「FXはお金もうけをするものではなく楽しむもの。その楽しみが続くことが、自分にとって最高の満足」。一度は大損を経験し、市場から撤退したものの、2019年にFX取引に復帰したSさん。これは、S氏がFX取引をするうえで、大切にしているポリシーです。「FXで一獲千金を」と考えているトレーダーからすると、「目線が低く過ぎるのでは」と感じるかもしれませんが、復帰後2年間で利益は約700万円超という素晴らしい成績を残しています。その秘訣はいったい何なのか、リモートでお話を伺いました。
(この記事は2020年12月3日に掲載した記事名『約10年振りにカムバック Sさん「投資結果は『ぐうぜん』の産物。だから楽しむことを最優先」トップトレーダーに聞く!(前編)』を一部修正したものです)
Sさん プロフィール
年齢性別 :50代男性
FX取引歴 :2009年に開始するもしばらくして退場、2019年から再開
FX収支 :2年間で約700万円超(2019年&2020年)
投資商品 :FX
趣味 :車と車いじり(愛車を自分で修理しながら長年乗り続けている)
▼目次
1.20万円がいきなり約100万円に、そして退場
2.保証金を積み増しては損失を重ねていた
3.投機に理論はない
4.常に冷静でいたい
5.チャートの見方は基本どおり
6.テクニカルはトレンドラインを引いて分析
7.画面はできるだけシンプルに
8.リスク感覚の違う人とは
20万円がいきなり約100万円に、そして退場
編集部:- FXと出会ったきっかけは?
Sさん:- 2009年の頃でしょうか、当時親しくしていた友人が「面白いから」と、FXを紹介してくれたのです。それで「ちょっとやってみようかな」と思い実際にやってみたら、これが面白かったんですね(笑)。当時はパソコンか、ガラケー携帯を使ってトレードをしていました。チャートがリアルタイムに動いているのを見ながら、その場で通貨が売買できることに、強い衝撃を受けました。
編集部:- FXはデモトレから始めたんでしょうか?
Sさん:- いや、いきなり本番です。保証金20万円で始めました。当時はレバレッジ規制が入る前だったので、50倍とか100倍とかでもトレードできました。だから、一晩で約100万円の利益が出たこともあります。
編集部:- それはすごいですね
Sさん:- でも、勝てたことで調子に乗ってしまい、やがて手持ちのお金300万~400万円をつぎ込んでいました。一方で、当時は仕事も忙しく、「いったん冷静になろう」と思って、FXから離れました。
編集部:- そういう経験をされていたのですね。しかし、最初から20万円が一晩で100万円になるような成功もあったわけですよね。
Sさん:- あの頃の相場は“ダーっ”と動くときがあって、そのときを追いかけて、うまくトレンドをつかんだのでしょうね。最近はトレード記録を残していますが、当時は記録を残してないので、詳細は覚えていません。
保証金を積み増しては損失を重ねていた
編集部:- FXを始めた10年前というと、ちょうど円高が進んだ時期ですね?
Sさん:- 私に言わせると単純な相場でした。どんどんと円高方向に進み、80円台ぐらいまで動くという予想がつきました。「レバレッジを抑えて、ずっと持っておけばよかった」と、今は思いますね(笑)。
編集部:- 20万円を約100万円まで増やしたのに、結局、“損失”を出してしまったのは、どうしてですか?
Sさん:- 「利益を出せる」と思って保証金を入れて、結局「損失を出す」の繰り返しだったんです。だから、今も「上手くいっている」とは思っていないんです。「上手くいかなくなる途上」でしょうか(笑)。
編集部:- 2019年にFXを再開するまで、投資は何もしなかったのですか?
Sさん:- 株と投資信託ですかね。FXは仕事がセカンドキャリアになって、時間ができたので、もう一度始めたのです。
投機に理論はない
編集部:- 今、テクニカルとファンダメンタルズの両方を駆使しながら取引をされているということでしょうか?
Sさん:- 自分なりのロジックを持ってやっていますが、いわゆるオシレーター系で同時に見ているのはRSI、ローソク足、MACDとDMIですね。ただ、テクニカルだけで判断することはしていません。
編集部:- 10年ぶりの再開にもかかわらず、これだけの好成績を収めていらっしゃいますが、何か変化があったのでしょうか?
Sさん:- 私は特にFXのために情報収集したり、売買のテクニックを学ぶために、書籍を読んだりしません。外為どっとコムの「情報ナビ」に掲載されているニュースをちらっと見たり、SNSでトレーダーの方々のご意見を読むくらいでしょうか。「みんなこういう状況を見ながら判断しているのか」というように参考にするぐらいです。
編集部:- 相場の「研究」「分析」のための情報収集というよりも、あくまでも参考程度で見ているということですね?
Sさん:- 投資を趣味にしている大学時代からの友人がいるのですが「投資セミナーに月5万円を払っている」とか「一目均衡表の読み方を書いた本を読め」とか、あれこれアドバイスしてくれます(笑)。どうやら彼は、暗号資産(仮想通貨)で“ひと儲け”したらしいのですね。それを知って「投機は理論じゃないな」と改めて思いましたよ。理論で勝てるのだったら、勉強した人は、みんな利益が出ていると思います。
編集部:- なるほど。理論を一生懸命に勉強しても、損してばかりいる人は少なくありません。ただ、Sさんが今、FXで成功されているのは紛れもない事実です。そこにある成功の秘訣を知りたいですね。
Sさん:- 私は最近、『まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』(ナシーム・ニコラス・タレブ著)という本を読みました。「ウオール街のプロが顧客に最も読ませたくない」というものなのですが、結論は投資の成功は「ぐうぜん」ということなんです(笑)。「どんな人が投資をして、どんな結果になったか」というストーリーがたくさん書いてあるのですが、結論を言うと、いずれも「ぐうぜん」なんです(爆笑)。私は自分が勝ったときに「自分が正しかったから」とは考えないですし、逆に負けたときも、間違った原因をあまり考えないようにしています。きっと、そういうことなんでしょうね。
常に冷静でいたい
編集部:- そう思えるぐらいに、常に冷静にトレードしているということですかね。そこに成功の秘密が隠れているような気がするのですが。
Sさん:- 気持ち的に嫌にならないように、注意しているということです。この状態が常に維持できれば、成功の“秘密”になるかもしれないですが、そうでもないので、それは“秘密”ではありませんね(笑)。
編集部:- いや、とても冷静だと思います。ところで、実際の取引手法ですが、どこでエントリーして、どこでエグジットするというような投資方針はありますか?
Sさん:- 本当はもっと考えたほうがいいと、いつも反省していますが、チャートを見ちゃうと、ついポジションを持ちたくなってしまいます。
チャートの見方は基本どおり
編集部:- チャートはどのように見て活用していますか?
Sさん:- ひと通りは見ますね。全体を見ておかないと相場を見誤るので、日足を見て、4時間足を見て、その後60分足を見て、5分足を見て、1分足を見てという感じですね。
編集部:- なるほど!やっぱり、押さえるところは押さえていますね。
Sさん:- ほかのトレーダーたちがウェブサイトで何を言っているかを見て、「相場参加者の動向」を判断して、その後に、1分足、5分足チャートの動きを見ながら「上げているな」「下に落ちてきたな」と読むようにします。
編集部:- そうやって、ロング(買)か、ショート(売)を決めているわけですね?
Sさん:- 日本時間では、「どっちに相場が動きそう」とか、ロンドンが始まったら、「こんどは相場が反転しそう」とか、そんな感じでトレードしています。その瞬間にポジションを持つと、だいたい失敗して捕まっちゃいます。損切りが苦手です。
テクニカルはトレンドラインを引いて分析
編集部:- 基本としては、チャートで相場のポイントをおさえているのですね。テクニカル分析は何を使っているのですか?
Sさん:- トレンドラインで分析はしています。損切りが苦手なので、損切りを決断するときに、ラインを引きますね。「これを抜けるともっと上に跳ねるな」とか「これを抜けるともっと下に行くな」とか思ったら、「ここがやめどきなのだ」と思うようにしています。でも、先日の1ドル=104円台(2020年9月)に突入したときは、早く切りすぎましたね。あれは切らずに持っておけばよかった(笑)。
編集部:- あれはなかなか難しい相場でしたよね。ところで、トレーダーたちのツイッターでのつぶやきやブログ記事を参考にされているんですよね?
Sさん:- うーん、誰かが言い始めるまでは見ませんが、誰かが発言した瞬間にツイッターやブログを見て「これのことか!」と確認して、それから売買しますね。
編集部:- つぶやきの裏に、どんな思惑があるのかを読んでから、売買するってことですか?
Sさん:- いいえ、思惑を読むのではなく、多くの人たちが、そういう動きに入ったかどうかを確認するためですね。相場は多くの人たちが考えて動いた通りに動くだろうということです。
画面はできるだけシンプルに
編集部:- Sさんの取引環境を教えてください。チャートを4時間、60分、5分、1分足で見られているそうですが、モニター画面にたくさん表示させているのですか?
Sさん:- 私はパソコンに接続した大きいモニター1台を4分割して使っています。右側に2つチャートを上下段に並べて、上が分足で下はときどき切り替えて日足を見たり、4時間を見たり、1時間を見たりします。常時、分足は表示しています。別の画面には、取引ツールを開いておいて、いつでも取引ができるような状態にしています。
編集部:- 初心者でもマネがしやすいシンプルさですね。
Sさん:- 本当はもっと工夫をしたいと思っています。スプレッドフィルターのような機能があるものはいいと思いますが、使い方がよく分からないから(笑)。
編集部:- ムダなものを削ぎ落として、シンプルに取引するのもひとつの方法だと思いますよ。
Sさん:- それでも、誰かに聞いてトレードの仕方はレベルアップしたいと思っています。
リスク感覚の違う人とは
編集部:- 先ほど挙げられたような投資の話を共有できるような友人はいらっしゃいますか?
Sさん:- さっきお話しした暗号資産で成功した大学時代からの友人とは、リスク感覚が違うので、FXのトレードについて深堀した会話はないんです(笑)。私にとっては詐欺かどうかも分からないようなサイトで、100万円超の投資をしている人ですからね(爆笑)。まあ、軽く成績を話し合うくらいです。それも学生時代からの友人だからですよ。勤務先の人には言えないですし、家族も嫌がっていると思うので話しませんね(笑)。
編集部:- ご家族もご存じないのですか?
Sさん:- 子どもは知っていると思います。成績のいいとき、悪いときで、私の機嫌が違いますからね(笑)。妻も少しは知っていると思いますが、「ろくなことにならないわよ」っていう、そんな反応ですね(笑)。
編集部:- 利益が出たら、家族で美味しいもの食べたり、何かプレゼントしたり, そういうことはないですか?
Sさん:- そういうタイミングで、耐久消費財は「買おうか?」って話になりますね(笑)。
編集部:- 孤独を感じるときはありませんか?誰かとFXの成績を共有したいなんて思うことはありませんか?
Sさん:- SNSで情報公開している人がいますよね。調子が悪いときに情報発信すると、「気分がスッキリするのかな」と思いました。だから興味はありますね。
編集部:- SNSのコミュニティがあって「ああでもない、こうでもない」と議論もやって、定期的にオフ会とか飲み会を開くこともあるみたいですよ。
Sさん:- 面白そうですね。ぜひ外為どっとコムで主催してください。参加してみたいです(笑)。
(後編に続く)
PickUp編集部より
友人に勧められてFXを始めたSさん。投資の結果はぐうぜんの産物であり、2年間で約700万円超という自身の好成績も「負ける途中」と謙遜されます。果たして本当にそうなのでしょうか。後編ではFXの取引手法や考え方などをさらに詳しく伺います。
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