為替相場の行方
今の日本経済は円安を招きやすい構造に質的に変化している
95年ぐらいまでの円高を招きやすい構造から、95年以降経済が色々な構造変化を起こして、今の日本経済というのは非常に円安を招きやすい構造に質的に変化している。例えば、今の日本の代表的電機メーカーというのは、実はもう輸出メーカーではないのです。アジアの生産拠点から色んなものを日本に持ってきて、日本で売っている。日本で生産して海外に輸出するというのは非常に付加価値の高い製品に集中している。ですから代表的な輸出メーカーといわれる電機メーカーのポジションというのはほとんどスクウェア(中立)に近い。つまりアジアから製品を輸入するという構造が日本経済にビルトインされているということです。
少子高齢化が円安を招いている
95年ぐらいまではホームインベストメントバイアスといいまして、日本が貿易黒字を外に出さないという構造があったわけです。それが、最近は日本の個人投資家が預金から投資にお金をシフトさせている、つまり預金を一生懸命引き下ろして海外投信やFX(外為保証金取引)でお金を外に持っていっている、そういう動きがここ数年強まっている。もちろんこれは、金利差があるからというのが一般的な説明なのですが、実はもっと重要な構造の変化がその裏にはありまして、人口動態的な変化、つまり高齢化と少子化ということが、この円安を招いていると思うのです。
円安を招きやすい構造は数年変わらない
ですから、今後の投資戦略、為替相場の見通しを考えますと、この状況が短期的に変わるか否かということを考えればいいと思います。つまり0.5%という金利は来年の3月ぐらいまでは変わらないし、増税してもそれが数年間でどんどん上がっていく可能性も非常に低い。しかも、今の円安を招きやすい日本経済の構造はそんなに簡単に変わっていかない。したがって、ドル安の中でも円が強くならないという状況も数年変わらないだろう、という見方を私は根底に置いております。
米サブプライム住宅ローン問題について
年末から1月、2月までアメリカの金融バブルの崩壊という問題は金融市場をもっともっと席捲すると考えています。したがって株が下がれば円が買われるという状況はおそらく短期的には続いていく可能性が高いというふうに考えております。私の中心的な為替の見通しの中で申し上げますと、これからアメリカは状況が非常に悪くなってゆくだろう、しかしそれ以外の国々がアメリカ経済の影響から逃れて成長を続けていく可能性が高い、いわゆるデカップリング(米経済と世界経済の相関性の低下)は今後も続いてゆく可能性が高いと考えております。こうなると世界が安定的な成長を続けるということでありますから、株式相場も年末年始のパニックを乗り越えれば世界経済は安定的に成長します。このパニックは最悪の状況にはつながらないと思っておいたほうがよい。来年の1,2月がドル/円の底であって、それから反発していく可能性がおそらく7割くらいあると考えています。

梅本 徹(うめもと・とおる)氏
1984年京都大学経済学部卒業後、富士銀行入行。東京外国為替市場では初めての外国為替リサーチチームを設立し、チーフ・カレンシー・エコノミストとして勤務。1997年よりモルガン・スタンレーにおいて為替ストラテジストとして戦術的な見地から円相場の短期予測を担当。2004年慶応大学グローバル・セキュリティー・リサーチ・センターにて、榊原英資教授(元財務省財務官)の下、金融市場の分析・研究に従事。2005年5月、バークレイズ銀行東京支店のチーフFX ストラテジストとして就任。現在、テレビ東京のモーニング・サテライト、日経CNBC、ブルームバーグ・テレビジョンなど数々のテレビに出演している。
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