10月の上昇ラインがサポート。一時7月-10月の下降ラインを上抜くも再び下抜く。5か月線下向き、20か月線上向き。
年足、4年連続陽線。24年も上ヒゲが長くなったがここまで陽線。22年-23年の上昇ラインがサポート。08年-23年の下降ラインを一時上抜く。
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