変貌を遂げる世界のヘッジファンド最新情報
注目されるスーパーヘッジファンド
「ヘッジファンド」といっても、その中身は千差万別だ。年数10%という高いパフォーマンスを打ち出すものもあれば、お客から預かったお金を持って逃げてしまう連中まで、実にさまざま。
そのなかで、最近特に注目されているのが、「スーパーヘッジファンド」とも称するような巨大ヘッジファンド。彼らの特徴は、国家の力を背景にしている。というよりも、官製ヘッジファンドであり、その目的は国の富を増やすことにある。
スーパーヘッジファンドのなかで一番注目されているのが中国だ。何しろ1兆4000億ドルもの外貨準備を保有している。これは、日本の9000億ドルを上回って、文字通り世界一だ。これまで、この巨額な外貨準備は、米国国債を中心に運用されていた。が、年4%程度のリターンでは面白くない。そこで、徐々にリスクをとった運用を志向するようになり、ついには米国のヘッジファンドを買収しようという動きにまで出ている。
つまり、米ヘッジファンドを用いて有利な運用を行うことを狙うだけでなく、米ヘッジファンドから運用ノウハウを吸収し、いずれは自分たちによる純中国製のヘッジファンドを立ち上げようというのだろう。
恐らく、この手の動きは中国に限ったものではない。ロシアや北欧、中東諸国も豊富な資源エネルギーで稼いだ外貨を、ヘッジファンドで積極運用している。原油などの資源が永遠に続かないことを、彼らは誰よりもよく理解している。資源が枯渇しても、国民生活がきちっと成り立つようにするためには、今、原油の輸出によって稼いでいる外貨を有効に運用し、増やしておく必要がある。
日本はもっと警戒してウォッチしていく必要がある。
たとえば中国が、これだけ大きく膨らんだ外貨準備を存分に駆使して、コモディティや国内企業に資金を投じてきたら、どうなるだろう。すでに石油についてはほぼ100%、食糧についても60%を海外に依存しているのが、日本の現状である。コモディティ価格の急騰は、こうした輸入体質を持つ日本にとっては、極めて不利な材料だ。そのうえ、輸出企業の競争力まで負けるようになってしまったら、もう日本には何も残らなくなってしまう。
せめて、日本も外貨準備が大きく目減りする前に、政府系スーパーヘッジファンドを立ち上げるくらいの構想を持っていても良いはずだ。日本の外貨準備は、ただひたすら米国国債を買い続けているだけ。いわば米国の財政赤字を、日本が補っているようなものだが、そこから得られるリターンなど、たかが知れている。むしろスーパーヘッジファンドで運用した方が、長い目で見れば高いリターンが期待できるのではないか。この点については財務省も、もう少し真剣に考えるべきだろう。
中国の金融市場における地位確立
そして、今後のグローバルな金融マーケットで力をつけてくると思われるのが中国だ。すでに製造分野では、これまでの「安かろう、悪かろう」的な中国製品のイメージが徐々に払拭されるような、クオリティの高いモノ作りが実現されつつある。それに続いて、高い付加価値を持つ、中国独自の技術開発に基づいた製品の登場も、時間の問題だろう。そして、最後には金融の世界でも、中国が世界をリードする日がやってくると思う。中国による米ヘッジファンド買収の動きは、まさに中国が豊富な外貨準備を背景に、世界の金融市場でイニシアティブを取るための布石なのだ。

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)氏
1953年鳥取県生まれ。東京外国語大学中国科卒業。米ジョージ・ワシントン大学大学院にて政治学博士号を修得。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現在、国際未来科学研究所代表。専門は「技術と社会の未来予測」「国家と個人の安全保障」「長寿企業の戦略経営」。主な著書:ベストセラーとなった「ヘッジファンド」(文春新書)をはじめ、「知的未来学入門」(新潮選書)、「たかられる大国・日本」(祥伝社)、「チャイナ・コントロール」(祥伝社)、「ハゲタカが嗤った日:リップルウッド=新生銀行の隠された真実」(集英社インターナショナル)など多数。
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