独り言 (2006/7/24)
"両建て"
先日、ブログの読者のお一人であるキドさんから、“両建て”についての問題提起を頂いたので、これを検証してみたい。

先ずFXにおいての“両建て”とは、同じタイミングで売りと買いの(両)方のポジションを(建)てている、ということである。
業者によってはこれを禁止しているところがあると聞いたことがあるが、それは解せない。
立派なトレーディング戦略の一つであると思う。

先日、日々のブログで為替責任者は己の責任で、全体のネット・ポジションを余り大きくしないためにトレーダーの連中とは逆のポジションを取ることがある、とご披露したがこれも“両建て”の一種である。
“両建て”には二つの種類があると思う。

先ずは、皆さんに絶対にやって欲しくない、悪い“両建て”の例。
前提は円高・ドル安になるという中期的な相場観を持っている。
115円で1万ドルの売りを建てる。願いは110円で買い戻して利益を上げること。
いつものように(?)、そうすんなりドルは下げてくれない。
あっという間に120円にドルが上がってしまった。
おかしいなあ!!  いや、おかしくないのである。 いつも言うように、市場が正しく貴方の相場観が間違ったのである。
ドル・ブル派が125円に行くと言っている。 本当かいなあ。 やばいなあ。
ここで損切ると5万円の損が出る。悔しい。切りたくない。
よし、115円のドル・ショートのポジションを持ったまま、ここで1万ドル買ってやれ。
そうすることによって、5円やられているポジションをキープしながら今度はドル・ロングで攻めるんだ! 
120円で買ったポジションは123円で利喰い、115円で売ったポジションは後でドルが下った時に112円で買い戻すんだ!!
そうは上手く行きませんって!! 

この“両建て”のポジションを持ったとしてのP/Lを見てみると、
1)122円になった時。 
115円のドル・ショート・ポジション。 115円−122円=−7円。
120円のドル・ロング・ポジション。  122円−120円=+2円。
ネット。                          −5円。

2)113円になった時。
115円のドル・ショート・ポジション。 115円−113円=+2円。
120円のドル・ロング・ポジション。  113円−120円=−7円。
ネット。                          −5円。

3)115円−120円のレンジに留まっている場合。(例118円)
 115円のドル・ショート・ポジション。 115円−118円=−3円。
 120円のドル・ロング・ポジション。   118円−120円=−2円。
 ネット。                           −5円。

要するに、どちらかを利喰わないと相場がどのレベルに行こうと、キッチリ損切りをした実損の5円と同じ損を常に被っているのである。ただそれが簿価上の未実現損であるだけの違いである。

いや、違う! さっき言った様に、損切らないで120円で買ったドルを122円で売って、そして115円で売ったドルは113円で買うんだ、ですって!
まあ、その様な天才的なディールが出来る人はそう多くはおりますまい。

今回はスワップ・ポイントは無視しているが、当然ドルのロング・ポジションで得るポイントの方が、ショート・ポジションで払うポイントより少ないから、Carrying Cost(ポジションを持っているために掛かるコスト)も考えなくてはいけない。
だから、皆さんはこのように不純な動機で持った悪い“両建て”はお止めなさい!!

さて皆さんは前提として、円高・ドル安になるという中期的な相場観を持っている訳であるが、さっきも言ったようにそうすんなり問屋は卸さない。
但し、レバレッジもそんなに大きくしておらず、弾力的なトレーディングが出来る状況にあるとする。
そこで決して強く勧める積りは無いがやってもいい“両建て”取引の例。

115円のドル・ショート・ポジションを持っているが、中期的な目標は108円としている。
非農業部門生産者数が市場の期待値より低かったらしく、突然113.50までドルが下げた。う、うっ。どうする。利喰ってもいいな、と思ったがあくまでも目標は108円!
115円のコアのドル・ショートはまだキープしたい。でも、この113.50までの急な下げは,“出来過ぎ”で嬉しさ半分である。
よし、ドル・ショートは切らないでにわかロングを作ろう。
但し、あくまでもこのドル・ロング・ポジションは“ついで”のポジションで必ず“短期”で切る、という強い意志が必要である。

またP/Lを見てみると、
1)案の定、116.50まで直ぐにドルが戻った。
115円のドル・ショート・ポジション。  115円−116.50=−1.5円。
113.50のドル・ロング・ポジション。 116.50−113.50=+3円。
ネット。                             +1.5円。

ここですかさず、ロング・ポジションを116.50で利喰ってオリジナルのドル・ショートに戻す。ポジションのアベレージが1.5円好転した。

2)意に反して(いや、当初の自分の相場観通り)111.50までドルが下った。
  115円のドル・ショート・ポジション。  115円−111.50=+3.5円。
  113.50のドル・ロング・ポジション。 111.50−113.50=−2円。
  ネット。                             +1.5円。

“両建て”のポジションを作ったため、放っておけば+3.5円になるところが+1.5円だけになってしまったが、それでもプラスはプラス。 嬉しい。

これはあくまでも机上のシュミレーション。
こんなに悪くならないかも知れないし、こんなに上手く行くかどうかも分からない。

但し、
−自分では比較的強い中期的な相場観を持っている。
−但し、相場は動くもの。多少Against=(逆)に行くことは覚悟している。
−その逆の動きが短期的なものと判断したら、敢えて“両建て”にして逆の動きも取ってみたい。
−“両建て”の逆の動きに対するポジションは、短期で必ず処理して元のコアのポジションに戻す。

いずれにせよ、レバレッジを大きくしているとこの様な戦略を取ることは不可能である。
これも、レバレッジを大きくしてはいけない好例である。

如何でしょう?
キドさんは、両建てを上手く使っていらっしゃる気がする。
レバレッジもそんなに大きくないのではなかろうか?

                                   今週は札幌に行くので、ご機嫌の塾長。