元システム・エンジニアという経験と才覚を生かし、決められたルールに基づきシステム的に分析した内容を基に手動で取引を行なう「システム的トレード」に取り組み、5年間に約5,800万円超を稼ぐうさぎの車氏。常にプログラムの検証を重ね、2020年8月末時点で自身で開発した22個のトレード手法を活用し売買している。少々の損失は、ものともしない強いメンタルで、自分を信じて継続することの大切さを訴えるうさぎの車氏は、取材に応じるのは、今回が「最初で最後」という。今回は、その貴重なトレード手法話を伺った。
(この記事は2020年10月22日に掲載した記事名『元SE うさぎの車氏「最初で最後!実需狙いのトレードで数千万円の利益を得る私だけの方法を語ろう」トップトレーダーに聞く!(前編)』を一部修正したものです)
うさぎの車氏 プロフィール
年齢性別 :50代男性
職業 :専業トレーダー
FX取引歴 :13年
トレードスタイル:システム的トレード
FX年間最高収支 :約5年で5,800万円超
投資商品 :FX、株
趣味 :FX
▼目次
1.株ブームで大損。負けを取り戻すために始めたFX
2.保証金200万円でFXスタート
3.システム的なトレードでFXに取り組む
4.勝率があがる時間帯を見つける
5.チャートの上下動と実需を結びつける
6.プロフィットファクターで3.0超が目安
7.システム的トレード手法なのにすべてが手動なの?!
8.過去の振り返りで立ち直る
株ブームで大損。負けを取り戻すために始めたFX
編集部:- FXと出合ったきっかけを教えてください。
うさぎの車:- 13年ほど前、株価が右肩上がりで、空前の株ブームだったので、それに乗っかりました。ところが、失敗して400万円くらいの損失を出してしまいました。それが悔しくて「絶対取り返してやる」と思っていて、株式以外の金融商品を探したときに、目に飛び込んできたのがFXでした。当時はレバレッジ400倍も可能で、FX会社も選び放題でした。また、職業がプログラマーだったので、システム的なトレードができる金融商品が前提でした。当時、“システム的なトレード”が可能なのがFXだけだったので、やってみようと思い実施しました。
編集部:- 現在も株式投資は続けていますか?
うさぎの車:- 運用資産の1%程度ですが、まだ保有しています。ただし、現在のメインはFXです。
編集部:- FXはスムーズに始められましたか?何か大変なことはありませんでしたか?
うさぎの車:- 株もFXも同じ投資なので、実際に始めたとき、「それほど違いはないかな」と思いました。
保証金200万円でFXスタート
編集部:- 始めたころの成績はいかがでしたか。
うさぎの車:- “システム的トレード”を実践したこともあって、最初から「そこそこ」の結果は出せたと思います。
編集部:- それはすごいですね。ちなみに最初の投資資金と初年度の成績を教えてください。
うさぎの車:- 200万円でスタートして、1年目の2008年は178万円の利益が出せました。その後も年+100%程度のペースで利益を出しています。まあ、株で大失敗して、その結果の“FX取引への移行”ですから、すでに高額の“授業料”を払っていたと言えるのかもしれません。その経験もありFXで大きな失敗はなかったですね。
編集部:- それはすごい成績ですよ!確か、会社を辞められて専業トレーダーになられたと思いますが、会社を辞めるときの気持ちはどうでしたか。
うさぎの車:- まあ、最初からいきなり専業というわけではありませんからね。会社員と並行しながらFXをやっていました。会社から安定した収入はありましたが、ある時点でFXの利益が会社からの給料を上回るようになったんです。「そのとき専業になるタイミングかもなぁ。」と考えていました。専業トレーダーになったのは、妻と結婚し、子供が生まれたころでした。
システム的なトレードでFXに取り組む
編集部:- トレードスタイルは?
うさぎの車:- 本来“システム的トレード”では、テクニカルがメインになると思いますが、私はテクニカル分析をまったく使っていません。私が使っているのは「アノマリー」と呼ばれる市場における“経験的に観測できるマーケット規則性”です。それが好きで、データ化して自分なりの売買システムを作っています。例えば、「何日が勝ちやすい」とか「何時が上がりやすい、下がりやすい」とかです。それと同時に、日経平均やニューヨークのダウ平均などの先行指標を加えて、売買の指針となる自分なりのアノマリーのプログラムシステムを作っているのです。
編集部:- そういう仕組みをいくつも作られているのですか?
うさぎの車:- FX取引では成績が不振なときもあるのです。トータルで収益を安定させるためには、仕組みを複数開発して運用しなければならないということです。
編集部:- 相当なご苦労がありそうですが。
うさぎの車:- 実際には100個試して1個が使い物になるかどうかですからね(笑)。始めた当初は、開発したアノマリーのプログラムシステムの中から、「これならいけそうだな」というものを選んで、ひたすら相場で検証を重ねていました。
編集部:- うさぎの車さんが、ソフトウェア開発などをお仕事にされてきたからでしょうか、なかなか他の人にはまねできないように思いますが。一般の人でも同じように活用できるモノなのでしょうか?
うさぎの車:- うーん、そんなに難しい事ではないと思いますよ(笑)。私が使ったのは、パワーランゲージというものですが、すでにソフトが出来上がっていて、誰でも簡単にスムーズに取り込めるような仕組みになっていますから。
編集部:- そういうものなんですか?
うさぎの車:- 何月何日何時にトレードして、勝ち負けはどうだったかが記録され、勝率や平均損益、最大ドローダウンなどの数字が一発で出ますし、グラフィックで累積資産曲線も出る。年ごとの成績も出るという仕組みが入っているソフトがあります。
編集部:- そういうソフトが市販されているんですか?
うさぎの車:- 私はどうしても勝ちたかったので、直接メーカーに問い合わせて買いました(笑)。誰でも購入できます。為替のリアルタイムデータが取れて、分かりやすいのがマルチチャートですね。私はマルチチャートというものを活用しています。
編集部:- ただ、同じシステムを使ったとしても、それぞれ成績は異なるわけですよね。つまり、利用者がうさぎの車さんと同じように勝てるわけではないですよね?
うさぎの車:- おっしゃるとおりです。すでにパッケージとして取り込まれているデータもありますし、ソフトも用意されているし、検証すべき主要な指標、数字も全部出ます。発注したければ、すぐに発注できるなど、すべてがパッケージ化されています。だから、誰が使ったとしても、理論上は同じような結果が出るはずなのですが、必ずしもそうはなりません。それは勝率が必ず100%ではなく、良くて80%、悪いと60%になってしまうからです。負けが続いたときにどう乗り越えていくか。そこはトレーダー個人のメンタルに左右されます。
勝率があがる時間帯を見つける
編集部:- 現在のスタイルになるまでに、どのような試行錯誤があったのでしょうか。恐らくシステムにいろんなデータを入れて、テストされたんですよね。「こうやってみよう」「ああやってみよう」と、いろいろやりながら、今のスタイルにたどり着いたと思いますが、具体的にはどのようなトレード手法になるのでしょうか?
うさぎの車:- やっぱり為替は「実需」なんですよね。私は取引する“得意な時間帯”とか、“日にち”とかを見つけるんです。例えば、東京市場の10時前に買いを入れ、相場が円安になったら売るということをしています。インターバンクの取引でドル買いの実需が発生し、「仲値」に向けて円安に動くからです。五十日(ごとうび)は特にそうですよね。これで6割5分は勝てています(笑)。ただ、そのときの為替レートが高すぎたり、安すぎたりすると、その通りにはいかないので、状況をよく見極めた上で、取引するようにしています。エントリーの時点でドルが上がり過ぎていないかどうかをチェックします。上がりすぎではないと判断ができれば、勝率は高くなります。結局、そういうことを見極める力を持っているか、持っていないかで、同じ“システム”を使っても、稼げる、稼げないが出ちゃうんですね。
編集部:- 相場が動きやすい“ロンドンフィキシング”などは検証していますか?
うさぎの車:- それはまだ未検証です。ただ興味はあるので、今後やってみようかなと思っています。
チャートの上下動と実需を結びつける
編集部:- 例えば、チャートの上下動が、どの実需と結びついてるのかを調べられることもありますか?
うさぎの車:- 実はそこがすごく大事で、相場を見ているときは、必ず横にニュースを表示しています。相場が大きく動いたときに、実需で動いたということがニュースで伝えられていたら、すぐにバックテストを行って、使えるかどうかを検証します。毎月、同じ日の同じ時間帯に、この実需があればいいわけですよ。
編集部:- なるほど、うさぎの車さんの “アノマリー(経験的に観測できるマーケット規則性)”で、他に「これは使える」というものがあったら、教えてもらえないでしょうか?
うさぎの車:- うーん、そうですね。先ほどの「仲値」は、私の“鉄板”です(笑)。この仲値の後は、10時から10時半にかけてリバウンドすることがあります。そういうときは、瞬時に売って、その後に買い戻すと結構勝率が良くなります。
編集部:- バックテストを行い相場で実践しながら、時間をかけて、そういう答えを導かれたのですね。ちなみに通貨ペアはドル/円ですか?
うさぎの車:- ドル/円とユーロ/ドルしかしないですね。取引の8割がドル/円で、2割がユーロ/ドルです。先ほどお話したパターンはドル/円での話で、ユーロ/ドルは検証していません。
プロフィットファクターで3.0超が目安
編集部:- いろんなパターンをテストされる中で、どの程度の勝率があれば、「これは使える」と判断されるんでしょうか?
うさぎの車:- 私は勝率よりも、過去データによるシミュレーション結果を積み重ねた「累積資産曲線」のグラフを見ます。そして、重視しているのが「プロフィットファクター(PF)」です。これは総利益が総損失の何倍あるかを示すデータで、期待値を示す指標です。グラフが右肩上がりにならないと負けてしまうのですが、実運用に耐えうるような右肩上がりになるのはPFが3.0以上のときなんです。他にもドローダウンしたときの金額とか、ポジションを保有する長さとか、勝率も含めて複合的に判断しています。
編集部:- なるほど。そうやって設定したシステムを実際に使ってみて、結果を分析しながら、いろいろとパラメータを変えていくんですね。
うさぎの車:- 大きく負けたときとか、後になって上がったときとか、「ちょっとタイミングが悪かったかな」と反省してチューニングします。売買のタイミングをずらしたり、ロスカットのタイミングを延ばしたりします。
編集部:- プロフィットファクターを計算して、「これは勝てそうだ」っていうところを見つけたら、そのパラメータをシステムに打ち込むんですね。結局、相場の動きに合わせるところがポイントなのでしょうか?
うさぎの車:- そうですね。例えば「何時何分のこの時間帯から10分間はこういう傾向が出る」っていうことを、いかに見つけられるかが重要であり最も大切な事なのです。
システム的トレード手法なのにすべてが手動なの?!
編集部:- 外為どっとコムは、MT4やシステムトレードなどの取引ツールをユーザーに提供していません。うさぎの車さんは、全部「手動」で取引を実践していただいていますよね?
うさぎの車:- そうです。全部手動です。御社に限らず、私は自動売買をいっさい活用していません。
編集部:- うさぎの車さんのトレード手法を全て手動で取引実践するのはけっこう大変ですよね?
うさぎの車:- いやー、本当に大変なんですよ(笑)。最近は1回で300万通貨を売買することもあるので、全部手動で取引実践するのは結構大変です。
編集部:- 例えば、「仲値」狙いであれば、東京市場の10時から10時30分にかけて、何万ドルも手動で売買するということですか?
うさぎの車:- そうですね。ただ、「時間指定成り行き注文」というのがあって、何時何分になったら、買うとか、売るとかっていうのを、あらかじめ指定することができる注文方法があるんです。指定時間になる前に注文を入れておいたら、あとはFX会社側で自動で売買してくれるんで、すごく便利なんです。外為どっとコムさんには、この時間指定注文があるので凄く気に入っています。
過去の振り返りで立ち直る
編集部:- 相場状況をみてロット数(取引量)を変化させますか?
うさぎの車:- 私はしていないです。ロットを増やすときは勝ったときかな。もっと言うと、累積資産曲線を描いたときに、前回のピークを抜けていたら、ロットを増やすようにしています。減らすときは、負け続けたときですね。最大ドローダウンを更新したときとか、負けが10回続いて、ちょっと嫌な感じになったときとかですかね。ただ、基本的には変えません。結局、そうやって変えてしまうと“システム的トレード”ではなくなってしまうからです。
編集部:- でも、心理的には負担が大きそうですね。ところでメンタル面でのケアはどのようにされていますか?
うさぎの車:- いつも参っていますよ(笑)。専業で8年もやってきたせいか、感覚が麻痺しちゃったみたいで「勝って当たり前」みたいになっているのです。だから、少しでも負けると、ものすごいストレスを受けます。そんなときは、とにかく“淡々”とやるようにします。
編集部:- 投資の成績は記録されていますか?
うさぎの車:- 毎日何をいくら買ったのか、その取引でいくら利益が出たのか、いくら負けたのかをエクセルに記録しています。かれこれ6年くらい記録しています。勝てないときは、データをグラフにしたものを見て「過去これを乗り越えてきたのだから、たとえ今勝てなくても、いずれ乗り越えられるはずだ」と思い直しています。
※うさぎの車さんのトレード記録。トータルでは急速な右肩上がりだが、グラフ左下には急落の痕跡が。2020年3月のコロナショックによるもの。
編集部:- まるでアスリートみたいですね。
うさぎの車:- 2019年1月3日のフラッシュクラッシュをまともに食らい、約6,000万円負けました。年始早々から顔面蒼白でしたよ(苦笑)。そこから右肩上がりになりましたが、今年になって、ようやく負け分を取り返せました。今も2カ月ぐらい利益は出ていませんが、「去年の負けから、これだけ盛り返したのだから、いずれまた最高値を更新できるだろう」と考えるようにしています。負けた過去を乗り越えた自分を確認し、自分自身を奮い立たせるのです。
(後編に続く)
PickUp編集部より
「アノマリー」とは、いわゆる金融の理論や法則では合理的な説明ができないけれども、よく当たる相場での“経験則”のこと。そのアノマリーに関するデータを集め、検証し、それをベースに“システム的トレード”を実践するトレーダーは、これまでインタビューしたトレーダーに中には一人もいませんでした。従来の“シストレ”とは一線を画したトレードを実践するうさぎの車氏の後編では、トレードで大事にしていること、毎日の過ごし方、将来の夢なども伺いました。
【トップトレーダーに聞く!インタビュー記事まとめ】