野村雅道のID為替 (レポート)|FXブログ|外為どっとコム

「東京市場での需給のクセ」 (仲値でドルが上がる理由)

「横浜馬車道為替物語⑪」2016年7月21日(木)
「東京市場での需給のクセ」
(仲値でドルが上がる理由)
 為替を少し経験すると朝10時前後にドルが強含むことに気づく。(実際90%以上仲値決定時刻はドルの需要超となる。いわゆる外貨の不足状態―逆は余剰と言う)顧客向けの公表相場の決定する時間である。この時間のドル円相場の出合いを基にその日の対顧客相場が決定する。輸出入、外国送金、両替等々の何十種類の為替相場が決められる。日本の銀行の最も忙しい時間帯である。 銀行の窓口に行けば公表相場表というものが置いてある。 為替相場、先物相場、金利、米国ポステッドBAレートなどが考慮されて決定される。見るだけで為替相場の勉強となるのは間違いない。これを理解、説明できれば 為替の仕組みの勉強はひとまず終わりである。
 さて日本は経常黒字国なのに何故ドルがその仲値の時点で上昇するのだろう?
ドル(外貨)の買いは外国への支払い、売りは外国からの受け取りである。銀行用語では仕向け、被仕向けと言う。支払いは自らが行うもので期日も決まっている。だから前日から銀行に通知することが多い。受け取りは海外から送られてくるもので、必ず予定した日、時間に資金が送られてくるとは限らない。いつの時点で受け取るかは不確定である。
 朝の早い10時時点では自分が送金する金額はわかっても、受け取る金額は未確定なのである。 よって 公表相場を決める時点での為替相場はドル(外貨買い)が多くなる。
 銀行ではそれを不足(外貨の不足)と呼ぶ。 最近は報告していないようだが、以前は当局が、毎朝 本日の不足はとか、来週の需給予測(仲値の不足状況)を聞き取っていたのである。 当局はすべての為替相場の動向を把握しようとし、この数字などを基に需給を調査し介入金額も決定できるのである。また銀行のもっとも忙しい10時までは介入を控えることもあったようだ。 ただでさえ煩雑な銀行のポジション把握が大規模介入も入ればさらに混乱しよう。 介入は午前10時以降が多い。それ以前に介入ならかなりの決意だ。
話はそれたが確定していることの多いドルの買い玉は朝10時の時点で取引される。しかし その後入金が確認されると円に換えられる輸出代金の受け取りは10時以降に散発する。1日を通せば経常黒字国の名が示すようにドル(外貨売り)が増えることとなる。 買いは10時に一気に出て、売りは1日を通してゆっくり出る。
 従って、朝 8時から10時までの平均の値動きは日々5-10銭の上昇となる。 スプレッドや手数料を勘案すればそんなことがわかっても儲からないということだが、売るとさらに儲からないわけである。 もちろん いわゆる、5,10の倍数の日にはまた月末、期末、年末、年度末の仲値はドル需要が増える。企業にとって支払いはできるだけ遅らせることが資金効率をよくするのでそうなるのだろう。もちろん一日を通じればドルが下がることのほうが多いかもしれない。
 参考までに10時の不足で相場に影響がない本数は3億ドル程度、5億ドルを超えれば やや影響がでる。10億ドルを超えればかなり大きいと言えよう。 もちろんその後の輸出玉が相殺していくのだが、すべては東京市場では仲値のドル不足は相殺しきれない。(相場を真に動かすのはこのような買い切り、売り切り あるいは それに近い長期的なポジションであり、短期的に大きく相場をはる投機筋ではない。)

FX湘南投資グループ代表
野村 雅道(のむら・まさみち)氏

1979年東京大学教養学部を卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行、82年ニューヨーク支店にて国際投資業務(主に中南米融資)、外貨資金業務に従事。85年プラザ合意時には本店為替資金部でチーフディーラーを務める。

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