野村雅道のID為替 (レポート)|FXブログ|外為どっとコム

「GPIF為替ヘッジについて。一気にやればLTCM、スイス介入放棄のようなショックもあり。所詮為替のディーリングとなる」2015年9月投稿

「GPIF為替ヘッジについて。一気にやればLTCM、スイス介入放棄のようなショックもあり。所詮為替のディーリングとなる」2015年9月投稿

*年金はGPIFの運用益に頼るものではなく、年金保険料と消費税で賄うものである。保険料で積み立てられている基金をGPIFが運用する。
 ただ毎年の年金支払いに窮するような流動性の問題はないだけこれほど巨額な積立金が必要ではないという意見もある。

*積立金運用でさらにリスク投資を拡大する場合には、収益がマイナスに振れた際に、国民にショックに耐えるよう説得しつつ信認確保に努める意

志を固めておくことが必要。

*これまでは国債中心に運用していたが、アベノミクスの第3の矢・成長戦略の一環として、GPIFの資産運用が見直され、国債の運用比率が引き下げ

られ国内株、外国株、外国債の運用比率が引き上げられた。したがって株価動向、為替変動のリスクによりさらされることとなった。

*さて12月9日にGPIFが保有する約49兆円の外貨資産(外株・外貨債券)のヘッジに言及した。今年2月の時点では、元インターバンクディーラーであったGPIF運用委員が、外貨建て資産を大幅に増やす中で、円高到来時の為替差損を回避する金融取引(ヘッジ)を検討していくべきだと主張していた

が、当時GPIFの森新一郎企画課長は、「資産構成は為替ヘッジなしで作っている。為替ヘッジは内外金利差で決まるコストを支払う以上、円相場の騰落見通しを立てることになるが、GPIFは相場観に基づく投資行動はしていない。資産規模が巨額なので、市場取引の相手方を確保できるのかという問題がある」と語りヘッジ取引には否定的であった。2012年、13年、14年と貿易赤字の拡大で全面円安となり外貨資産の収益も改善していたが、今年の円相場は対ドルを除けば円高推移し、7-9月期の収益悪化にもつながっていたので今回のヘッジ取引への言及となったのであろう。

*ヘッジ取引とは保有する資産の目減りを防ぐために一時的に反対売買を行う取引である。外貨資産のヘッジは株、債券、為替と3種類あるが
ここでは為替のヘッジについて取り上げたい。

*円安が維持できればヘッジの必要はないが、円高が進展したり、する見込みがあればヘッジの円買いを行う投資家は多い。10%の円高での為替差

損を防ぐためには、フルヘッジを行えば完全に補える。オーバーヘッジをすれば、さらに余剰の利益が出る。ただ一般的なヘッジ比率は30%程度と

される。10%の円高差損のうち30%を補えればいいとの考えだろう。フルヘッジすれば、逆に円安へ転じた時に本来のすべて利益を失ってしまう。
5%から10%のヘッジでは、売買コスト、売買判断への時間のコストを考慮すれば意味がないもの、意味がない損失を生み出してしまうだろう。

*そのヘッジの割合を決定するのも重要だが、為替相場は乱高下するだけに機動的な売買も必要とされる。ヘッジ売りのタイミング、その買戻しの

タイミングは投資家のスキル次第となるので30%ヘッジしたからといっても、為替差損の30%が必ず補てんできるものではない。機を逸すれば
ヘッジも損金となる可能性も出てくる。ヘッジは相場観に基づく投資行動なので難しい。

*ヘッジはおそらく包括ヘッジとなるのであろう。現在は運用は外部委託であり、各運用会社が個別でいくらかはヘッジしているのだろうが
 今後はGPIF自体が全体の外貨ポジションを包括でヘッジを行うのだろう。それが効率的である。株式をGPIFで自家運用を計画しているGPIFだが
 為替の運用室も必要となってくるだろう

*ただ金額が大きい。GPIFは外貨資産をこれまで増加させてきたが、ゆっくりと徐々に増やしてきた。長期の円安の流れをつくることに貢献してき

たが短期に市場に大きなインパクトを与えることはなかった。ただヘッジは一気に機動的にまとめてやることになるだろう。49兆円の30%なら
約15兆円であり、日本の貿易黒字が巨額だった頃の金額である。日銀の為替介入でも15兆円を一気にやったことはない。


*流動性の問題、おそらく為替ディーラーも経験したことのない金額を一気にカバーすることとなると、いくらドル円の流動性が厚いとしても
市場が一気に5円、10円動くパニック状態にもなる。十分な金額をヘッジしないうちにさらに円高が進むリスクが大きい。1998年のLTCM破たんに伴う

ドル円の売りで2日でドル円が24円の円高となったことや、2015年1月のスイス中銀の介入放棄発言でスイスフランが対ドルで40%程度上昇したよう

なことも起きる可能性がある。


*GPIFが為替ヘッジをするとなれば、もちろん、ゆうちょ・かんぽも追随する。目の前で円高が進むのだから、他の機関投資家もみすみす
為替差損増大を見ているわけにはいかず円買いを始めるだろう。機関投資家から円キャリートレードをしている個人投資家まで一斉に円買いを行う

。そういう市場状況で誰が円買いに応じて円売りをしてくれるのだろうか。輸入業者でさえ引いてしまうだろう。日本の投資家の巨額ヘッジを聞き

つけた海外の投機筋もここぞとばかり円買いを行う。もちろん個々の投資家の行動は守秘義務があるが、プライスアクションで何が起きていること

はすぐに誰にでもわかってしまう。

*1億ドル、2億ドルなら市場はこなせるが、一気に10億ドルとなれば市場は混乱する

*3か月ごとにGPIFは運用を公表しているので市場はすぐにGPIFの手の内を知ってしまう。もちろん公的年金で我々のお金であるので、何をやってい

るかは正確に教えてもらわないといけない。

*ヘッジは一気にやらないと効率的でないが、これだけの巨額の取引を一気にやるとパニックとなる。

*GPIFの49兆円と同程度の外貨資産がゆうちょ、かんぽ、民間生保にある。機関投資家で100兆円。外貨投信が30兆円ある。さらに個人投資家、
輸出債権もある。

*GPIFのヘッジが始まれば大円高となろう。円高になるのは、貿易赤字が縮小したり、黒字化する時で実需も円買いに走っている。順張りの行動を

取りがちなヘッジファンドも追随する

*GPIFのヘッジはやらないほうがいい。配当や利息を受けとる時だけ円転すればいい

*では為替差損はどうするか、年金は長期運用である。永遠の運用でもある。外貨の長期運用の姿勢は金利・配当収入が為替差損をいつかは補うこ

とが基本にある。最初から為替差益を狙うのなら、それはデイトレのようなものであり。GPIFに別に為替ディーリングルームでもつくり
そこでせっせと稼いでもらえばいい。ヘッジとかいわずに為替差益狙いの別舞台が長期投資の為替差損を補えばいいが、それも金額が巨額となるだ

けに市場を混乱させることは間違いない

*長期投資でいつも私が思うのは為替差損が出れば円に換えなければいい。外貨を外貨のままで使えばいい。日本の物価はデフレといいつつ
 食料品など世界に比べれば法外な関税もあり高い。為替差損が出た時には関税をかけずに外貨を使い外国のものを買えばいい。年金の代わりに現

物支給となる。あるいはインターナショナル・オンラインショッピングを整備して関税を排除して国民に外貨年金で購入してもらってもいい

*例えばオーストラリア人は円高差損も関係なく、豪ドルをそのまま使い生活している。外貨資産はそう利用すればいい。為替差損で悲鳴を上げる

なんて時代遅れである。

*GPIFなど巨大投資家が一気に動いたり、手の内を知られたりすることは市場にパニックを呼びおこす
 ただ静かにヘッジをすることは効率的でない。またヘッジ取引は個々のディーラーのスキルが大きく影響する。市場の変動は大きく、ゆっくりと

会議して結論を出す時には、逆の要因で動いているかもしれない。

*それでもヘッジすることもいいが、ボラティリティーを高め市場の短期取引筋を大いに喜ばせることとなる。

*大事なことは、ここ11年から14年は偶発的な大震災による貿易の赤字化で全面円安が続いてきた。貿易赤字なら円安となりそれで経済が活性化す

るということがわかった。その偶発的な恵みを忘れることなく、貿易をかつてのような輸出一辺倒にせず バランスをとって輸入も拡大することが
為替相場の安定となる。為替が安定すれば経済も安定する。GPIFが円買いを行うことは原発再開と同様に為替の安定を損なう。

*十分に気をつけ、影響を考えつつ行動に移してもらいたい。GPIFの運用責任者は個々で絶対に責任をとれない金額を運用しているのである。

*長期投資は金利で稼ぐのが基本で、ヘッジはごくまれにしかやらないこと。儲けたいならヘッジではなく、別行動の為替ディーリングチームを作

ること

*外貨は外貨のまま使えるようにすればいい。為替差損は時代遅れ。ユーロ圏諸国は域内ではすでに為替差損を脱している。

FX湘南投資グループ代表
野村 雅道(のむら・まさみち)氏

1979年東京大学教養学部を卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行、82年ニューヨーク支店にて国際投資業務(主に中南米融資)、外貨資金業務に従事。85年プラザ合意時には本店為替資金部でチーフディーラーを務める。

詳しくはこちら

ブログカレンダー

 

カテゴリー一覧

  • レポート
  • レポート(PDF形式)


業界最狭水準スプレッド

おいしく!ザクザク!夏祭りキャンペーン

お友達ご紹介キャンペーン

口座開設キャッシュバックキャンペーン