主要為替相場の方向性と注目点
スタグフレーションと中銀の信認
昨年8月以降金融危機が起きていた訳ですけれども、金融危機に関してはほぼ今年の3月までに最悪期を脱したという見方が広がっています。一方、アメリカの経済についてもリセッション―GDP(国内総生産)が2四半期連続で前年比マイナスになること―になるのではないかという懸念がまさに今年の第1四半期ぐらいまであったのですが、その懸念もほぼ回避し、金融市場全体で不安感がかなり後退した状況になっています。
今年の3月、4月くらいまではこの金融危機とリセッション懸念が為替市場のメインテーマだったわけですが、景気は大丈夫、金融危機も大丈夫ということなので、ではどこに焦点が移ったかというと、継続的に上昇しているインフレ(物価上昇圧力)に焦点が移っています。
各国の中央銀行は金利を上げ下げするときに、景気はどうか、インフレはどうかという、単純に言えばこの2つのバランスを見て政策決定をしていますが、これまでは景気のダウンサイド・リスクに注目して、FED(米連邦準備制度、米国の中央銀行)が利下げを矢継ぎ早に打ち出してきたということだったのですが、今度は景気が大丈夫ということで、今度はインフレにどう対応していくかという状況になってきています。日銀はまだその状況には至っていませんが、世界的に中央銀行はそういった方向に移ってきていると言えます。ただ、景気はリセッションには陥らないものの、景気の減速自体はまだ継続しているとみています。国によって程度の差こそあれ、景気の減速(スタグネーション、景気の停滞)とインフレの高進(インフレーション)が同時に進行する、いわゆるスタグフレーションが進行している状況だろうと考えています。(中略)
では、こういう状況でどのように通貨を見ていけばいいかというと、インフレは上がっているけれども、景気はそこそこしっかりしている、言い換えれば、「景気のことは余り心配しないでインフレを抑制するために金利を引き上げることができる国の通貨」というのは、買ってもいいのではないかと思います。その典型例としてはノルウェーやオーストラリアが挙げられると思います。
他方で、景気が急速に減速していて、本来であれば利下げをしたいけれども、インフレが上昇してしまって利下げができない、むしろ利上げをしなければいけないという国(イギリス、南アもその傾向)の通貨には、慎重に手を出さなければいけないと考えています。

山本 雅文(やまもと・まさふみ)氏
国際基督教大学卒業後、日本銀行入行。10年間にわたり、日本・欧州で多くの重要な外国為替及び経済調査の役職に従事する。その後、日興シティグループで通貨エコノミストとして2年間勤務。2008年初めに、ヘッドオブ・FXストラテジーとしてRBS東京支店に入行。G11諸国・一部のエマージング市場の通貨に対する日本円の方向変動性を予測する外国為替リサーチ及び戦略レポートの発行を担当する。英語、フランス語、ドイツ語に堪能で、市場フロー、社会経済的要因、政治的要因のクロスプロダクト分析を重視した為替分析を行う。
- ●当社提供のレポート類について
- 本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスにより利用者の皆様に生じたいかなる損害についても、外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承願います。







