東京セミナー金融危機の終焉と世界経済復活のメイン・シナリオ

日本は穏やかなデフレが継続。金融危機からの“出口戦略”が遅れ、 他国通貨との金利差が拡大し、年末には1ドル=109円の円安になるだろう。

第1部 日本経済 − 2010年日本の投資家への8つの質問 −

ギリシャの財政赤字問題が表面化したのに伴いユーロ売り圧力が強まる一方、ドルは利上げ期待から買われ、4月上旬には1ドル=94円台まで円安が進んだ。アメリカをはじめ、各国が金融危機からの脱却を図る“出口戦略”を視野に入れている今、今年度の為替動向について語ってもらった。

ロバート・アラン・フェルドマン
本日、「為替はどうなのるのか?」ということをテーマにお話します。まず初めに私の結論から言うと、「今年は円安の年」になるだろう。年末にかけて1ドル=109円と、穏やかながら相当の円安になると考えており、その理由は3つある。1つ目は世界経済と他国の金利で、2つ目は国内経済と日銀の政策。外国経済は着実に回復していて、今後金利は上がっていくが、 日本経済は相変わらず弱いので利上げする状況ではない。そのため、金利差が開いて円安になりやすい。そして3つ目の理由が、ソブリンリスク(各国の財政赤字リスク)。これも穏やかな円安の要因となるだろう。

日本が直面している世界の経済環境は?

モルガン・スタンレー証券では、2010年の世界の経済成長を4.4%と予測しており、先進国(G10)が2.2%なのに対し、新興諸国は7.1%と先進国と新興国の格差が大きくなっている。それだけではない。アメリカは3.2%だが、欧州は0.9%と、先進国同士の格差も大きい。同じく、新興国同士の格差も大きく、中国の成長率は11%と予測。ご存知かもしれないが、北京には地下鉄が3本しかない。中国の鉄道だけを見ても、これから社会インフラを相当作らなければならないことがわかる。つまり、今の中国には成長の持続性もあるのだ。このように各国の経済成長に格差があるので、それに沿って利上げを行う国もあれば、さらなる金融緩和を実施する国もあるなど、金融政策の格差が今年、出てくるだろう。

極端なインフレは起きないが、原油も穀物も上昇傾向に

物価上昇率について、世界全体では3.3%、米国は2%台、欧州は1%台、日本は相変わらずのデフレで−0.9%と予測している。新興国も、局地的には大きな動きがあるかもしれないが、世界全体のトレンドを変えるような問題にはならないため、大きなインフレはないと予測している。

さて、エネルギー及び農産物の価格も気になるところ。原油価格は1バレル=85ドルと1年半ぶりの高値をつけているが、今年の年末には1バレル=95ドルまで上がると予測している。世界景気の回復に伴いエネルギー需要は増える一方、供給は大きく増えるわけではないのと、中近東情勢が決して安定というわけではないからだ。また、トウモロコシや大豆など農作物の価格も上昇が続くだろう。新興国が経済的に豊かになり、これまで以上に肉を食べる人は増えている。そこで、より多くの肉を作るために動物の飼料としての穀物がますます必要になり、穀物価格の上昇が続くだろう。
このように資源価格は相変わらず上昇傾向で、実質成長は回復し、極端なインフレやデフレはない。これが、日本が直面している世界経済の環境なのだ。ちなみに、日本の経済成長率は1.8%と決して悪くはない数字を予想しているが、外需が1.4%を占めているだけで、それほど強くはない。しかも、企業の生産は一段と海外にシフトしているし、国内の労働市場も不安定な状況なので、あまり賃金が上がる環境ではない。

金利差拡大で円安傾向に

ロバート・アラン・フェルドマン

アメリカのFRBは政策金利を今年7-9月期に0.5%へ、年末にかけて1.5%、来年1-3月期に2%に利上げをするだろうと私どもは予想している。この利上げは「引き締め」と思われるかもしれないが、アメリカの消費者物価の上昇率が2%台なので、2%台への利上げは、決して引き締めではない。
いずれにしても、日米間の金利差が拡大するので、これは円安要因となる。一方で世界経済が回復していくと、日本の経常収支が改善し黒字になりやすい。これは円高要因となる。しかし、金利格差のほうが影響が大きいため、結果として円安をもたらすだろうと考えている。


政府と日銀の政策に注視を

財政政策による景気対策の効果が疑問視され、必然的に金融政策に注目が集まっている。海外諸国が今後利上げするなか、政府や日銀はどんな政策をとるのだろうか。何ができるのだろうか。
例えば「インフレターゲット」についての法律は何もないので、財務大臣が「これはインフレターゲットです」といえば、それだけでインフレターゲットになってしまう。難しいプロセスでもなんでもないのだ。また、政府と日銀がアコード(政策協定・合意)を結ぶなど、より強いインフレターゲット導入のやり方もある。日銀と政府がどんな発言をするかに注目して、投資のタイミングを判断するといいだろう。

日本の財政赤字は大丈夫か?

ロバート・アラン・フェルドマン

昨今、ソブリンリスクが世界中で大きなテーマとなっている。よく「日本が経常黒字である限り、 長期金利は上がらない」と言われるが、それだけではない。ポートフォリオバランスも重要なのだ。日本が経常黒字だと円高要因になるが、それ以上に国内投資家が海外に投資したいと思えば、「円安・長期金利上昇」となる。つまり、自分が貯蓄している資金のうち、どれくらいを国内に投資し、どれくらいを海外に投資するかも、為替や金利に影響を与えるのだ。

日本の財政事情が良くないのは事実なのですが、ほかの国に比べると必ずしも悪いとは言い切れない。早くやったほうがいいのだが、まだ余裕が若干あるともいえる。では、民主党の財政に関する戦略はというと、「歳出削減をするが、どこかで増税せざるをえない」というもの。これは、かつての橋本政権の戦略と同じ。歳出削減も増税も緊縮財政として必要だが、それ だけでは不十分で、同時に別の方法で成長を刺激することも必要。これが橋本政権から学んだことである。さらに、雇用も創出するような戦略こそが、本物の経済政策と言えるのだ。

今年度は円安傾向が続く

繰り返しになるが、日本は穏やかなデフレが継続しているため、金融危機からの“出口戦略”が他国より遅れ、他国通貨との金利差が拡大し、1ドル=109年までの円安になると予想している。また、ユーロは安くなるものの今の水準からそれほど大きく動くとは思っておらず、どちらかといえばユーロ安よりも円安のほうが大きいので、「円安ユーロ高」の傾向だと考えている。もっと面白いのは韓国ウォンと台湾ドル。韓国ウォンの相場は1円=12.5〜13ウォンくらいだが、韓国の景気は非常によく金利を上げないといけない状況。今年の年末には1円=9.5ウォンと、かなりの(円安)ウォン高を予測している。同じく、台湾ドルも(円安)台湾ドル高となるだろう。その意味では今年度、アジアの通貨は面白いかもしれない。


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