執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年8月2日 12時30分
ユーロ・ポンドともにテクニカルな節目割り込み弱気目線が拡大
ユーロ/円・ポンド/円、下げ幅拡大
ユーロ/円・ポンド/円は米ドル/円に連動。円主導の値動きから、ユーロ/円やポンド/円も下げ幅を拡大させ、ユーロ/円は160.634円、ポンド/円は189.502円までレンジ下限を広げました。日銀の年内追加利上げ期待を背景にして、積み上がっていた円ショートポジションの巻き戻しが一段と進んだほか、世界的な株価調整がクロス円の頭を抑えました。(各レート水準は執筆時点のもの)
FXのライブ解説、日米金融政策「ダイバージェンス」で円高加速! (2024年8月1日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
追加利上げ期待がユーロの上値抑制
ユーロ圏経済は軟調な指標結果が目立つなど精彩を欠いています。特に域内最大の経済国であるドイツの4-6月期GDPは前期比-0.1%と、ユーロ圏の成長に対する不透明感を高めています。7月18日のECB理事会時にラガルド総裁が「成長へのリスクは下向き」と述べていましたが、ドイツの成長減速はこの発言を裏付ける格好になりました。ECB理事会を通過しECBの追加利下げを見極める時期ですが、足許の経済指標を考えるとECBの追加利下げはそう遠くないうちに実施されそうなため、ユーロの上値の重さは払しょくされにくそうです。
ユーロ/円は相場の強弱を判断する200日移動平均線を明確に下回ってきており、弱気目線が強まっています。21日移動平均線との乖離はかなり良いところまで来ており、下落スピードが速まるかは微妙ですが、下落が一巡した様子も見受けられません。昨年12月に頭を抑えられ伸び悩んだ158.50円付近が目先の支持線と見られ、このレベルでは下落の勢いが和らぐ可能性はあります。ただ、同ラインは強力な支持線ではないこともあり、底割れからの下げ幅拡大に注意したいです。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:158.000-164.000
ポンド、政治的要因も上値抑制か
英中銀は、5対4で0.25%の利下げを決定しました。ただ、声明で政策緩和を急ぐ必要はないと強調し、次回以降の利下げについては「各会合で決定する」としています。イベントを通過したことで、この後はファンダメンタルズを確認しながら追加利下げの時期を推し量ることになりそうです。今後の利下げを見通す上では、経済指標だけではなく財政再建と言った政治的な話題も将来的に重要になるかもしれません。リーブス財務相は前保守党政権が220億ポンドに上る「財源の手当がない公的支出を数多く発見した」と発言しており、増税も検討する必要性があることを示しました。増税による財政再建はポンドを下支えしそうですが、税負担増加が経済成長を失速させる危険もあります。同問題が直ちにポンドに影響するとは考えませんが、10月末の秋季財政報告に向けて意識され、ポンドの上値を抑制する危険はありそうです。
ポンド/円はユーロ/円同様に200日移動平均線を割り込み、一段の地合いの悪化が懸念されます。今年3月の押し目(187.965円)は支持線となるものの、サポート力がそれほど期待できないと思われるため、底割れには警戒したいです。その先は、2月安値(185.234円)が支持線として意識されそうです。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:185.000-193.000
8/5 週のイベント:
一言コメント
イランとイスラエルの緊張から地政学的なリスクが高まっています。週末に何事もなければ良いのですが・・・。
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