エコノミストは経済情報をどう分析しているか

エコノミストは経済情報をどう分析しているか

経済を分析する上で一番大切なこと

ドル/円と日経平均株価は過去に例を見ないほど連動しています。経済の教科書のようなものには、日経平均株価が上がれば円高になる、なぜかというと日経平均株価を外国人が買うとドルを売って円を買う、だから日経平均株価が上昇すれば円高になるというふうに書いてあるのですが、実際はそうなっていない。今は円安になると日経平均株価は上がるのです。これはよく株式市況の説明で、円高で企業収益が落ちると思われたので株が下がる、円安になると輸出企業が儲かると思われて株が買われたというような説明がありますけれども、私はメカニズムがちょっと違うのではないかと思っています。

円安というのはドル高ですよね。ドル高になっているとき、米国の経済状況が良くなって、米国投資家の資産余力が高まる。だから、ドルでポートフォリオを組んでいる人たちは元気になって他国の株を買い増すという動きになります。そうなると、海外の投資家が日本株に投資する。したがって日経平均株価は上がるということになるのです。

別の説明もできます。日経平均をドルに換算して、ドル建て日経平均株価は海外のナスダックやダウと非常に連動性が高いと説明する人もいます。これも真なりだと思います。例えば円安/ドル高になると、ドルに換算すれば日経平均株価の価値は下がる。そうすると、海外投資家のポートフォリオの中の日経平均のウェートが下がる。だからポートフォリオのウェートをリバランス(再配分)するために、日経平均株価を買ってくる。そのことが恐らくドル/円レートと日経平均株価がぴたりと一致する背景にあるのだろうと思います。

2つの仮説を用いて日経平均株価とドル/円の連動性を説明してきましたが、日経平均株価と為替レートが一致するということも勿論大切なのですけれども、その背後にどういう動きがあるのかということを、ご自分で仮説を立ててみて、―――それは間違っていても合っていてもいいのです、そのうち事実がそれを検証するでしょうから―――自分自身でモノを解釈する、その作業こそが大切なのです。自分自身でモノを解釈し、解釈を重ねるうちに洗練され、それが自分の血となり肉となり、金融リテラシー(理解力)、相場と向き合うときのリテラシーを作るのだと思います。

熊野 英生(くまの・ひでお)氏
第一生命経済研究所 主席エコノミスト
熊野 英生(くまの・ひでお)氏

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。1990年4月、日本銀行入行。同行調査統計局、情報サービス局を経て、2000年8月第一生命経済研究所入社。専門は、金融・財政政策、為替・長短金融市場、経済統計分析。著書に「籠城より野戦で挑む経済改革」(東洋経済新報社)、「どうすればリスクに強くなれるか」(近代セールス社)



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※外国為替保証金(証拠金)取引業界における「口座数」「預かり資産」の2部門。期間2008年3月までの4年間。
参考資料:矢野経済研究所『2008年版 外国為替証拠金取引の動向と展望』