TOKYO GAITAME SHOW 2009〜世界経済復活の指針〜|第1部 日本経済−品種改良の時代−
第1部 日本経済−品種改良の時代−ロバート・アラン・フェルドマン氏
5月、日銀が景気判断を上方修正するなど、最悪期を脱する指標も出始めた一方、完全失業者数は過去最大の増加率となるなど、まだ先行き不透明な状況が続く。そんな情勢の中、世界屈指のエコノミストであるフェルドマン氏が、底打ちの兆しを見せる日本経済を分析し、今後の為替動向について語った。
第1部 日本経済 - 品種改良の時代 -
最近の経済指標を見ていると、とても怖いことがたくさんある。これから世界はどのような方向に行くのか、その中で、どう為替を考えるかをお話ししたい。
昨今、「日本はL字型回復をする」などと言われるが、私はW字型の回復をすると考えている。その回復実現のためには、各国の「経済政策」によって金利や住宅価格がどうなっているのか、そして「金融改革」がどのような状況になっているかが大きな問題である。このような最近の世界経済の動きを背景にして、為替はどう動いていくのだろうか。
ベースマネーがより増加するドルが安く、「円高・ドル安」に
先日、ロンドンにいる非常に優秀な投資家と話をした。この方は、「絶対に円安になる」と言っており、それは、「日本経済がよくないから、日銀はお金を刷る(マネーを市場に供給する)。だから、円安になる」というのである。
しかし、本当にそうだろうか。というのは、日本よりもアメリカのほうが今後、多くのお金を刷っていくだろう。実際、アメリカは昨年9月から、大規模な量的緩和を行っている。さらに今年の秋にかけて、ベースマネーがますます増加するだろう。
つまり、日本よりもアメリカのほうがもっと多く刷るのだから、今後の為替は「円高・ドル安」とい
うトレンドになると予想される。
しかし、もちろんこれだけで為替は決まらない。例えば、サブプライム問題の根本的問題であるアメリカの住宅価格などがある。日本の住宅バブルでは、1990年に住宅価格のピークを迎え、1992年には30%下落した。一方、アメリカの住宅価格は2006年にピークを迎え、2年で25%下落。このまま下がっていけば、2010年半ばにはアメリカの住宅価格は底打ちするだろうと予想できる。
しかしこれは、単なるチャート分析に過ぎない。実際には在庫調整などを考慮した、詳細な経済分析が必要だ。いずれにしても、住宅価格の底打ちはしばらく先だろう。
アメリカが日本のバブル崩壊から学んだこと
アメリカは90年代の日本から何を学んだのだろうか?日本ではバブル崩壊以降、「失われた10年」などと批判されるが、私は、“時間がかかった成功例”だと思っている。バブル崩壊の後処理は、次の5つの要因がすべて揃って初めて、成功するのである。
1つは「経済戦略」。税金のムダ遣いや、うまく活かされていない優秀な人材を適切に使うなど、「資源のムダ遣いの改革」を行い、経済が成長するように資源を使っていくことが必要だ。
2つ目は、「セーフティネット」。金融緩和や財政支出で経済を下支えすることや、預金保険制度の整備などの安心感が必要となる。
3つ目は、「資本注入」。企業経営陣の刷新、賃金抑制など、資本注入の具体的条件を整備するのが成功のためには必要だろう。
4つ目は「国民の支持」。オバマ政権になり、国民の支持は圧倒的に上がっている。
最後が「厳格な資産査定」。金融当局が厳格に資産を査定していないと、「まだ損はあるだろう」と疑われてしまう。先日、アメリカでは「ストレステスト」が行われたことで、金融機関ごとに必要な資本額が明らかにされ、区別がつくようになった。
つまり、今のアメリカには、必要な5つの要素がすでに揃っているのだ。あとは実行するのみ、と言えるだろう。
日本経済復活のカギは、「生産性の向上」
5月、日銀は国内の現状判断について「大幅に悪化」から「悪化を続けているが、輸出や生産は下げ止まりつつある」と上方修正した。先ほどの5つの要素も揃っているうえ、15兆円の追加経済対策の効果もあり、徐々に経済が息を吹き返しつつある。
では、日本経済の生産性が向上するための政策はあるのだろうか。
そもそも日本の雇用者数は減少しているのだから、それ以上に生産性が向上しないと、GDPの成長は見込めない。これは景気動向によるものではなく、日本が抱える構造的な問題だ。このようにマイナス成長すらありうる状況で日本経済が弱くなっていくと、長期的には「円安」に進むだろう。長期的な為替の動向を決定する要因に、各国の「生産性の伸び率の格差」があるからである。
生産性が向上するかどうかには、政策が大きく関わってくる。今年、総選挙が行われるが、現状では民主党が優勢と言われている。しかし、政策の方向性がまだハッキリしていない。この問題がハッキリと見えてこないと、為替の方向も見えてこない。政策の方向性が決まったとき、為替は大きな動きをすることになるだろう。経済指標やチャートだけでなく、政治や政策にも注視していくことが、これから特に重要となっていくにいない。
