野村雅道のID為替 (レポート)|FXブログ|外為どっとコム

米国の景気頼みだけでは円安傾向は長続きしない

8/8(月)「米国の景気頼みだけでは円安傾向は長続きしない」
総括「中国指標、NZ政策金利、世界貿易週間など」
その他通貨「豪ドル、NZドル、南アランド、トルコリラ」
テクニカル「ドル円」
ドル円=99-104、ユーロ円=110-115 、ユーロドル=1.09-1.14
 *暑中お見舞い申し上げます
 今週はお盆休みにて一部休載させて頂きます
 宜しくお願い申し上げます
1.(今週の予定)
8(月)日 景気ウォッチャー調査 国際収支 中 貿易収支 独 鉱工業生産 スイス 消費者物価指数 加 建設許可件数
   米 労働市場情勢指数 
9(火)豪 NAB企業信頼感 中 消費者物価指数 生産者物価指数 スイス 失業率 独 貿易収支 経常収支 英 鉱工業生産 製造業生産
 貿易収支 加 住宅着工件数 米 非農業部門労働生産性 単位労働コスト メキシコ 消費者物価指数 米 卸売在庫 景気楽観度指数
 卸売売上高 英 国立経済研究所(NIESR)GDP
10(水)日 機械受注 第3次産業活動指数 豪 住宅ローン貸出 ノルウェー消費者物価指数
11(木)NZ 政策金利  英 RICS住宅価格 スウェーデン消費者物価指数 米 輸入物価指数 新規失業保険申請件数 加 新築住宅価格指数
メキシコ 政策金利
12(金) NZ 企業景況感 小売売上 中 鉱工業生産 小売売上 独 GDP ユーロ圏 鉱工業生産 ユーロ圏GDP 米 小売売上 生産者物価指数 企業在庫 ミシガン大消費者信頼感指数
2.総括「中国指標、NZ政策金利、世界貿易週間など」
*円「米国の景気頼みだけでは円安傾向は長続きしない」
 テクニカル的に先週は日足下降トレンドライン(7月29日-8月2日)を上抜け、米国雇用統計の改善もあり上昇(円安)した。今週は週足でも7月25日週-8月1日週の下降ラインを上抜いて始まるので、まだ少し上昇余地がありそうだ。ただそれは貿易黒字、経常黒字の状況下では調整に過ぎず、中期的には円高トレンドのままであろう。
 また米金利が上昇しているが、日銀が9月に異次元緩和政策の効果を総括的に検証する方針を示したことをきっかけに先週も一時大きく国債利回りが上昇する場面もあり株・為替相場が不安定になったが、今後もマイナス金利の限界が議論されていることもあり、日本の金利についても注目していきたい。
 株価は日銀がETFの買いを増額したことで期待が持たれているが、これまでもその程度の増額ならGPIFが行っていたことであり、それでも株価が下落していたことを振り返れば大きな効果はないだろう。すでにリスク資産への配分を終わりかけているGPIFの代役を日銀が果たそうとしている程度である。マイナス金利を続ければ、預金者、金融機関、年金などが損失を拡大する。マイナス金利の出口政策を模索すれば日本国債市場や株価市場がより不安定となり日銀自身の資産が劣化してしまう。劣化してもマイナス金利の出口へ向かうことが長期的な日本の金融市場の正常化、金融機関や年金の収益回復に向かうと思う。マイナス金利は十分な想定なしで実行されたものとしか思えない。十分な検証をして日銀は修正してもらいたいところである。預金者より少数の債務者を救済しても全体の景気にはメリットがない。ただでさえ貿易の黒字化で円高となりデフレ再発となりつつあるのに、マイナス金利で個人や投資家の可処分所得を削ってはさらにお金を使わない国となってしまう。米国の景気頼みだけでは円安傾向は長続きしない。
*米ドル「年内利上げの確率上昇」
 注目の7月雇用統計は、非農業部門雇用者数が25.5万人増と、予想の18万人増を上回り、前月に続き大幅な伸びを記録した。賃金は上昇し、過去2カ月分の雇用者数の伸びも上方修正されるなかFRBによる年内の利上げ観測が強まった。 失業率は4.9%で前月から変わらず。雇用者数は6月分の増加数が29.2万人に、5月は22.4万人にそれぞれ上方修正された。この結果、過去2カ月間で計1.8万人の雇用が上乗せされた。
 FRBは年内の利上げに踏み切るだけの十分な根拠を得ることになったとの声が多い。市場金利やドルは上昇したが、株価も上昇し良い方向へ向かっている。 CMEグループのフェドウォッチプログラムのデータによると、短期金利先物市場に織り込まれた年内利上げの確率は45.4%と、前日の32.1%から上昇した。
 一方、6月貿易収支の赤字額は前月比8.7%増の445億1000万ドルと、昨年8月以来10カ月ぶりの高い水準となった。赤字は3カ月連続で増えた。国内需要の増加と原油高が輸入額を押し上げる一方で、ドル高の影響が残る中、引き続き輸出が伸び悩んだ。赤字額が増加すれば、ドル高相場を当局が牽制してくるだろう。ドルが反転上昇すれば、原油安、資源安を招きやすいので新興国や資源国への影響が心配である。
*ユーロ「経済も通貨も強からず弱からず」
ユーロ圏 6月生産者物価指数 (前年比)は前回 -3.8%、予想 -3.4% 結果-3.1% 、6月小売売上高 (前月比)は前回 +0.4% 予想 0.0% 結果0.0%となった。相変わらず強いものではないが、弱すぎることもないユーロ圏らしい数字が出ている。 ユーロ圏2Q・GDPは前年比+1.6%と1Qの+1.7%は下回ったが予想の+1.5%を上回り無難なものとなった。ECB月報もそれをよくとらえていて、ユーロ圏の成長見通しに関するリスクは依然としてダウンサイドだが、経済の回復は穏やかなペースで進むと予想としている。また7月ユーロ圏総合PMI改定値は53.2と、6月の53.1から上昇。7月の速報値は52.9と、前月比で低下していた。PMIの 上方修正は若干の改善状況を示すもので、ユーロ圏が英のEU離脱に伴う影響を総じて逃れていることを示唆している。
 さてイタリアの銀行不良債権問題だがパドアン経済・財務相は国内銀行はシステム上の危機に瀕しておらず、他の銀行システムに脅威をもたらしていないとの認識を示した。
*英ポンド「英中銀は市場予想より積極緩和姿勢を示す、ポンド下落、FT指数は上昇」
 英中銀は約7年ぶりに利下げを行った。さらに国債買い入れ枠を3750億ポンドから4350億ポンドに拡大した。EU離脱決定によって揺らいでいる安定性の回復に向け「必要とされるあらゆる行動を取る」方針を鮮明にした。
 英中銀のカーニー総裁とブロードベント副総裁は相次いで金利はさらに低下する必要があるとの考えを示した。
カーニー総裁は、必要に応じて金利は一段と引き下げられる可能性があるとの考えをあらためて表明。ブロードベント副総裁は追加利下げを支持するとの立場を示した。 カーニー総裁は中銀が新たに導入した刺激策にもかかわらず、英国の失業者数は向こう数年間で約25万人増加するとの予想を示している。 ブロードベント副総裁は、減税や財政支出による追加刺激策や金融政策をもってしてもEU離脱に伴う悪影響を完全に相殺することはできないと指摘した。「経済に対する構造的な影響を相殺するために金融政策、および通常の財政政策にできることには限界がある」との認識を示した。 英中銀の悲観的な見解でポンドは続落した。
 ただ株価はそれほど悲観的ではなく、利下げ観測期待で上昇を続けている。
*人民元「銀行の資産運用制限で株価下落。製造業PMIはマチマチ」
銀行の運用制限観測とIPO承認での需給悪化懸念で上海株価指数が下落、依然 日経平均と世界の株価番付最下位を争っている。7月製造業PMIは50を割ったが、7月財新製造業PMIは大きく改善した。
 人民元相場は最近、持ち直していると言われている。人民元相場の決定はドルを中心としたバスケット制度を採用している。今年はドルが弱いので人民元が安くて当然である。先週後半ドルが持ち直したので人民元も持ち直している。極めて機械的だ。あまり政策意図はない。ドルとともに相場が推移すれば少なくとも米国からの批判は和らげることができる。G20では米国から最近の人民元の市場化への取り組みが評価された。
 さて今週は重要指標の発表が多い。貿易収支、消費者物価指数、生産者物価指数、鉱工業生産、小売売上、固定資産投資などである。
政府系シンクタンクの16年GDP成長率予想は6.6%-6.8%となっている。財政政策にしろ金融政策にしろ、多くの国が期待する積極的なものが出る状況ではない。穏便な政策が今後も継続されるだろう。
3.「豪ドル、NZドル、南アランド、トルコリラ」
*豪ドル「利下げ後も豪ドルは対ドルでしっかり、今週はRBA総裁講演あり」
政策金利は予想通り引き下げられた。2Q・CPIがやや弱かったことが要因である。政府はGDP成長率見通しを上方修正、鉄鉱石の出荷は増加している
。6月雇用統計は改善した。フルタイム雇用者が大幅増となった。成長はしっかりしているが、低インフレが問題である。低インフレの要因は賃金の伸び悩みと小売業の競争激化による価格下落である。株価は利下げ期待で上昇を続けていた。来週は雇用統計の発表がある。

*NZドル「今週政策金利、利下げ予想も対ドルでは戻し基調」
 8月11日は政策金利決定 予想は0.25%の利下げ、声明ではNZドル高懸念も表明するだろう。ただ国内経済はしっかりしており、成長率予想も2%から3%と世界の先進国では高い水準にある。利下げ要因は豪と同じくインフレターゲット以下の物価水準である。RBAやBOEの利下げもNZ中銀の判断に影響するだろう。住宅、雇用、消費と国内経済は強い。貿易も黒字を継続している。移民増加や観光収入でも経済を支えている。その中で2Q・CPIは予想を下回った。利下げ観測とNZドルの下落でNZ株価は史上最高値を更新している。財政も黒字であり問題は低インフレだけである。
*南アランド「政権与党の勢力弱まる。資源高での南アランド堅調は続く」
 南アの総選挙は予想された通り、与党ANCの得票率が下落した。得票率は1994年の民主化以降で最低にとどまる見通し。過半数は維持するものの、経済低迷などへの不満から、アパルトヘイト政策の撤廃以降続くANC優位の体制が揺らいでいる。ANCの得票率は54%と、前回2011年の62%に比べ大きく支持を落としている。一方、最大野党の民主同盟(DA)は27%と、前回の24%を上回った。高失業率やズマ政権の汚職問題への不満を背景に黒人票の与党離れが広がった。
 低成長、高インフレ、高失業率、格下げ懸念と悪材料は多いが、既に織り込まれていること、今年はドル安ということもあり資源価格が堅調推移していることで南アランドが円に次いで強い。ただ米国利上げ観測が高まりドルが強含めば、そのシナリオが崩れる可能性も出てくる。
*トルコリラ「徐々に落ち着くも、今後ともテロ、クーデター再発の不安あり」
トルコリラ円は月足で4か月連続陰線、週足で5週連続陰線と弱い。ただ最悪期からは持ち直している。トルコのクーデター未遂事件から対ドル相場、長期金利、株価指数はクーデター前と最悪時の価格の半値まで戻している。ただ対円相場だけがクーデター後の安値近辺で推移している。円が強すぎるからであり、トルコだけの要因ではない。
 7月製造業PMIは47.6と、6月の47.4から小幅回復した。7月CPI(前年比)の +7.64%、予想の +8.16%を上回る +8.79%となり、次回政策金利の引き下げ観測を後退させた。 シムシェキ副首相はクーデター未遂事件の経済への影響について「下振れリスクが浮上している。2016年の成長率は4%程度が現実的だ」と語った。従来の政府見通しである4.5%から引き下げた。先行きの不透明感を嫌気した民間投資が停滞している上、GDPの1割を占める観光業では相次ぐテロで外国人旅行者数が事件前の今年上半期でも前年同期に比べ28%減少。トルコ国債の格下げ懸念については、健全な政府財政などを理由に「トルコ経済の基礎的条件は投資適格に値する」と格付け維持に自信を示した。格下げになったとしても「流出額はわずか数十億ドルだろう」と述べ、影響は限られるとの見方も示した。
 クーデターで政権は政府が多数のギュレン派とみられる人を粛清しているだけに、今後もテロ、クーデター再発の不安が残ることは経済にとって阻害要因である。
4.テクニカル「主要3通貨ペアテクニカル」
*ドル円=「7月29日-8月2日の下降ラインを上抜け小反発」
 日足は7月中旬以降、団子天井的となり下落。7月21日-22日、7月26日-27日の上昇ラインを下抜いた。英のEU離脱からの戻しの6月24日-7月8日の上昇ラインも下抜く。サポートはボリバン下限であったが、下限近くで7月29日-8月2日の下降ラインを上抜け小反発。上値抵抗は7月27日-29日、7月21日-27日の下降ライン、サポートは6月24日-8月2日の上昇ライン。5日線まだ下向き。
 週足は7月11日週-18日週の上昇ラインを下抜き、前回触れたように6月20日週-7月11日週の上昇ラインも下抜く。5月30日週-7月18日週の下降ラインが上値抵抗。
 月足。15年8月‐10月の上昇ラインを下抜いてから大きなリバウンドなし。2012年10月-2014年8月のアベノミクス上昇ラインも下抜けた。6月はボリバン下限を大きく下抜き今も尚ボリバン下限にて低迷。16年1月-6月の下降ラインが上値抵抗。サポートは11年10月-12年9月の上昇ラインで90円あたり。
 年足は2012年-13年の上昇ラインに沿い2015年まで4年連続陽線。13年-14年の上昇ラインは15年中は下抜かなかったが、以前触れたように16年は下抜いて始ま りそのままかい離し下落中。12年-13年の上昇ラインも下抜く。ただ年足からは近いサポートはない。
********************
(以下お盆休みにて休載させて頂きます)

FX湘南投資グループ代表
野村 雅道(のむら・まさみち)氏

1979年東京大学教養学部を卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行、82年ニューヨーク支店にて国際投資業務(主に中南米融資)、外貨資金業務に従事。85年プラザ合意時には本店為替資金部でチーフディーラーを務める。

詳しくはこちら

ブログカレンダー

 

カテゴリー一覧

  • レポート
  • レポート(PDF形式)


業界最狭水準スプレッド

おいしく!ザクザク!夏祭りキャンペーン

お友達ご紹介キャンペーン

口座開設キャッシュバックキャンペーン