大阪セミナー 日本経済から考える私たちの投資戦略

第1部 日本経済 変化の時代

「春までは1ドル=85円の円高が続く。しかし、来年の6月頃に米ドルの利上げが行われれば、年後半は1ドル=100円の円安に向かうだろう。」

第1部 日本経済 変化の時代

今年10月、オーストラリアは0.25%の利上げをして、世界でいち早く“出口戦略”を実施した。一方、日本では政権交代が行われたものの、民主党政策の実効性や財源の確保などに疑問が残り、いまだ景気回復に道筋が見えてこない。日本経済の行方と、世界経済の流れから読み解く為替動向について語った。


日本経済にとって一番肝心な問題は「高齢化」

ロバート・アラン・フェルドマン氏

最近、私は「日本経済が弱いのに、なぜ円高が続くのでしょうか?」という多くの質問を受ける。為替は国が強いか弱いかではなく、需給バランスで決まると、私は考えている。では、需給バランスはどうやって決まるかというと、需要と供給を分けて考えることがポイントだと思う。これから為替を考えるに当たって、需要と供給を決める要因に、政権交代で日本の政治は良くなるか、世界経済が回復の道をたどっているかがある。さらに、この2つを合わせてドル円相場はどう動くのか。加えて、日本の国内景気はどうなるのかというのも、為替の行方に影響を与えるだろう。そのほかに、原油問題や食糧問題などに取り組むことができるのかといったことも、日本に対する信頼性を決めることになるので、為替への影響もあるだろう。では、政権交代で日本はよくなるのだろうか。今、日本経済にとって一番肝心な問題は「高齢化」、つまり労働力人口の減少だと思う。「国内総生産(GDP)=1人当たりの生産性×労働力人口」なので、労働力人口が下がっている今、生活水準を維持したいなら、生産性を上げるしかないのだ。つまり、生産性が加速するような政策を取っているかどうかがポイントとなる。新政権の政策を見てみると、「効率を改善する政策」もあれば「悪化させる政策」もあるほか、取り組むべきだが取り組んでいない「入っていない政策」もある。


民主党のいい政策、悪い政策、やるべき政策とは?

ロバート・アラン・フェルドマン氏

まず、民主党が掲げる政策で、効率を改善するものに「出先機関の廃止」がある。 日本の機械メーカーは世界中のいろいろな分野で優れた製品を作っている。だが、医療機器だけは圧倒的に遅れている。医療機器メーカーの方にその理由を聞いたところ、「役人が足りないからだ」と言うのだ。実は医療機器の審査をする役人の数が、全国でも30人しかいない、と聞いている。これが問題視され、その後すぐに100人に増やされた。
このように足りないところがある一方で、多すぎるところもある。例えば、国土交通省の出先機関である北海道開発局は5800人もいるのだ。以前の1万2000人からは半減しているものの、国(北海道開発局)と地方(道庁)が重なっている「二重行政」となっている。出先機関を廃止・整理し、政府の効率を高める必要がある。

一方で「効率を悪化させる政策」もあり、私が心配している1つは「製造業派遣労働の原則禁止」だ。民主党は国民の平均賃金を上げたいという気持ちは強いだろうが、実際の政策には疑問を持っている。派遣社員を製造業で禁止すると、弱い人をより弱くすると懸念される。企業のトップリーダーに聞くと、「これでは工場を中国に移すしかなくなる」と言うのだ。また、「郵政改革の逆戻り」も心配だ。再国有化になって、郵便事業の効率化がよくなるとは、到底思えない。郵便を送るのに日本では80円かかるが、アメリカでは42セントで、半分ですむ。なぜ日本は2倍の郵便料金がかかるのか、どこかに非効率があるとしか思えない。最後に、民主党が取り組むべき課題は、「移民の受け入れ」、「デフレ対策」、「財政赤字の改善」だ。移民を増やさない限りは、高齢者を支えることはできない。また、「デフレ」という言葉はマニフェストにも出ていないが、デフレが終わらない限り、雇用は増えないという認識が、民主党には足りないのではないだろうか。さらに、財政赤字に対するビジョンがまったくない。本来は下がるはずの長期金利が下がっていないのは、それが1つの要因になっているのではないだろうか。民主党の中堅議員には、さまざまなアイデアを持った知識も豊富な立派な人も多い。私は民主党に期待している。


ドルの利上げは行われるのか?

ロバート・アラン・フェルドマン氏

アメリカの出口戦略、つまりドルの利上げが行われるかに注目が集まるが、FRBは簡単に金利を上げないだろう。というのは、“利上げのリスク”を考えているからだ。「早すぎる利上げ」だとデフレになってしまう危険性があり、デフレは抜け出しにくいのでコストもリスクも非常に大きい。逆に「遅すぎる利上げ」はインフレになってしまう。これは決してよくないが、金利を上げればいいだけで、損はあまり大きくないのだ。リスクの大きい「早すぎる利上げ」と、リスクが小さい「遅すぎる利上げ」を考えると、利上げは遅くてもいいというのがバーナンキFRB議長の見解だと思う。なので、資源国や欧州と比べて、アメリカの利上げは遅いだろう。

今は本当に「円高」なのか?

さて、今は1ドル=90円ほどだが、これは円高だろうか?私はたいして円高と思っていない。95年4月当時、1ドル=80円となり、これはものすごい円高だった。日本の経常黒字は半減し、それ以降、GDP成長の停滞が始まったのだ。今は1ドル=90円ほどに戻っているが、「当時の1ドル=80円」と「今の1ドル=90円」の意味は同じではない。それは、物価が違うからだ。95年以降、日本の物価はほとんど変わっていないのだ。一方で、アメリカの物価は40%ほど上昇している。「当時の1ドル=80円」を今の物価に直すと、「1ドル=57〜58円」ほど。結果、「今の1ドル=90円」は大した円高ではないと言えるだろう。


当面は1ドル85円の円高、来年後半からは円安傾向に。

ロバート・アラン・フェルドマン氏

では、これからはどうなるのだろうか。資源国や欧州に比べアメリカの利上げは遅いと思うが、日本の利上げはもっと遅いだろう。日本は現在のデフレが続く限り、利上げは考えにくいだろう。来年6月以降、FRBはようやく利上げできるような状況になってくるが、日銀が2010年以内に利上げできるかどうかは疑問だ。むしろ、2011年に入ってからだろう。当面は、ドルの供給が増えるだけで需要は増えないので、来春まで1ドル=85円の緩やかな円高が続くだろう。しかし、来年半ばからアメリカが利上げすれば、来年後半に金利格差が広がるので、円安ドル高になるだろう。1ドル=100円まで戻ると予想している。そのほかに注目しているのが、非常に安い韓国ウォン。これは、来年にかけて変わってくるのではないだろうか。韓国ウォンが対ドルで強くなり、日本円は対ドルで弱くなるので、クロスレートはかなり変わってくるだろう。今は1円=13.6ウォンくらいだが、1円=9.6〜9.8ウォンまで「円安ウォン高」になると予想している。ひとつのアイデアとして、韓国ウォンを見ておくのもいいかもしれない


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