東京セミナー今日からはじめる投資ライフ ー第1部 世界経済再生の条件
「春までは1ドル=85円の円高が続く。しかし、来年の6月頃に米ドルの利上げが行われれば、年後半は1ドル=100円の円安に向かうだろう。」
第1部 世界経済再生の条件
昨年のリーマンショック以降、世界経済が不況に陥り、企業動向は下げ止まりから若干回復の傾向がみられるが生活は不透明感が続く。政治ではアメリカではオバマ政権発足、日本では自民党から民主党政権へ。進むべき投資の新たなステージはどういったものになるのか、外貨投資を中心に考えていく。
世界経済は「W」の文字の形で動く。キーワードは「出口」
私は以前から世界経済は「W」の字で動くと申し上げていた。2008年の秋にリーマンショックが起こり、GDPと株価が大きく落ちたが、去年の最初か前半に止まっている。これには2つの要因がある。1つは「チャイナファクター」、中国である。中国は去年、9%近い成長を遂げ、特に第2四半期の成長率は15%だった。その恩恵を受け、アジアと東南アジアの地域は活力を得てV字型の急激な回復を経験し、日本も第2四半期、第3四半期におよそ2%ずつ成長している。もう1つは「財政拡大」。世界的な規模で金融政策がとられた。アメリカはGDPの約4%、中国もGDPの4%から5%の金融政策をとり、日本も15兆円の補正予算を行った。この2点により日本経済がマイナス成長からプラスに持ち上がり、世界でも同様なことが起きている。
しかし、財政拡大はいつまでも続くことはない。キーワードは「出口」。ゆるやかな回復は続かず、また腰折れがあり、その先にようやく回復があり、「W」字型になるのではと考えられる。落ち込みの2つの兆候を考えておかなければならない。去年の秋のドバイショックとアメリカの住宅貸し付けの貸し倒れがまた増え始めている点だ。大幅に下がることは避けられると思うが、アメリカの動向は引き続きみていかなければならない。オーストラリアでは経済が良くなりはじめ、完全に出口へ向かい、過熱をおさえるために金利を3回引き上げている。このように、国との間で国際的な格差が出てくる年になる。2010年は世界全体として「ゆるやかな回復の年」。各国個別に考えていく必要がある。
リーマンショック以降は本当に100年に一度の経済危機なのか?
ハーバード大学の経済学者バローは、1870年以降140年間の主要36カ国のGDPと個人消費の統計をすべて作り直し、1人あたりのGDPが10%以上の低下を「経済危機」と名付けた。アメリカは5回経験していて、大恐慌の時は1人あたりのGDPは29%低下し、第二次世界大戦の時は18%低下した。今回、アメリカの1人あたりのGDPは、去年マイナス成長でたぶん4〜5%。この先はまだ不明だが一桁であろう。10%以上低下する経済危機には入らず、GDP統計からみる限り、軽微だと言える。日本では、第二次世界大戦時に50%低下したが、石油ショックの時も、今回も、10%までは落ちていない。
今回の経済の混乱には、これまでと違ったところが2点ある。第1に、世界で同時にバブルが起こり、同時に破裂したこと。第2に、金融で非常に大きな問題が起こった「シャドーバンキング」。銀行は規制緩和ではなく、むしろ強化していた。相対的に証券会社や保険会社は規制が弱くなっている。資金はそちらへ流れ、その崩壊が銀行に大きな影響を与えた。新しい知恵として「SIF」がある。特に影響力のある金融機関という意味で、銀行以外の大規模な証券会社や保険会社に金融行政が特別に監視し、新しく規制を設けようという動きが出てきている。
日本では今年の後半から終盤にかけて大きな混乱が起きる可能性
日本経済は、純粋なストーリーとして見る限り「ゆるやかな回復の過程にある」というのは、シナリオとしては間違っていない。あえて言えば、私は「今年の後半から終盤に掛けて、非常に大きな混乱が起きる可能性がある」と思う。今年の7月に参議院選挙があるので、現在の政権がそれまでに景気を腰折れさせるようなことはない。予測はできないが民主党が勝つ可能性は高い。問題はその後、国政選挙は3年間ないので、その間財政赤字の問題や、3年の間にできることを実行するという考えにより、政策の転換があり得るだろう。
もう一つの視点が海外要因である。チャイナファクターによって世界や日本も支えられているが、上海万博が終了する9月に中国経済はどうなるのか。引き続き財政拡大は続くだろうが、中期的な成長率に問題はないのか、不良債権問題が顕在化するのではないかということが、秋から冬にかけて出てくると思う。
国内と海外の2つの要因で、大きな波乱要因が今年後半から終盤にかけて出てくると考える必要がある。従って、比較的平静を保てる今年の前半に、企業は借金を返済し手元に流動性を確保し、個人はポートフォリオを整えて次へ備える、という姿勢が重要になる。
民主党の政策の問題点と評価できる点は何か?
昨年閣議決定された予算は赤字額を44兆円にとどめた。新聞では「赤字額が多い」と言われているが、私は全く逆の見解で、「経済を過剰に冷やす可能性がある」と思う。今年度の決算はまだだが、たぶん53兆円の赤字になるだろう。わずかなプラス成長の時に、9兆円というGDP比1.8%も財政を押し下げたらマイナス成長になってしまう。補正予算を組むことを積み重ねると財政赤字だけが拡大していく。これは「失われた90年代」のパターンと同じである。つまり、民主党はマクロ経済管理をやっていない。これが海外からみた時の日本の最大の不安要因である。
成長戦略では2%成長を10年間目指すと書かれている。この総論は明らかに低すぎて間違っている。今、GDPの7%である35兆円の需給ギャップがあり、供給量の方が多い。10年間に年2%ということは、10年後には20%の増加、そのうち7%は放っておいても増える。成長戦略の結果の増加は13%分で、年率1.3%である。これは失われた10年の成長率と同じである。私は、低成長戦略と呼ぶ方がいいのではと思う。
唯一、評価できるのは実質成長率2%に対して名目成長率を3%にする目標を掲げたことである。GDPデフレーターという物価上昇率が1%であることを意味する。日本は1994年にデフレになった。デフレだと、実質金利が高く、円高になり、輸出が打撃を受け需給ギャップが縮まらず、また、デフレになる。日本は悪循環の中にいる。私は、今年の前半は実質金利を大幅に変えるような、為替相場に影響を与える状況は起こりにくいと思う。なぜならば需給ギャップのためにデフレなのであって、日銀だけの責任だけではない、という言い方をできるからだ。そして、政府が財政再建に動き始めた後半になって、日銀が動き始める可能性がある。
社会主義的な政策を変える流れが日本のチャンス
外国の政府が当然のようにやっている政策を日本政府がとれば、日本経済はまだ自力があるから、比較的良い結果が出すことができる。国が経済に介入する社会主義的な政策に対して、日本は海外からみた場合に大きな不安がある。この数ヶ月の間の3大社会主義的な政策は次のものである。第1に「ゆうちょ銀行」の株式は当面国が持ち、銀行法の適用除外にする郵政の実質国有化、財政投融資の復活と同様ともとれる「ゆうちょ銀行」の中小企業や地域金融に徹する融資。第2に、企業に雇用形態を限定させる派遣法の改悪。第3に国費を投入しなければならない日本航空の問題である。
国内が社会主義のようになっていては、中国やインドの活力を取り込むことはできないし、リスクである。今、日本は50兆円の赤字で、これを消費税で埋めるには消費税率を25%にしなければならない。さらに、日本航空に金額を使い、郵政がもし赤字になれば補填することになる。このような状況の中で、政策の体系を根本的に変える流れは必ず起きる。1981年に就任したフランスのミッテラン大統領は当初、フランス型社会主義の建設を行ったが、その結果、経済は財政赤字と経常収支の赤字が出てインフレになり、通貨が危うくなった。そこで、自由主義、市場主義に軸足を移し、政策の大転換を行った。それは社会主義、社会保障の重視からグローバリゼーションに軸足を移したということである。結果的にミッテランはこの大改革のおかげで、14年の長期政権を樹立した。私は鳩山さんに日本のミッテランになってもらいたい。チャンスはあると思う。
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