大阪セミナー今日からはじめる投資ライフ ー金融不安の中の資産運用術ー

第1部:竹中先生の特別授業 〜世界を見渡すと日本経済が見えてくる〜

「改革を断行できる “真のリーダー”をつくるのは、 私たちの手にかかっている。」 現在の内閣の存在こそ、「100年に一度の“危機”」と考える竹中平蔵氏。 未曾有の金融危機から深刻な景気後退とともに迎える2009年を目前に、 私たちが心がけるべきことを語ってくれました。

竹中平蔵氏

政治の“真のリーダー”が、国も経済も劇的に変える

2年前に大臣、国会議員を辞め、古巣の慶應大学に戻りました。今は自由な立場になり、何を言っても失言になりませんので(笑)、ぜひ思い切っていろんな問題提起をしたいと思っています。麻生太郎首相は「世界で100年に一度の大荒らしが吹いている」と言いますが、私は「100年に一度の内閣機能低下が起きている」と思っています。今の内閣が、日本の混乱にさらに拍車をかけているのではないかと思っています。
今や「経済」を議論するにあたって、「政治」抜きでは語れない状況になっています。政治がどうなるのか、政策はどうなるのか、その結果、経済はどうなるのか。そして、自分の生活はどうなるのかを考えなくてはいけません。経済と政治は、切っても切れない関係になっているのです。

さて2008年を振り返って、印象に残ったことを2つ、みなさんにご紹介します。 1つは、「リーダーが大事」ということ。私たちは民主主義社会の中にいますが、民主主義というのは、国民の意見を吸い上げて政策を実行するのが基本です。しかし、それだけでは務まりません。
国民に対して、「まだ反対かもしれませんが、こうする必要がある。だから、こうしようではないか、私はこうしたい」と、将来像を示しながら国民を引っ張っていくのが、“真のリーダー”のあるべき姿。現在、そういったリーダーの不在が日本の最大の問題点なんです。

一方、“真のリーダー”を本当に求めていたのが、オバマ新大統領という新しいリーダーを生み出したアメリカでしょう。アメリカの現状は大変ですが、「アメリカは必ず甦ることができる」と国民に期待を持たせるスピーチをして、今まさに発進しようとしています。目の前は茨の道ではありますが、アメリカ国民の期待は非常に高まっています。
やはり、“真のリーダー”が出てくるかどうかで、その国は大きく変わり得るのです。


竹中平蔵氏

「フラット化」という厳しい現実に直面する日本

もう1つの体験をご紹介しましょう。 先日、ブラジル銀行東京支店に電話をする機会があり、オペレーターと話すと「少し訛っているかな?」と思ったので、「この電話はブラジルにかかっているんですか?」と聞いたら、「はい、こちらはサンパウロです」とお答えになったのです。そう、ブラジル銀行東京支店のオペレーターはブラジルにいるのです。これがまさに私たちが直面している世界で、これは2つのことを意味しています。
1つはグローバル化ということ。もう1つは、デジタル革命、技術の進歩が起きているということです。

デジタルとは、簡単に言うと数字に変えることです。文字の情報、音の情報、映像の情報、様々な情報をすべて数字に変えるわけですから、正確に復元できる。また、数字ですから、情報を安く早く送ることができるメリットがあります。デジタル革命時代には大きなポイントがあります。IP電話のようなデジタルな電話であれば、隣の部屋に電話するのも、地球の裏側に電話するのもコストは同じということ。今やアメリカの会社のオペレーターはほとんどがインドに移っていると言われています。このような技術革新とグローバル化の流れの中で、日本のオペレーターの給料は、将来的にはブラジルやインドなどの人件費に引きずられていくのは明白です。これがまさしく「フラット化する世界」で、日本は、ブラジルやインドと同等な条件下で競い合う、厳しい現実に置かれているのです。

マスコミではよく、次のようなことが言われます。「去年と同じように一生懸命に仕事をしたのに、今年は給料が下がった。これは格差でけしからん!」と。いえ、これが私たちの直面している現実なのです。昨日と同じ生活水準を維持しようと思ったら、私たちは昨日と同じことをしているだけではいけないのです。

昨日から今日にかけて、より付加価値の高い仕事をしなければ、この豊かな生活水準は維持できないのです。 グローバル化と技術の進歩が起こると、フラット化する現象が出てきます。これからは、それに向かっていけるような社会をつくる必要があり、それを指導していけるリーダーが必要で、それを先導できる企業が伸びていくのです。こういう状況を前提としてリスク管理をし、厳しい姿勢で臨むことができるかどうかで、私たちの将来が決まってくると思います。


竹中平蔵氏

いよいよ世界同時不況に。その原因は?

さて、世界の経済を鑑みて日本経済を展望するにあたり、サブプライム問題はやはり避けて通れません。私は当初から、アメリカのサブプライム問題と日本の不良債権問題とは本質的に違うことを主張してきました。詳しくは2008年10月18日に行われたセミナーのリポートに譲りますが、10月中旬くらいから、いよいよマクロ経済が悪くなるという兆候が見えてきました。 それはなぜか?

例えば、みなさんが1000万円の資産を持っていたとしましょう。その資産が急に下落して、500万円になったとしたらどうしますか? 車を買うのをやめよう、外食を控えようと、財布のヒモを締めますよね。これを「負の資産効果」、「逆資産効果」といいますが、それが世界規模で起きたのです。この流れは資産価値が回復してくるまで、しばらく続くでしょう。

アメリカのGDPの約7割が個人消費。世界中でそれが起こっているのですから、「世界同時不況」になるのも当然です。
IMF(国際通貨基金)が世界各国の2009年の経済見通しを発表していますが、イギリスは−1.3%、アメリカは−0.7%、日本も−0.2%と主要国はほとんどマイナス成長。したがって、特に2009年前半の世界経済は相当、負の資産効果を受け、厳しい状況になっていくでしょう。


限られた時間内に改革を断行すべし

そこで、各国の景気対策に注目が集まります。今後、アメリカでもヨーロッパでも日本でも財政拡大が行われます。しかし過去20年見ても、景気が悪くなったからといって、バラ撒き型の公共事業で財政拡大をするなんて、極端な話、日本だけだったのです。経済対策といえば、ほとんど金融政策なのです。普通、先進国では、景気が悪くなると金融政策を取るんです。確かに、財政政策は効果があるのですが、極めて一時的。一方で財政赤字は膨らむばかりで、とても続けられるものではありません。先進国はそれをわかっているから、財政拡大をしないのです。 なのに、なぜ今回は、世界中の国が財政拡大に踏み切っているのでしょうか。ちょっと不思議だと思いませんか?

それは世界中の“金融プロセス”が痛み、金融政策が利かない可能性があるからなんです。例えば、中央銀行が民間銀行にお金を出して「これで貸し出しを増やして」と言ったって、銀行のバランスシートが悪くなって萎縮しているから、貸し出しなんて増えない。そうすると、末端まで金融政策の効果がいき届かない。それが見えているから、当面は財政政策を行おうとしているだけです。しかし、財政政策なんて、せいぜい1〜2年しか続けられません。財政政策で支えている間に本当にやるべき改革が断行できるか、つまり金融の問題を片付け、成長力を高め、資産デフレを抑えることができるかなどに今後の焦点が集まります。

ぜひ思い出していただきたい。90年代の日本はそれをやらなかったのです。
日本はとにかく財政で下支えするだけで、バブルが崩壊してからずっと、銀行の不良債権処理などの改革を行わなかった。ですから、財政ばかりムダに使われ、成長力はいつまでも高まらず、残ったのは巨額の財政赤字と「失われた10年」だけ。
世界が、日本と同じ徹を踏まないかどうかが最大のポイントで、リーダーのオバマ氏の手法に世界は注目しています。問題は、政治がその足を引っ張らないかどうか…。


竹中平蔵氏

2009年は政党・政界再編加速へ。
責任は私たち国民の双肩に

日本のこれからの景気はどうなっていくのでしょうか? サブプライム問題のほかに、景気が減速した日本固有の原因を簡単に2つご紹介します。
1つは、改革をしなくなったということです。改革の勢い、改革のモメンタムが低下しているのです。もう1つは、“コンプライアンス不況”です。コンプライアンス(法令の遵守)は誰も否定しません。しかし、国土交通省の改正建築基準法、金融庁の金融商品取引法、経済産業省の外資規制など、「コンプライアンス」の名のもとに、行き過ぎた規制が不況を招いたのです。役人・官僚たちが既得権益、影響力を保持するために規制を行い、民間の活動を縮小させた。
これらを修正することができるようであれば、日本の経済は高い技術力と資本力と人材を持っているのですから、もっと元気になれる。そのためには、政治の強いリーダーシップが必要なのです。

各政党に目を向けると、自民党は「バラ撒き後、増税」の政策を明言しています。対する民主党も、日本を強くする政策が出せているわけではありません。しかし、自民・民主の中にもしっかりとした政策をしようとしている人たちがいますから、そういった人たちが手を携え、きちっとした政権をつくってほしいというのが、多くの国民の願いなのではないでしょうか。それが、どんなシナリオで起こるか――09年は地殻変動の幕開けの年になるでしょう。

これは大いに競っていただきたいと思います。しばらくは政権不在と政治の混乱は続くかもしれませんが、その先に安定した改革政権をつくり経済を強くし、日本が本来持っている力を発揮できる環境づくりをしてもらいたいと思います。
郵政民営化、政府系金融機関の完全民営化と改革ムードがピークに達した05年、これで日本は強くなると世界中が確信し、日本の株価は42%も上昇したのです。将来への期待さえ持つことができれば、この程度の株価の躍進は決して夢ではありません。

いずれにしても、2009年は重要な分水嶺となるでしょう。しかし、結局は政治次第。そしてそれは、政治を選ぶ国民、つまり私たちの責任ともいえるのです。


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