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第14回 為替介入について(2)(2004/10/18)

 日本の場合、介入をするときは外為特別会計という勘定を使います。特別会計で政府保証債(通称FB)を発行して、それを実質日本銀行が引き受けます。ちょっとわかりにくいですね。簡単に言うと、日本銀行がお金を刷って、それで政府から債券を買うわけです。そして、政府はそのお金を使って介入を行うという仕組みです。
 毎年、国会でFBの発行限度枠が決められるので、理論的には介入金額には限度があるのです。しかし、実際は、オーバーしそうになった場合は、補正予算などで増枠することが可能です。また、日銀や他国とのやり取りで対応もできるようになっており、上限はあまり心配しなくてもいいように準備がしてあります。

 日本でいうと介入には円買い介入と円売り介入があります。円高の時に円売り介入、円安の時に円買い介入が実施されます。円売り介入の場合は円を市場で売って、ドルやユーロを買います。この場合、まず政府保証債を発行して円を調達して、それを市場で売って外貨を買います。自分の国でお金を刷り、それを売って外貨を買うのですから、ある意味青天井にやれるわけです。買ったドルやユーロはそのまま、外貨準備という形で残され、銀行に預金したり、米国債を買ったりして運用されています。

 ところが円買い介入の場合は事情が違います。この場合、手持ちの外貨を市場で売って、円を市場から買うので、手持ちの外貨でなくなってしまった場合、それ以上介入が出来なくなってしまいます。つまり、介入できる金額は、外貨準備の金額以内ということなんですね。それを超えてしまう場合は、外国の中央銀行からドルやユーロを借りてくることも出来るのですが、それでもどうしても限界があります。
そういう意味では、日本の当局(財務省)にとって最も怖いのは、介入という面だけで考えると、実は円高ではなく円安な訳です。円高に対しては、無尽蔵に介入ができますが、逆には限界はあるからです。
 いつか日本にインフレがやってきて、とてつもない円安になったりすると、日本はひとたまりもないということだと思います。

 ところが、幸いというかなんと言うか、日本には年間十数兆円の貿易黒字があります。貿易で毎年毎年、十数兆円の円買いが市場に出てきます。単純に考えるとそれを上回る金額の円売りが出ないと円高になってしまうわけです。そういう意味では、構造的に円高になりやすい体質が円という通貨の特徴です。従って、民間から十分な円売りが出ないときは、政府がその分円売り介入を相場が安定しないということになります。
 過去の介入を見ると円売り介入の方が圧倒的に多いのですが、それも考えてみれば当たり前の話ですね。

 逆に円安になるときですが、過去の歴史を紐解いてみると、円安のなっているときには特徴があります。それはいずれのケースも巨大な投機資金が動いているという事です。ここ20年ぐらいで、大きな円安になったのが2回ありました。
 1つ目は1990年に1ドル=160円になったときです。バブルのはじける直前です。日本の投資家はこの時期、国内の株や不動産、ゴルフ会員権などあらゆる物を買い漁りました。国内の市場が高騰すると、今度は海外に投資先を求めました。そのために日本から海外に投機資金が流出し、急激に円安となりました。ところが、その後、バブルがはじけると、今度は一気に円高に向かっていったのです。
 もう一回は1998年です。このときは日本の低金利が長引くであろう事に注目した欧米のヘッジファンドが為替市場で円売りの投機を仕掛けました。その結果、ドル円は1ドル=150円に近づく程の円安になりました。前に書きましたが、この年、ロシア危機が起き、その影響で市場の流動性が夏以降、極端に縮小してしまいました。その結果、10月の初めにたった2日で20円も円高になってしまったわけです。投機の作り上げた相場が一気に崩壊したわけです。

 かつて、リチャード・クーさんという有名なエコノミストが、「実需の円高・投機の円安」というタイトルの本を出しましたが、まさにその通りです。円という通貨の特徴は普通の状態では円高になりやすく、何かの原因で、投機資金などの資本が円売りに動いたときに、円安に展開になるという特徴があることを覚えておいてください。