決められたルールに基づきシステム的に分析した内容を基に手動で取引を行なうシステム的トレーダーでありながら、一般的なテクニカルデータは使わずに自分が見つけた「アノマリー(経験的に観測できるマーケット規則性)」を何度も検証し、それをもとに作ったシステムプログラムで、5年間に約5,800万円超も稼いだうさぎの車氏。後編では、取引の極意と将来の夢などについて語った。
(この記事は2020年10月27日に掲載した記事名『元SE うさぎの車氏「強制ロスカットが目の前で起きても、損切りしないのが“システム的トレード”の奥義」トップトレーダーに聞く!(後編)』を一部修正したものです)
うさぎの車氏 プロフィール
年齢性別 :50代男性
職業 :専業トレーダー
FX取引歴 :13年
トレードスタイル:システム的トレード
FX年間最高収支 :約5年で5,800万円超
投資商品 :FX、株
趣味 :FX
▼目次
1.予想外の展開になっても止めない
2.運用中のアノマリーシステムは22個
3.子どもと過ごす週末。妻の理解が支えに
4.資産20億円に自宅3軒が目標
5.FXをやるなら若いうちに
6.倍率よりも回転率
7.こだわりを持ち継続する
予想外の展開になっても止めない
編集部:- 例えば、実際に取引がスタートして、ポジションがクローズされるまでの間、チャートで相場の動きを見ることができますよね。そういうときに、もし相場が異なる動きをしていて、損することがわかったら、途中で止めたりしないのですか?
うさぎの車:- 止めないです。何があろうとも、先ほど言ったようなフラッシュクラッシュがあろうとも止めません。止めなかったために、強制ロスカットを食らったこともあります。相場が急変しようが何しようが、あらかじめ決めた通りにしかやらないです。
編集部:- 人間は苦しくなると、つい決めごとを破ってしまいがちです。目の前で損をしているのに、ご自身で設定したルールを守るのですか?
うさぎの車:- そうです。人間の力で利益を出そうとした瞬間に、システム的なトレードで積み重ねてきたことが、ムダになってしまうからです。大切なデータが正しく取れないことになります。そういうとき、いかにガマンができるかが。すごく大切なんです。
編集部:- 時間指定の注文でトレードが自動で実行されている間は、相場を見ながらなのかもしれませんが、なにをされているのでしょうか?
うさぎの車:- そうですね。「次に使える仕組みやネタはないか」と考えています。と言いながら、「フラッシュクラッシュがあったらさすがに今度は切っちゃうかな」なんて(笑)、常に次のトレード手法をいろいろと考えていますよ。
運用中のアノマリーシステムは22個
編集部:- ちなみに、ご自身で開発した運用システムは現在いくつありますか?
うさぎの車:- 米国雇用統計用とか、重要指標用とか、個別に開発し、現在、使用しているものが22個あります。実際に使って、成績次第で、新しく考えたものと入れ替えながらやっています。大体、月に1回は入れ替えがあります。
編集部:- 先ほどの「五十日(ごとうび)」に使うシステムとか、それ以外に使うシステムとか、いろいろあるってことですか。
うさぎの車:- そうですね、五十日というのは本当に一例なんです。他にもいくつもあるのですよ。
編集部:- 最初に教えていただいた「五十日(ごとうび)」プログラムは毎日やっているのですか?
うさぎの車:- あれが、まさに五十日(ごとうび)用ですね。私が運用しているアノマリーシステムの“4番バッター”ですよ(笑)けっこう利益が出やすいです。
編集部:- 野球チームの監督みたいですね(笑)そうした“選手”を開発するための情報収集の方法は?
うさぎの車:- 相場を見ることでしょうね。いつでも見ていますからね。最初のうちは一日に15時間くらい見ていました。
編集部:- ぜひビギナーのためにヒントをください。例えば定期購読されてるもの、参考にされている書籍等はありますか?
うさぎの車:- 外為どっとコムのマネ育チャンネルに登場する野村雅道さん(FX湘南投資グループ代表)の本は読みました。実需に絡んだところを、野村さんは得意とされていますよね。最近の人だと田畑昇人さんですかね。本はかなり読みます。書店にも定期的に行き月に2冊は読みますね。
子どもと過ごす週末。妻の理解が支えに
編集部:- 一日の時間の使い方も教えてください。
うさぎの車:- 朝4時半に起きて、5時からトレードを始めて13時には終わりにします。朝は利益が出やすいのですよ。その後は、新しいプログラムが使えるかどうかを検証しています。
編集部:- 就寝時間は?
うさぎの車:- 0時ぐらいですね。日中ちょっと眠くなると、昼寝もしています。
編集部:- 週末はどんな感じですか?
うさぎの車:- 子どもがいるので週末はまったくやらないですね。
編集部:- メンタルの安定にはご家族のご協力や精神的な支えもあると思いますが、奥様にはFXの成績を伝えていますか?
うさぎの車:- 話しませんが、6,000万円の損を出したことは知っています(笑)。それでも、やっぱり信頼してくれているのだと思います。
編集部:- 何も言われないとすれば、それは信頼されていますね(笑)。ところで、家計に入れる金額は運用成績で変化しますか?
うさぎの車:- 特に大きな金額を入れているわけではありませんが、負けた月でも定額で入れています。
編集部:- もし、娘さんが「お父さんのようにFXがやりたい」と言ってきたらどうしますか?
うさぎの車:- 教えます!私に性格が似ているんですよ(笑)。こだわりがあって我慢強いようなので、きっと飽きずにやっていけると思います。
資産20億円に自宅3軒が目標
編集部:- 資産の管理はどうされていますか?貯蓄用とFX用と分けていますか?
うさぎの車:- あんまり意識してないです。利益や損失で証券会社間の口座残高のバランスが悪いなと感じたら、資金を移動させますが、それはあくまでもリスク分散のためです。資金管理のために貯蓄用とFX用で口座を分けることはないですね。
編集部:- 例えば、月単位や年単位で、目標金額を設定していますか?
うさぎの車:- それは設定してないですね。設定したところで良くも悪くもほとんどその通りにならないからです。でも、実際はだいたい100%で回れば“御の字”かなと。
編集部:- それは間違いなく“御の字”だと思います(笑)。ちなみに将来的な夢や目標はありますか?「こんなものに使いたい」「こんなものが買いたい」ということでも構いません。
うさぎの車:- あります。「資産20億円」を目指したいと思っています。
編集部:- なぜ20億円なのですか?特別な理由でもあるのですか?
うさぎの車:- 10億円を不動産投資に回して、運用利回りで年収1億円を稼ぎ、3億円でFXをやります。残りの7億円で地元の広島に1軒、東京に1軒、ハワイに1軒、自宅を持ちたいですね。
編集部:- まだ不動産投資は始めていないのですよね?
うさぎの車:- まだですね。資産が3億円を超えたら、具体的に考えようかなと思っています。これまでのところ、FXはだいたい年間で自己資金が倍になる成績を収めていますので、今は本状況で良いかなと思っています。ただ、いつか回せなくなる日が来るのではないかと思っていて、まあ、不動産を買うための原資をFXで一生懸命につくっているということですね。
FXをやるなら若いうちに
編集部:- 専業トレーダーになってズバリよかったですか?
うさぎの車:- よかったです。夢が広がりました。
編集部:- もっと早く始めたらよかったと思いますか?
うさぎの車:- 始めるならもっと早いほうがよかったですね。学生時代だったら仕送りもあるし、稼いだお金を生活費に回さなくても済みますよね(爆笑)。つまり、運用益をまるまる複利で回せるわけじゃないですか。でも、結婚して家庭を持ったら、そうはいきません(笑)。専業で稼ぐってラクじゃなくて、1,000万円を稼いでも、2割は税金で取られるじゃないですか。税引後の800万円の中から500万円は生活費に回ることになるし、例えば、そんな状況で車を買うと、手元に資金がまったく残らないから、投資に回す資金が捻出できないんですよね。なかなか楽な生活はできないです。ちまたで何百億円を稼いだという有名カリスマトレーダーは、学生時代からやっている方が多いですよね(笑)だから若いうちに始めるのが正解ではないでしょうか。
倍率よりも回転率
編集部:- かつてFXはレバレッジ200倍とか、そういう時代がありました。今、個人投資家はレバレッジ25倍までです。もちろん、リスクが低く抑えられるというメリットがある一方で、昔ほどの“夢”は見られなくなってしまったのかもしれません。うさぎの車さんは、レバレッジ規制についてはどう思いますか?
うさぎの車:- お金を増やす上で大切なのは、“回転”ですよ。例えば、レバレッジが半分になったとしたら、2倍回転させると、同等のことができるじゃないですか。レバレッジが250倍から25倍になったというなら、10倍回転させればいいだけの話なんです。倍率じゃなくて回転です。「1年で資金を100倍にした」っていう人がいましたが、それはやりすぎですよ。私の知る限り、そういう人はどこかで消えてしまうことになる気がします(笑)。最大でもレバレッジ20倍程度に押さえ、リスクを取り過ぎないようにして、時間を味方につけるやり方のほうが成功に近づけると思いますね。
編集部:- つまり、レバレッジは25倍まででも十分だということですね。普段お取引時のレバレッジはどのくらいですか?
うさぎの車:- レバレッジ20倍程度で実施しています。
こだわりを持ち継続する
編集部:- トップトレーダーの方々の中には、スキャルピングを得意にされている方も多いのですが、年齢重ねていくと、体力的な面からトレードの精度が落ちてしまうそうです。一方、うさぎの車さんの自身のプログラムを使った時間によるトレードは、むしろ、経験や年齢を重ねるほど、視野が広がって精度が増していきそうですね。最後に読者へ伝えたいことがあれば、ぜひ一言お願いします。
うさぎの車:- まず、こだわりを持つことですね。「これでいいのだろうか」「他の方法はないのだろうか」「何でこれが機能したのか」など、時間をかけて考えて欲しいです。自分なりのこだわりを持って、FXに向かって欲しいですね。そして、継続すること。FXをなんでやめちゃうかっていうと自信がなくなるからです。私は自分のやり方に絶対的な自信があります。なんでこれが機能するのかを追求するために、時間をかけて、あらゆるパターンを検証してきました。だから、「これで勝てないわけがない」と思えるんです。そうすると続けられますよ。トレードは100%勝てるのものではありません。勝率は良くて7~8割でしょう。負けがあることも認めて、今日一日をこなすという感覚で、私はずっと続けていきます。
編集部:- 負けた理由がわかっているから、安心して次に臨めるということなのでしょうか?
うさぎの車:- 例えばトランプ大統領が何を発言してもいいのですよ。それによって相場がどんな動き方しても、それは「たまたま」でしかないのです。ちゃんとこだわりを持って自分自身が納得できるトレードをしていれば、「しょうがないよね」と思えるはずです。
編集部:- 株式投資を1%程度だけ続けている理由はなんですか?
うさぎの車:- 実はFXの利益が頭打ちになったり、コケてしまったりしたときのための保険みたいなものですね(笑)。FXとは違うロジックですが、いろいろとテストしています。
編集部:- 株でも“システム的トレード”ですか?まさにそれが“こだわり”ですね。あくまで投資はシステム的トレードがメインというのがうさぎの車さんのスタイルなのですね。本日は長時間にわたり、どうもありがとうございました。
うさぎの車:- こちらこそありがとうございました。
(後編ここまで)
PickUp編集部より
「システム的トレード」では、目の前で赤字額が広がっていても、プログラム通りに取引が終了するまで、損切りをしてはならないといううさぎの車氏。強制ロスカットが目の前で起きても、冷静にその様子を見つめられるのは、 “システム的トレード”に対する強いこだわりと、何度も検証を重ねて、本当に機能するプログラムシステムだけを残してきたという、自分自身の判断を信じる強い気持ちがあるからなのでしょう。
【前編】
【トップトレーダーに聞く!インタビュー記事まとめ】