「ミセス・ワタナベ」とは、FXが普及したことで、為替相場に大きな影響を及ぼすようになった日本の個人投資家の総称だ。会社のお昼休みの時間帯に相場が動くので、主婦やOLたちの取引が要因になっているとの見方から、海外メディアが、日本に多い名字の「ワタナベ」を使って、日本の個人投資家のことを表現するようになった。ところで、日本の女性投資家はFXでどのような取引をしているのだろうか。現在、専業主婦で、リアル「ミセス・ワタナベ」に、話を聞いてみることにした。
よちこさん プロフィール
年齢性別 :30代女性
取引歴 :約10年
取引スタイル:短期トレード
投資商品 :FX、日経225など
以下の取材記事はトレーダー個人の経験やお考えに基づくものです。その内容について当社が保証するものではありません。実際のお取引については充分内容をご理解の上ご自身の判断にてお取り組みください。
(この記事は2019年8月15日に掲載した記事名『専業主婦トレーダーだからこそ「利食い千人力」トップトレーダーに聞く!』を一部修正したものです)
FXは「売り」でも「買い」でも始められるのが魅力
- PickUp編集部:
- FXを始めたきっかけは?
- よちこさん:
- FXを始めたのは2008年の秋です。新卒で外食産業に就職し、好きなコーヒーを製造・販売していました。当時はリーマンショック前で"売り手市場"だったこともあり、「第二新卒」がもてはやされていた時代で、そういう「勢い」もあり、1年足らずでその会社を辞めました。大学時代から海外旅行が好きで、英語ができたことから、声を掛けていただき、外資系金融機関に勤めることになりました。転職してお給料が上がったことや、当時は実家で暮らしていたので、資金的にも余裕があったので、資産運用を始めることにしました。
- PickUp編集部:
- なぜFXを選んだのですか?
- よちこさん:
- 私が勤めていた会社は、社員が株式投資をする場合、売買状況について、いちいち会社に報告しなければならず、「面倒くさいな」と思っていました。FXの場合は、そうしたルールが適応されず、私は証券化や信託業務など、為替とは関係ない業務に従事していたので、結局、FXを選びました。当時、大きくもうけて退職するようなことは考えていませんでした。兼業投資家として、「お給料とは別に、『稼ぎ』があればいいな」というぐらいのつもりでした。
- PickUp編集部:
- 実際に始めてみた感想は?
- よちこさん:
- 海外旅行が好きだったことから、為替というものに、もともとなじみがありましたし、興味もありました。FXの良いところは、「売り」でも「買い」でも、どちらからでも入れることです。そこに魅力を感じていました。
リーマンショック後の「豪ドル・スワップ狙い」で大失敗
- PickUp編集部:
- 最初に取引した通貨は?
- よちこさん:
- ドル/円ですね。基本的に注目してしまうのがクロス円で、やはり売買の割合は、ドル/円が一番多い。そこからユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円と広げていきました。昨年からは、ユーロ/ドル、ポンド/ドルも持つようになりました。
- PickUp編集部:
- 始めた頃の取引を振り返ってください。
- よちこさん:
- 思えばひどい投資スタイルでした(笑)。値ごろ感で買ったり売ったり......。逆行したら戻ってくるまで、ずっとホールドして、何度もロスカットを経験しました。
損切りラインを甘い方向にずらすとか、ナンピンとか、負けると熱くなって、一発逆転狙いでロットを上げるとか、短期目線で入ったのに、途中で長期目線に切り替えるとか、指南書で「禁じ手」と書かれているものは、ほぼすべて経験済みです(一同爆笑)。 - PickUp編集部:
- これまでに一番失敗したと思うのは?
- よちこさん:
- 大失敗だったのは、リーマンショック後のスワップ狙いで、豪ドルに手を出したときです。かなり大きな痛手を負いました。強制ロスカットで数百万円を失いました。その痛みは良く覚えています。だから(高金利通貨で2018年に人気の高かった)トルコリラは一切、触っていませんよ(笑)。
家族の協力を得て、FXに取り組む
- PickUp編集部:
- 現在は専業主婦トレーダーになられたと。
- よちこさん:
- はい、2018年2月に10年勤めていた外資系金融機関を退職し、専業主婦になりました。結婚して6年になる会社員の夫と、3歳の長男、そして、昨年11月に出産したばかりの次男の4人です。3歳の子は日中、保育園に預け、生まれて3カ月の0歳の子の面倒を自分でみています。
ご存知かもしれませんが、基本的に保育園は仕事をしていないと子どもを預けられません。「求職中」なら、保育園に申し込みできますが、優先順位は低くなってしまいます。長男はこの春に卒園して、幼稚園に通うことになり、午後2時には帰ってくるので、フルタイムで働くことができません。新しい仕事に就くために、長男を保育園に入れ直すのも難しいですし、生まれたばかりの次男を預けて、新しい環境で働くというのも、なかなかハードルが高い。そう考えて、当面、再就職するのは諦めました。現在は夫の収入で家計をやりくりしながら、私のFXでの運用益をプラスする感じで生活しています。 - PickUp編集部:
- 家族の理解と協力を得てトレードしているのですね。
- よちこさん:
- 夫は昔、ちょっとだけFXの経験があるそうです。今は一切やっていなくて、私を応援してくれていますが、運用について口出しされることは、まったくありません。だから、今、私が勝っているのか、負けているのかも知りません(笑)。運用資金はすべて私のお金で、夫婦の財布は別にしています。何より、私が仕事に復帰するのが難しいことを理解してくれていますので、FXの運用を頑張ろうという気持ちになります。
専業主婦トレーダーだからこそ、「利食い千人力」
- PickUp編集部:
- よちこさんの取引ルールを教えてください。
- よちこさん:
- 基本はデイトレードです。移動平均線、MACD, RSIのゴールデンクロスでエントリーして、基本的には10~20pipsを取ることを目指しています。トレーリングで利益を伸ばすこともあります。最近はショートポジションが多いですね。円高に振れるときはスピードが速いので、"ストン"と抜けたときは気持ちがいいですよね(笑)
- PickUp編集部:
- 兼業トレーダーのときと、専業主婦トレーダーになった現在の投資手法に違いはありますか?
- よちこさん:
- 兼業のときは「年間で100万円から200万円の利益があればいいな」というイメージでした。余裕資金でしたので、思い切ってギャンブルトレードもしていました。ところが、サラリーマンを辞めるとお給料が入ってきません。会社を辞めて受け取った失業保険も、出産費用に当ててしまいました。子育てしていると出費も多いです。稼いでいかなくてはいけない状況なので、今は生き残るための投資、損をしない投資を心がけています。
「利食い千人力(少しでも利益が出るなら、そこで決済しろという意味の格言)」ですよ。ただ、給与所得がないので、目標額はもう少し欲を出してやっています。兼業のときの2倍は欲しいですね。 - PickUp編集部:
- 仮想通貨などの新興投資はしていますか?
- よちこさん:
- 興味はありますが、手は出していません。もし投資するなら、FXで一本立ちできてからにしたいと思っています。500万から1000万円稼げるようになったら考えますが。最近、積み立てNISAとiDeCoを始めてみましたが、これらは積極的な資産運用とは違いますよね。
8年目にして初めてFXのスクールに通う
- PickUp編集部:
- FXの取引の方法などはどうやって学んだのですか?
- よちこさん:
- 私はまったく知識がない状態でFXを始めました。完全に独学です。やはり、書籍から学んだことが多くて、もう何十冊も読んでいます。正直、"アナログ"な人間ですし、朝夕の通勤時間が読書に利用できたので、本が良かったんだと思います。本を読んで理解したことを、小額ですが、実際にやってみる。結果的に負けて痛みを知る。それで上達する。その繰り返しだったように思います。
- PickUp編集部:
- 書籍以外で学習したことはありますか?
- よちこさん:
- 私は、いわゆる情報商材には手を出していません。情報商材は数が多すぎて、どれを選べばいいいのかわからないですし、悪い評判も聞きますので。ただ、一昨年ですが、友人の勧めもあって、初めてFXについて教えてくれるスクールに通ってみました。そこでは、チャートを見ながら、どのタイミングでエントリーするのかなど、テクニカルなことをいろいろと学びました。そのスクールはリスク管理に重点を置いていて、「破産リスクをゼロにしてトレードはすべし」という方針でした。
- PickUp編集部:
- 腕を磨くためにしたことはありますか?
- よちこさん:
- 普通のことかもしれませんが、トレードを記録しています。運用成績だけでなく、何で負けたのかなどの分析を、FXを始めたときからつけています。「なぜここでエントリーしたのか」とか、「こうすればもっと取れた」とか、「なんで負けたのか」などの理由を記録しています。全部自分の弱さを見つめるための記録です。
- PickUp編集部:
- いつ、どのように取引しているのですか?
- よちこさん:
- 兼業時代は通勤時間に情報収集して、自宅に帰ってきてから夜にトレードしていました。翌日に差し支えるので、終わりは「深夜12時まで」と決めていました。
今は日中ですが、子育てがあるので、チャートに張り付いているわけにもいきません。スキャルではなく、デイトレなので、エントリーできそうなところがあれば"やる"という感じです。
スキャルピングに抵抗感はありませんが、少しやってみて、自分には瞬発力がないかもしれないと思い、「スキャルは向いていない」と悟りました。今の生活スタイルにも合いませんしね。
(後編につづく)
PickUp編集部
前編では、よちこさんがFXを始めたきっかけ、FXの勉強方法、取引のルールなどについて話を聞きました。後編では、収支の管理方法や今後の目標などについて伺います。
よちこさんの記事↓↓↓
後編・・・「専業主婦トレーダーだからこそ「目標収益1億円と家族でハワイ旅行!」」
【トップトレーダーに聞く!インタビュー記事まとめ】