総括
FX「いよいよFOMC、PK戦のような緊張感で臨みたい」
ドル円=134-139、ユーロ円=141-146、ユーロドル=1.03-1.08
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価8位(8位)、円安調整進むも、勢いのない日本経済」
商品価格低下、世界的な利上げ減速論、円買い介入で円高となってきたが、先週はボリバン2σ下限から小反発、5日線も上向き、20日線に近づき円高も小康状態となっている。米国PPIの予想を超えた上昇があったが、ドル安に進んだ通貨もあったので、先週の円安は日本の需給によるものだろう。世界の金利にピーク論が出ると、日本の投資家にとっては外国債券を買いたいところでもある。長期的には続かないが、短期的に外債買い円売りも出ている。貿易需給は11月中旬迄を見ると輸入の伸びが縮小しているが、まだ月間1兆円を超える赤字は続きそうなので、一気に円高になる状況ではない。今週は11月全体の貿易統計の発表がある。
国内状況は思わしくない。7-9月期のGDPマイナス成長、株価低迷、製造業PMI悪化、景気ウオッチャー悪化、増税示唆、マイナス金利で可処分所得増えずなどである。リスク選好にならない、活気のない経済だ。円安で最高益となっていた企業収益が円高で落ち込むこともあろう。円安要因が剥げ落ちて、景気悪化となれば悪い円高が進む。今週発表の日銀短観も悪化しそうだ。一方、ロシア離れの経済も大きな混乱はなく進みそうであることはいいが、中国離れ経済も少し進み始めていることは、短期的にはその移行期間は日本経済に打撃を与えるだろう。
*米ドル「いよいよFOMC、PK戦のような緊張感で臨みたい」
利上げによる景気減速が効いたのか、西側のエネルギー政策が効いたのか、世界の商品価格が低下し、利上げ減速論が高まり、既に豪などが利上げ減速を実施している。今週のFOMCもこれまでの0.75%利上げから0.5%利上げに縮小する見方が強い。11月PPIも予想を上回ったが大幅低下した。11月CPIの予想は前年比で前回の7.7%上昇に対し、7.3%の上昇だ。ミシガン大調査では1年先のインフレ期待は4.6%(前月は4.9%)と低下。また高インフレ抑制のための利上げより、景気減速への利上げ抑制論が強くなっている。
11月のFOMC議事要旨では、「かなりの多数が、利上げペース鈍化が間もなく適切になる」、「利上げのペースを遅くする方が、最大雇用と物価安定という目標に向けた進捗を 評価するのに適している」としていた。その後のパウエルFRB議長の発言では「利上げペースの減速が理にかなう。利上げペースの減速が理にかなう」としていた。ただ「歴史は時期尚早の金融緩和に対し強く警告、物価安定回復までまだ長い道のりがり、インフレは依然として高すぎる」としていた。
11月の米ドルは12通貨中で最弱、12月は8位と弱いのも市場が利上げ減速論、米景気後退を織り込んでいるからだ。貿易赤字も拡大しているが、これについては米政府はまだ言及していない。ただFOMC議事要旨ではドル高に言及している。尚、ニューヨーク市衛生保健当局は9日、公的な屋内施設や混雑した屋外でのマスク着用を住民に促す行政勧告を発令した。市内で新型コロナウイルスの感染や他の季節的疾患が「同時に異例の急増を見せている」ためだと、声明で説明した。
*ユーロ「景気後退もあり利上げ減速か」
12月は12通貨中4位と健闘。対ドルではボリバン2σ上限へ上昇。対極の11月初旬の2σ下限ではパリティー割れであったので、強調推移したと言える。ただユーロの材料ではなく、11月最弱通貨であったドルの下落によるものだ。
さてECBはFOMCの翌日の12月15日の理事会で政策金利を0.5%引き上げ2.0%とする見通しだ。前回の0.75%利上げから利上げ幅を縮小する。11月のユーロ圏のインフレ率は前年比10.0%と、予想を大きく下回った。インフレがピークを過ぎた可能性があり、利上げペースが鈍化するとの見方が強まっている。インフレ率は4Qに10.3%でピークに達し、その後鈍化する見通し。ユーロ圏が1年以内に景気後退に陥る確率は80%とされている。経済成長率の予測は、今年4Qがマイナス0.3%、23年1Qがマイナス0.4%となっている。今年の経済成長率予測はプラス3.2%、来年はマイナス0.1%。
レーンECB専務理事は、インフレ率はピークに近いが、複数回の追加利上げが必要になるとの見方を示した。「追加の利上げが必要になると予想しているが、すでに多くがなされた。インフレのピークが近い可能性が高いと、それなりの自信をもって言えるだろう」と述べた。
経済指標は改善しているものが多くなってきたが、力強さはない。10月の独の鉱工業生産指数は前月比0.1%低下した。エネルギー集約型の産業などで生産が減少したが、予想よりも小幅なマイナスにとどまった。予想は0.6%低下だった。
*ポンド「11月英CPI、FOMCを経て、英中銀も利上げ減速の見込み」
ポンド自体に強さはないが、ドルの下落で上昇、12月はここまで2位だ。英中銀はECBと同じく、FOMCの翌日の12月15日に政策決定会合を開催し政策金利を0.5%引き上げ3.5%とする見通しだ。
先月の0.75%から上げ幅を縮小する。来年は1Qに0.5%、2Qに0.25%の利上げが実施される見通し。政策金利は2Qで4.25%でピークに達する見込み。英国が1年以内に景気後退に陥る確率は85%。経済成長率の予想は今年3Qがマイナス0.2%、4Qがマイナス0.4%、23年1Qがマイナス0.4%、2Qがマイナス0.4%。インフレ率は今年4Qに109%でピークをつける見通し。14日には11月CPIが発表される。
さて英政府による金融規制改革案を受けて、金融株が上昇した。英FT株価指数は今年の世界市場でプラス圏を確保している数少ない市場でもある。ポンドが年間では安いことも影響か。英政府は、金融セクターを改革する30の施策を打ち出した。世界有数の金融センターとしての地位維持に向けた取り組みで、EU加盟中の「負担の大きい」規則の撤廃も盛り込んだ。EU離脱後、欧州最大の株式市場の座をオランダ・アムステルダムに譲るなど、国際金融都市ロンドンの地位が低下し、政府には規制緩和を求める声が強まっていた。
*豪ドル「利上げ減速継続、GDP弱く、経常赤字。それでも米ドル下げで底堅い」
9月、10月は利上げ減速の実践で下落していたが、11月は米ドルの下落で浮上し、現在も底堅く推移している。12月はここまで3位につけている。ただ利上げ減速をしないNZドルよりは弱い。
豪RBAは、政策金利を0.25%引き上げ、3.1%とした。8会合連続の利上げで、政策金利は10年ぶりの高水準となった。チャーマーズ財務相は「利上げの影響がこの先出てくる」と指摘し、世界経済の低迷や金利上昇の影響で来年は経済活動が低調になり、成長鈍化が見込まれると述べた。中銀は、世界的なリセッションが差し迫っていることから、引き締めをスローダウンさせ、積極的な引き締めが消費支出に及ぼす影響を見極めたいとの考えを示唆した。また必要に応じてより大幅な利上げを実施したり一定期間金利を据え置く意向も示している。雇用情勢は逼迫している。10月の失業率は50年ぶりの低水準となる3.4%。3Qの賃金の伸びは13年以降で最も高く、さらなる加速が見込まれる。一方、これまでの利上げが既に景気を冷やし始めた可能性を示す兆候も出ている。10月CPIは伸びが鈍化した。ただ、月次の物価統計は光熱費が対象に含まれておらず、4Qは約8%に加速すると予想されている。
弱い材料もある。3Q経常収支は3年ぶりに赤字となった。堅調な国内需要を背景に輸入が増加したほか、鉱山会社の海外での配当金支払いの増加により所得収支が大幅な赤字となった。3Q・GDPは前期比0.6%増加し、前四半期の0.9%増から伸びが鈍化し、予想の0.7%増に届かなかった。物価高騰と金利上昇が個人消費に影響した。前年比では5.9%増加。予想は6.2%増だった。
*NZドル「ダブル他力本願で上昇。次回政策金利決定は2月22日。現在は引き締め継続」
11月は最強通貨、12月もここまで最強。ただこれといった良い材料はない。対豪ドルでは、豪が利上げ減速論を実践しているのに対し,NZ中銀は0.75%の利上げを続けている。米ドルも利上げ減速論示唆以降は下落ダブル他力本願でNZドルが上昇している。
NZ中銀は11月23日に、政策金利を075%引き上げ、約14年ぶり高水準の4.25%とした。根強いインフレの抑制に苦慮する中、追加利上げも示唆した。追加利上げと言っても次回政策決定会合は2月22日でかなり時間があり、その中で他国の中銀は何度も政策金利を動かす。1月27日に4Q・消費者物価の発表がある。
経済指標はマチマチだ。3QのNZ製造業売上高(前期比)+5.1%で前回 -3.8%を大きく上回った。11月の企業信頼感は、強いインフレ圧力の中、前月から悪化した。向こう1年間に経済が悪化すると予想した回答者の割合は、差し引き57.1%。10月調査時点では42.7%だった。向こう1年間に自社の事業が縮小すると予想している回答者は差し引き13.7%と、2009年の最悪水準からわずか8ポイントの差に迫った。10月は2.5%だった。
今週は、10月のNZへの観光客数の発表、予想は前年比4560%増でコロナ抑制策の緩和が発揮される。3Qの経常収支は101億NZドルの赤字予想だ。3Q・GDPは前年比で5.5%増の予想で前期の0.4%増を大きく上回る予想。
テクニカル分析
*ドル円「雲下だが5日線上向く。ボリバン下位」
日足、雲下での推移続く。5日線は上向く。20日線下向き。ボリバン下位。12月2日-9日の上昇ラインがサポート。12月8日-9日の下降ラインが上値抵抗。
週足、3週振り陽線。ボリバン中位を下抜いて下限近くへ下落。5週平均線が20週平均線を下抜く。11月28日週-12月5日週の下降ラインが上値抵抗。11月28日週-12月5日週の上昇ラインがサポート。
月足、11月は陰線。12月も陰線スタート。9月-10月の上昇ラインを下抜く。6月-8月の上昇ラインがサポート。10月-11月の下降ラインが上値抵抗。
年足、2021年は6年ぶり陽線。今年もここまで大陽線。2016年-20年の下降ラインを上抜く。ただボリバン3σ上限近くからは反落、上ヒゲが長くなってきた。2σ上限まで下落。12年-21年の上昇ラインがサポート。15年-21年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「ボリバン2σ上限に近づく。5日線下向く」
日足、ボリバン2σ上限。12月7日-9日の上昇ラインがサポート。12月5日-9日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向く、20日線上向き。
週足、ボリバン2σ上限。11月28日週-12月5日週の上昇ラインがサポート。2月7日週-12月5日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、4か月連続陰線後、2か月連続陽線。12月も陽線スタート。まだボリバン下位。2月-11月の下降ラインを上抜く。10月-11月の上昇ラインがサポート。21年6月-22年2月の下降ラインが上値抵抗だが一時接す。
年足、20年‐21年の上昇ラインを下抜く。ボリバン2σ下限到達し反発。17年-20年の上昇ラインも下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「5日線、20日線上向く」
日足、雲の下へ急落、ボリバン3σ下限へ下落も先週は反発。12月2日-9日の上昇ラインがサポート。12月7日-9日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向く。
週足、11月14日週-21日週の上昇ラインを下抜き、ボリバン中位へ下落。先週はそこから反転。11月28日週-12月5日週の上昇ラインがサポート。11月28日週-12月5日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向き、20週線上向き。
月足、ボリバン3σ上限から反落。11月は陰線。12月は陰線スタートも陽転。10月-11月の下降ラインが上値抵抗。3月-8月の上昇ラインがサポート。
年足、2年連続陽線。今年も3月に陽転。14年-21年の下降ラインを上抜く。12年-20年の上昇ラインがサポート。
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