2008年の世界景気 〜一体化による不思議な安定〜
在庫が減る不況はない
(日銀短観で)企業が不況、ないしはほとんど不況に入ったと回答している中で、私はどうも首をを傾けざるを得ないことがあります。1つは「在庫が減っている」という状況です。たとえば、ちょうどITバブルが崩壊した2000−2001年あたりは急速に在庫が増えているわけです。過去も在庫のサイクルは景気のサイクルとあっていて、在庫が増えていくときは不況、在庫が減り始めれば景気が良くなるというようなサイクルを描いてきている。ところが、今どうかというのを見ていただくと、在庫はますます減っている。これは好況のサインなのです。むしろその前、ちょっと(在庫が)増えるかなという気配があった訳ですが、そこを何とか横這いで持ちこたえて目下のところは在庫が減っている。これが日銀短観でいわれるような不況なのかと考えると、ちょっと違和感というか、大きな違和感というものを私は感じるわけです。
輸出が伸び続けている不況?
もう1つクエスチョン・マークがあって、「不況なのに輸出が伸びている」という状況です。日本の輸出は非常に勢いよく伸び続けています。これも過去のサイクルから言えば、不況のときは必ず輸出の数量が減っています。例えば92−93年や、金融破綻が起こった97−98年は輸出数量が減少しています。そして言うまでもなくITバブル崩壊の2001年の時も減っています。しかし、今回はあの時以上の騒ぎになっているのではないかと思いますけれども、輸出は伸びを続けています。
親玉は、アメリカでもなく、中国でもない

日本の輸出にアメリカの占める割合はどんどん下がっています。実は2007年は日本にとって記念すべき年でした。それはなぜかというと昨年初めて日本の輸出に占める割合で中国がアメリカを上回ったのです。大手金融機関などはこの辺りを前面に押し出したレポートを書いておりました。世界のパラダイムシフト(思考枠組みの転換)、アメリカが凋落して中国が台頭するというのが彼らのセオリーだったわけです。
私はちょっと違っていて、アメリカが凋落したのは間違いないにしても、その代わりを中国が務めるのかというと、そうだとは思っていないのです。2008年のデータを見て頂きますと、(日本の輸出のシェアで)アメリカも下がっていますが、実は中国も下がっているのです。ですから、日本がアメリカ圏から離れて中華圏に引き摺り込まれている訳ではなくて、去年から今年にかけての部分においては中国もアメリカも下がっている訳ですから、中国がアメリカの代わりをしているわけではなのだと。
世界中どこかに調子がいい国があればそこに有難く輸出させていただきますというのが日本の企業のやり方で、それが反映しているが為に、(世界経済に)親玉がいなくても日本は大丈夫という形になっている訳です。

藻谷 俊介(もたに・しゅんすけ)氏
1985年東京大学教養学部卒業。1990年米国ハーバード大学ビジネス・スクール卒業(経営学修士課程)。 1985年住友銀行に入行、資本市場業務部、事業調査部でマクロ分析、循環産業分析を担当する。1992年から96年までの4年間、ドイツ銀証券会社でシニア・エコノミストとして、数量手法による日本のマクロ経済分析・市場動向分析を専任担当する。1996年スフィンクス・インベストメント・リサーチを設立、現在スフィンクス・インベストメント・リサーチ代表取締役。
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