野村雅道のID為替 (レポート)|FXブログ|外為どっとコム

FX=海外参加者の横顔」

「FX=海外参加者の横顔」

1.「参加者の横顔=ヘッジファンドその①」

 ヘッジファンドが相場を動かしているというが、本当にそうなのだろうか。私は一時名だたる殆どのヘッジファンドを取引先とする銀行でディーラーをしていたことがある。ただ彼らがいつもデイトレーダーのように頻繁に為替相場を動かしていることはない。多くは、株式、債券、土地などの長期保有にかかわる為替であり、頻繁には売買しない。デイトレーダーのようなことをする部門もあったが、リスク管理は厳しく、1%程度損をすれば損切っていたようなスタイルだ。金額は例えば円では5ヤードから10ヤード単位。1ヤードは10億円なので50億円から100億円。多いのは12.5ヤード。これはシカゴIMMの円の取引が1枚1250万円なので、その1000倍。

 多くのヘッジファンドがあるが、彼らも横並びで同じ方向で取引することが多かった。情報を交換しているのではなく、彼らと取引している銀行のカスタマーディーラーから同じ情報を得て取引しているようだった。10社もあれば、一気に100ヤード(1000億円)程度にもなり
油断していると、その玉を受けたディーラーが大損することもあった。但しそんなことは2、3ヶ月に一度くらい。それでも市場では誰が売っている買っているかわからなければヘッジファンドの仕業としていることが多かった。正体がわからぬ人にしてしまったほうが都合が良かったのだろう。

 また為替市場の取引量は貿易取引を大きく上回り、その主体がヘッジファンドであり、貿易取引で為替を考えても意味がないということをいう人も多い。しかし私は邦銀にも外銀にもいたがヘッジファンドが特に目立って取引をしていることはなかった。為替取引の出来高の計算方法に誤解があるからだ。何十兆ドルとも言われる為替取引の約7割はスワップ取引だ。また計上の仕方でも輸出が100本ドルを売ると100本で計算され、さらにそのカバーで銀行が100本売ると取引量は200本となる。ここでまず貿易の為替は市場の2分の1ということになってしまう。実際は貿易取引の100本だけなのだが、さらにそれをスワップを使い先物に延長すると、さらに100本増える。他の取引でも2重以上の計上があるので、ことさら市場に占める貿易為替が小さいわけでもない。その市場出来高と貿易為替のギャップをヘッジファンドの仕業とするのは、居もしない参加者を作り上げているようなものだ。

2.「参加者の横顔=ヘッジファンドその②」

 ヘッジファンドは個人の外貨証拠金取引のように銀行に証拠金を預けて為替取引を行っている。ただそのレバレッジは極めて低い。10倍に達することはなく、4,5倍が限度である。また1998年のLTCM(ロングタームキャピタルマーケッツ)の破綻以降はさらにレバレッジが低く定められ、ファンドが銀行で取引するための審査も厳しくなっていると言う。銀行も証拠金を預かっているので、損失を被るリスクはないが、ファンドが破綻すれば、銀行の名声にも影響するので「リュピュテーションリスク=Reputation risk」といって取引に慎重となっている。

 その与えられた信用の中でファンド自ら厳しいリスク管理が行われている。例えば
①投資金額は資金の半分で残りはトレジャリービル(米国短期国債)で運用しリザーブする
②一つの市場に投資する金額は資金の10%から15%にする
③特定の市場グループに深入りすることは避ける
(先物市場のテクニカル分析=きんざい参照)
などの規律を課している。

我々も彼らのマネーマネージメントは参考にしたいものだ。

3.「参加者の横顔=ヘッジファンドその③」

 ヘッジファンドその①、②で述べたように、為替市場での短期的投機は報道されているほど、のべつまくなしに取引をしているわけでもないし、また短期為替取引でのリスク管理も厳しく行われている。ヘッジファンドが為替そのものを投機するよりも、世界中の金利、株、商品先物、不動産などに中期から長期に投資する付随取引として為替取引が行われているのが中心なのだろう。

 ヘッジファンドリサーチ社では投資戦略タイプ別に以下のように分類しているようだ。
マクロ、株式投資、エマージング、コンバティブルアビトラージ、債券総合投資、イベントドリブン、マーケットタイミング、ショート、バリュー投資、破産証券投資、ハイイールド債券投資、リスクアビトラージ、ファンド オブ ファンドなどである。為替だけを短期に取引している分類はない。ヘッジファンドとは高い借入金比率で運用額を実際の預かり金の何倍にも拡大して運用する投資家、投機家と言われている。ただレバレッジが大きくて7倍程度、4倍以下のところが殆どだろう。

4.「参加者の横顔(海外編)=銀行」

日本の銀行と外国の銀行では、為替ディーリングのスタイルが違うようだ。リスクの管理については、日本の銀行は20年ほど前は損切りオーダーも置かずに大きなポジションを長期に保有している銀行が多かったように思う。しかし、次第に邦銀も外国の銀行同様にリスク管理が厳しくなってきており、ポジションの管理、収益の管理、利食い損切のオーダーをこまめに出すことなどが徹底してきている。
ただ外銀と比べれば、保有ポジションやロスリミットはまだかなり大きいように思う。それは外銀はより細かい縦割りの事業部制を敷いており、ディーリングルーム内においてもポジションを持つディーラーと顧客営業のカスタマーディーラーで収益をはっきり分けており、個々の責任を明確にしているからだろう。邦銀はまだどんぶり勘定のようなところがあり、為替部門全体であるいは市場部門全体で儲ければ良いという感覚がある。

それが必ずしも邦銀のデメリットということではなく、邦銀はそれを利用して臨機応変に大胆なポジションを取ったり、また顧客へのプライシングにおいても長期的な展望のもとに対応している。外国銀行は、やはり個人のディーリングの集積である。邦銀は銀行全体のメリットを考えながら取引することも可能だ。それはディーリングスタイルにも表れ、外銀は小刻みに収益を上げようとしたり、顧客のつなぎに徹するところも多い。米銀よりも欧州系銀行はさらに保守的なスタイルを取る。

収益目標は邦銀がより大きく、外国銀行は小さいが、ディーラーへの報酬は逆で邦銀がより小さい。小さいというより成功報酬的なものは基本的にないところも多い。銀行業務の一貫でディーラーをしているのが邦銀だが、外銀は一匹狼的でより高い報酬を求めて銀行を渡り歩くものも多い。小さい収益で大きな報酬の外銀は、銀行全体のメリット・デメリットを考えながら長期に取引する邦銀のような大胆な動きはとらず、手堅い取引をしがちである。時々外銀が大きく動かしていると報道されることがあるが、それは背後にいるヘッジファンドや国際投資家の注文によるものでディーラー個人のポジションではない。
 

5.「参加者の横顔(海外編)=アジアの機関投資家=シンガポール」

 最近は中国が1兆ドルの上る外貨準備の運用機関を設立することで話題となった。これが本格的に動き出せば為替市場に大きな影響を与える。これまでも中国よりも小さな規模でのアジアの国家的機関投資も一旦動き出すときは1億ドル超の金額で市場に参入するのでインパクトは大きかった。

 シンガポールでは政府投資公社(GIC)やテマセック(TEMASEK)が有名だ。GICは海外投資が中心で TEMASEKは国内のインフラ産業中心に投資しているようだ。GICなどは国家機関である以上、資産運用によるリターンの極大化を狙うとと同時に自国通貨の為替レート保持という重大な使命を負っている。GICは1981年に設立され外貨準備の運用を行ってきた。近隣諸国が通貨切り下げに追いこまれば保有証券を売って外貨売りの資金を準備する。ただ国家機関ということでその投資は長期的だ。


国際的な長期投資で株、債券、不動産、商品を取引し日本へも投資している。それに絡む為替取引は大きい。運用資産は1000億ドル(12兆円)を超えるようだ。テマセック(TEMSEK)は1974年に設立され総資産は800億ドルでGICよりは小さい。国内の水道、ガス、航空、電力などの企業に投資するが最近はアジアやOECD諸国への投資も拡大している。為替市場ではやはり国際的投資を中心に行うGICが有名だ。東京市場の引けから欧州市場参入時に出てくることも多いがその時は市場が薄いので大きく動く。

6.「参加者の横顔(海外編)=アジアの機関投資家=香港」

 香港は香港政庁が常に金融市場や資本市場に対して規制緩和をして内外の投資家を引きつけ中国へ変換された後も一国二制度でその状況は変わらず中国は香港を金融窓口として重視している。法人と個人の税率も殆ど変わらず、法人税は上限が18.5%である。シンガポールとともに英語が使えることもあり、海外勢のアジアのファイナンシャルセンターとしての地位も築いている。レッセフェール、タックスヘブンとしても香港の利点が活用されている。

 香港の特徴は公的機関の投資家が少なく民間投資家が中心だ。植民地であったために、祖国意識がなく国際投資を求める風土があった。

 銀行やマーチャントバンクが多い。代表的なものはHSBC(香港上海グループ)やスタンダードチャータード銀行、中国銀行香港支店。これらは発券機能も併せ持つ。投資運用に重きを置くマーチャントバンクにはジャーディンフレミングやクライオートベンソン、シュローダーなどがある。投資家としてはYKパオ氏率いるWW(ワールドワイド)グループが有名だ。シンガポールのGICやテマセックほどの大きな金額で取引することは少ないがコンスタントに為替市場に登場してくる。
また香港のハンセン指数やH株には中国企業が上場され株投資とともにHKドル買いも強くなっている。

個人の為替取引は日本の個人向け外為証拠金取引が開始される前から活発である。アジア市場は東京、シンガポール、香港の三大市場が中心だがこれらの一つでも休場の場合はアクティビティーが落ちてしまい市場が閑散となることも多い(参考「国際機関投資家」保田圭司、日経)

7.「参加者の横顔(海外編)=マレーシアなど」

 1990年代はアジアの為替市場ではマレーシア中銀が派手に売買を繰り返した。シンガポールのGICやテマセックなどの長期投資とは異なり大口で短期売買を繰り返した。一度に5億ドルから10億ドルの売買を繰り返したたのでないだろうか。市場からは「ネガラ=NEGARA=中銀が出た」と恐れられた。海外から銀行のトレーダーを雇い短期売買をしたが程なく消え去ってしまった。理由は明確ではないが、やはり収益が上がらなかったこと、中銀として短期売買の是非、またアジア通貨危機が起こったことも上げられる。アジア通貨危機でマハティール首相は米国ヘッジファンドを批判し、固定相場に変更したが、マレーシア自身も短期的な投機を行っていたのであった。日本、中国のみならずアジア中銀各国は膨大な外貨準備を抱え込む。その運用として一度に大きな金額が動いて市場に影響を及ぼすが、投資期間は長期となっている。マレーシアのように国家が短期的投機を行ったケースは極めて珍しいものであった。

 アジア諸国は日本から円借款を受けている国が多い。1990年代は円高が進行した時代であったので、その返済資金が膨れ上がって負担が大きくなったこともあり他の外貨準備の運用で利益を出そうとしたかもしれない。韓国、台湾、インドネシアなどの中銀も投機的ではないが、そのような実需による為替取引を行っている。


8.「参加者の横顔(海外編)=中東①」

 余談から入るが中東との為替取引は独特なものがあった。中東の銀行からドル円のプライスを求められたとき例えば120.50-55と出すと
「AT55、Can I SELL 30MIO DLR?」ときたことがあった。普通55というと相手が買うわけだが、55で売れないかと取引ではなく交渉に入ってきたことがあった。取引の常識やマナーから外れているがそれも一つの中東らしさ、ゆったりとした中東の時間軸かと思った。

中東の機関投資家の資金はオイルマネーと呼ばれているものだ。オイルマネーが急激に増大してきたのは1979年の第二次石油危機以降であった。石油輸出による経常黒字を海外投資でリサイクルしていった。

 中東市場は金曜日が休日だ。1990年の父ブッシュによる第一次湾岸戦争が勃発する前までは、欧米の銀行のみならず日本の銀行でもバーレーン市場で為替取引を行っていた。バーレーン市場はオフショアーなので世界の銀行が支店を出し、資金貸付業務を行い、為替も付随的に行われるようになった。プラザ合意以降はかなり活発になり、土日のバーレーン市場でも値動きがあったし、私も日曜日に日本の証券会社の以来を受けてドル円を5千万ドル売ったことがあった。現在も同様な貸付、資金、為替取引が行われているが、80年代とくらべれば、中東情勢の混迷を受けて商いは減少している。


9.「参加者の横顔(海外編)=中東②」

 中東の投資家の運用額の規模は1兆ドルを超えている言われている。これはほぼオランダの運用額と並んいる。代表的な投資家を取上げていく。先ずはサウジアラビア通貨庁SAMAである。中近東第一の投資家、サウンジアラビアの中央銀行であるが、それよりも資産運用の巨額さにおいて有名だ。サウジアラビアは金融立国と産業立国の二兎を追う国策をとっており、金融に比重を置くクウェートやバハレーンとの違いがある。SAMAの資金はマーチャントバンク、証券会社、投資顧問会社に運用を委託している。関係者はいかなる場合にもその内容を明らかにすることは許されない。原油価格によって大きく資産が増減する。ドル資産と非ドル資産にどのように振り向けるかがポイントである。中東の資金はスイスのジュネーブの金融機関に多く委託されていると言われ、東京時間の午後にジュネーブ筋から為替の大きな金額のプライスを聞かれるとその後の反応も大きいので緊張感が走る。

 サウジアラビアと並ぶオイルマネー大国のクウェートでは投資業務をクウェート投資庁(KIA)に一元化している。1980年代にはロンドンに事務所を置き日本株の大量買付けを行ったと言われている。直接投資からポートフォリオ投資、証券投資から不動産投資まで行っている。クウェートだけではなく中東は運用資金量が運用スタッフの人員、能力を超える勢いで増加しているのですべての運用が自主運用ではなく世界的に著名な運用機関にアドバイスを受けている。

他にはアブダビ投資庁(ADIA)、ガルフ湾岸6カ国(バハレーン、クウェート、オマーン、カタール、サイジアラビア、アラブ首長国連邦)とイラクの共同出資で設立されたガルフインターナショナルバンク(GIB)なども中東の資産運用機関として有名だ。投資対象は預金、公的債券、民間債、不動産、株式などで付随業務としての為替取引も巨額となり市場に与える影響は大きい。


10 「参加者の横顔(海外編)=スイス」

スイスは人口や面積から見ると小国だ。ただその資本輸出、為替取引、産業構造から見ると金融大国と呼ばざるを得ない。
また顧客の秘密を守る法律があり、永久中立国であるために資産の安全を考える顧客には最高の条件を備えている国だ。

 銀行はかつて三大銀行と言われたが、SBC(スイスバンク)とUBS(ユニオンバンク)が合併したので現在はUBSとクレディスイスの二大銀行となっている。スイスの銀行は古くから銀行と証券の垣根の無いユニバーサルバンクであり総合力の強さを発揮していた。

 スイスの市場は大きくない。海外からの資本が流入しすぎてネガティブインタレストと称する逆金利が課されたことがあるくらい低金利だ。日本は国民の高い貯蓄率で低金利だが、スイスは海外からの潤沢な資金流入で低金利となっている。ただ国内には十分な資金運用市場が無いため、その資金は再び海外へ流出する。

プライベートバンクのメッカと言われるジュネーブにはピクテ、チューリッヒにはジュリアスベアーなどの投資家がいる。これらは為替市場の主要参加者だ。

外国勢も100年以上の営業実績のあるフランス勢をはじめ、米系、英系に加え邦銀、証券会社も進出している。第一次石油危機の際は豊富なオイルマネーを背景にアラブ系金融機関がジュネーブに進出した。東京市場の午後にジュネーブから為替のプライスを尋ねられると
緊張感が走ったものであった。

 金融センターもチューリッヒ、ジュネーブのみならず、バーゼル、ルガノ、ローザンヌなどにも拡大している。
ちなみにスイスフランのコードであるCHFはConfoederatio Helvetica Francの略で スイス連邦フランを意味する。HELVETIAはスイスを意味する。
 
 

FX湘南投資グループ代表
野村 雅道(のむら・まさみち)氏

1979年東京大学教養学部を卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行、82年ニューヨーク支店にて国際投資業務(主に中南米融資)、外貨資金業務に従事。85年プラザ合意時には本店為替資金部でチーフディーラーを務める。

詳しくはこちら

ブログカレンダー

 

カテゴリー一覧

  • レポート
  • レポート(PDF形式)


業界最狭水準スプレッド

秋

お友達ご紹介キャンペーン

口座開設キャッシュバックキャンペーン