想定通り、英のEU離脱は事務手続き危機、経済危機ではない
さて私は楽観主義かもしれないが、FTの株価の動きを見ても、報道されるほどの危機なのだろうかと考えている。英国がEUを離脱すると言っても
英国が、EUが鎖国するわけでもない。関税の恩恵が双方になくなることだが、それはEUと他国が結んでいる包括協定となる観測がある。現在カナダなどにも適用されている。英国国内では再びスコットランドで独立の国民投票の機運が高まっているが、それも同様に経済活動が縮小するわけではない。起きる混乱は政治的なもの、変更の手続きの煩雑さであろう。経済危機ではないので大きく売られた株などは買ってもいいのではないかと思っている。ポンドについても、同様に行き過ぎた分は戻すだろうが、ポンドは対ドルで7%の下落、ドル円は15%近く下落している。ポンドはそれほど行き過ぎていないし、ドル円とは逆方向のポンド安なので輸出企業にはメリットがある。ポンド安はインフレにつながるという懸念もあろうが
今、先進国でインフレが強くなるということは、喉から手が出るほど望んでいることだ。
また離脱にかかわる国民投票を再度行うという署名も始まっているが、どうあろうと政治、感情の問題で経済の問題ではない。私が懸念するのは
離脱派が願っていた移民の減少だ。離脱派に職が戻るということよりも移民の消費が消えることを恐れている。
日本円は断トツの強さである。主役の英ポンドは年間で対ドルで7.24%安。ドル円は年間で14.87%安。方向は逆である。日本が望む通貨安を英国は達成し株もたいして下落していない。他の通貨も対ドルでの動きは小さいので世界は為替に大きく問題があるとはしていない。IMFやイエレン議長はドル高懸念を有している。ここで日本がドル買い円売り介入を単発的には批判を浴びても出来ても持続的にはできないだろう。
円高株安デフレで可処分所得が減少しているのに、日銀が物価高を目指すのは経済を衰退っせるしかないだろう。再考を望みたい。
ECBはしばらく、これまで以上の慎重なかじ取りを迫られる。今週は消費者物価指数に注目したい。
*米ドル「IMFとイエレン議長がドル高懸念を共有」
一方トランプ氏は「英国人は自分たちの国の支配権を取り戻した。素晴らしいことだ。世界中で、人々が憤っている。国境や、自分の国を乗っ取った移民に対して憤っている」と発言した。
さて米国10年債利回りは年初の2.2%から1.5%へと低下している。利下げをした国のようでもある。FRB自ら成長見通しを引き下げている。米国民間エコノミスト協会も同様だ。これに欧州のこ混乱を考慮すれば利上げ観測はさらに後退するだろう。先週は失業保険申請者数は改善したが、新築住宅販売、耐久財受注、ミシガン大消費者信頼感指数は弱かった。まだまだ利上げを決断できない数字が続く。
またIMFは現在でもドルは10-20%過大評価されているとしている。イエレンFRB議長も「2014年の中盤以降、ドルは主要通貨に対し20%も上昇しており、輸出や企業収益、製造業の雇用に悪影響をもたらしてきた」とも指摘。英国民投票後にドルが一段高となれば、米経済を下押しするリスクがあると語った。
さて大統領選挙であるが ロイター/イプソスが実施した最新の世論調査によると、クリントン氏の支持率が46.6%と、トランプ氏を約13ポイント引き離し、再びリードを広げている。

FX湘南投資グループ代表
野村 雅道(のむら・まさみち)氏
1979年東京大学教養学部を卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行、82年ニューヨーク支店にて国際投資業務(主に中南米融資)、外貨資金業務に従事。85年プラザ合意時には本店為替資金部でチーフディーラーを務める。
最新の記事
カテゴリー一覧
- レポート
- レポート(PDF形式)
最新のコメント