名古屋セミナー 骨太の投資戦略セミナー
第1部 大胆予測!株価上昇のシナリオと日本経済の行方
「世界経済は年後半から来年にかけて V字回復する。日経平均株価1万3000円、 1ドル=105円あたりまで戻るだろう」(武者氏)
第1部 大胆予測!株価上昇のシナリオと日本経済の行方
本格的な景気回復が見えない中、年初来高値を更新するなど、堅調な世界的株価上昇が続く。しかし、世界経済を引っ張ってきた中国で、上海市場の急落が起きるなど、予断を許さない。トップアナリストの2名が、現在の世界経済環境とこれからの市場の見通しについて語った。
今後の世界経済は、明るさを増してくる!
武者: 私は、世界経済は今年後半から来年にかけてV字回復すると思っています。そして、それを追うようにして株式市場も上昇していく可能性が強いでしょう。すでに株価は3月から約5割回復しましたが、株価上昇はまだ止まらないというのが、私の結論です。リーマン・ショックで株価はピークから6割も下落しましたが、引き続き堅調な世界経済のファンダメンタルズが表面化してくれば、今年後半から来年に掛けて、かなり大きなサプライズがやってくると考えています。例えば、アメリカの自動車販売は平均1600〜1800万台だったものが、900万台まで減少しているように、アメリカの消費は過剰なほど抑制されています。今の経済は腹8分目といいますか、腹半分の腹ペコ状態ですから、それが正常化してくれば、相当な水準まで回復してくると想定されます。
菅野: 日本経済がどうなるかということは、世界経済がどうなるかということ。日本の景気サイクルは鉱工業生産指数で決まり、これは輸出で決まります。つまり簡単に言うと、日本の景気は輸出で決まるのです。8月の世界の企業の景況感は底打ち後、回復の局面に来ています。来年にかけて、世界経済が徐々に明るさを増してくるでしょう。アメリカの失業率はまだ上がっていますが、来年の1-3月期に失業率がピークアウトし、緩やかに下がっていくという局面にあると思います。
世界的株高の牽引役は中国らエマージング諸国
菅野: これまでは、アメリカ・日本・ヨーロッパを見ていれば世界経済が分かったのですが、今の牽引役はエマージング諸国。特に、アジア経済は金融危機でもあまり大きな痛手を受けていませんので、中国をはじめとするアジアの勢いは非常に強い。まずはエマージング諸国を見てください。そして、それが先進国にどう影響してくるのかを見ていただきたいですね。
武者: そうですね。実は私はちょうど一週間前に中国に行っていたのですが、中国経済はまだ非常に強い。その理由は、2年間で4兆元という景気対策による国内需要です。最近の特徴は、沿岸部は輸出が落ち込み3%程度まで落ちていますが、内陸部は10〜15%程度まで成長率が高まっています。これは、内陸部に積極的な投資が行われているからです。都市部で失職した出稼ぎ労働者が地方に帰って職を見つけ、地方経済の成長を支えているのです。こうした公的需要にリードされた景気拡大で、現在も8%、来年も9%の成長が期待されます。例えば、中国の粗鋼生産は年間6億トンまで増加してきましたが、これは20年前の世界全体の粗鋼生産とほぼ同じ水準。金融危機の後遺症が残る現時点で、ここまで生産が回復してきているのですから、中国経済は極めてダイナミックだと言えるでしょう。
菅野: 中国では景気対策による非常に大きな効果が表れて、これから個人消費の増加へと拡大する局面にあるわけですが、皮肉なことに金融緩和した途端、銀行貸出が増加し、過剰流動性が指摘されるようにもなりましたよね。そこで中国人民銀行が過剰流動性を抑えようとしたために、8月には上海総合指数が2割ほど下がりました。しかしこれは、マーケットが過剰に反応しすぎたと思います。中国は、国のインフラが十分に発達していないから、ショックに対して脆弱。リーマン・ショック前までは12%ほどで成長していたのが、これからは8〜9%程度がしばらく続き、中長期的には5%程度の成長になると見ています。
世界経済が抱える爆弾とは?
菅野: こうした光の面だけでなく、欧米の金融機関がかかえる不良債権問題という影の面もありますよね。今、欧米の金融機関は1994年の日本と同じような状況にあると考えていて、今後、不良債権が処理されるのか、景気回復の持続と絡んでくると思っています。このまま景気が回復すれば、2011年にオバマ政権は増税に転じるでしょうから、そのときにさらに景気が回復するのかは、金融機関の不良債権処理が進むかどうかにかかっていると思います。
武者: 私は、1990年代に起きた日本の金融危機と、現在世界で進行している金融危機はまったく異質なものになると思います。ですから、日本で起きたことが繰り返されるわけではないと思います。というのは、アメリカの不良債権は、市場の値段が帳簿価格よりも大幅に下落したためです。利息がちゃんと支払われている金融資産であっても、値下がりした時価をベースに帳簿をつければ、当然、資本不足や債務超過に陥ります。ところが、大幅に売り叩かれた金融資産が今はリバウンドしていますから、いずれこの問題が解消されると思います。ですから、日本の不良債権問題との類似性に注目しないほうがいいと思っています。IMFは世界の不良債権を悲観的に4兆ドルと見積もっていますが、今年3月に26兆ドルだった株式市場の時価総額が今は40兆ドル。わずか5ヶ月で約14兆円も復活しています。これから先、日本と同じような不良債権による長期の停滞やデフレは起きないと思っています。
菅野: 世界経済のリスクは、急激に財政赤字が増えていることです。アメリカは医療改革や社会保障改革をしようとしていますが、借金だけが増えるかもしれません。確かに目先は強いと思っていますが、中長期的に政府が効率的に経済を運営できるかどうかが問題となるでしょう。
―最後に、足踏み状態が続く日経平均株価とドル円の年末の水準を教えてください。
武者: 最近、1ドル=90円台までドル安と円高が進行しています。これはアメリカがダメになってドルが売られているのではなく、アメリカが積極的に海外に投資し、アメリカから資本が流出しているからドル安になっているのです。これは“いいドル安”です。企業収益もよくなりますし、アメリカの貿易収支もよくなる。さらに世界経済の成長の恩恵も受けられるので、アメリカにとってメリットが多い。一方で円高が進行しているのは、日本人が極端なリスク回避姿勢となり、海外投資を引き上げているからです。それによって、輸出企業は苦しくなるという悪循環が起きる状況になっています。重要な点は、このような円高を歓迎する政策を民主党が主張しているということです。世界経済が良くなる方向に向かう中で、民主党が政策を見直さない限り、日本だけは株価の停滞が起きることが懸念されます。民主党が大幅な政策転換をすれば、年末に日経平均は1万3000円、1ドル=105円あたりまで戻ると予想しています。
菅野: 確かに難しい局面で、ドル以外の通貨ではそれほど円高は進んでいませんから、今起きているのは円高というよりはドル安。それは、世界の投資家が積極的にリスクを取ろうとしているからです。これまではリスク回避姿勢の強まりから資金を一時的にドルに戻していました。そのドルを今度はリスク資産へ徐々に移していることと整合しています。ですから、円高ドル安になっても世界の株価は上がっていくので、上昇基調は変わらないと思います。だいたい年末の日経平均株価は1万1500円と予想しています。為替については目先の円高傾向が続き、90円を割ってくる局面もあるかもしれません。今は財政出動や利下げなど、あらゆる政策を取っていますが、2010年の半ば頃には利上げが話題になると思います。2011年からは、まずエマージング諸国、韓国と続き、次にイギリス、EU、アメリカ、日本という順に利上げが行われるでしょう。日本との金利差が徐々に開くので、2010年以降は円安に戻っていくと思います。
