中岡望『世界深層レポート』

中岡望『世界深層』レポート

第15回 現実味を帯び始めたGMの倒産(1) (2008/11/26)

GM(ジェネラル・モーターズ)は自動車業界の世界の最大手企業であり、アメリカ資本主義を代表するような企業です。実は、現在、GMは倒産の瀬戸際に立っているのです。GMとフォード、クライスラーは政府の資金援助を求めています。GMのワゴナー会長は「政府支援が得られなかったらGMは倒産する」と語っています。GM、そしてアメリカの自動車業界に何が起こっているのでしょうか。

自動車を巡る日米問題

1952年のことですが、当時のGMの会長チャールズ・ウィルソンは議会証言で「GMにとって良いことはアメリカにとっても良いことだ(What is good for GM is good for the country)」と語ったことは有名です。それほどGMはアメリカを代表する企業でした。またフォードは科学的な経営手法に基づきフォード生産様式という独自の自動車生産システムを作り上げるなど、自動車産業はアメリカの資本主義を代表する産業でした。高級車を持つことはステータス・シンボルであり、多くのアメリカ人の夢でした

そんなアメリカの自動車産業が大きな転機を迎えたのは1970年代の石油ショックでした。アメリカの車は“ガス・ギャズラー(ガソリン食虫)”と言われるほど燃費が悪いものでした。しかし、ガソリン価格が安い時は、誰も燃費効率の良い自動車を買おうとはしなかったのです。しかし、石油ショックでガソリン価格が急騰すると、売れ行きは落ち、逆にそれまで誰も見向きもしなかった日本車が急に注目されるようになったのです。

日本車の対米輸出は急増し、自動車問題が日米の大きな通商摩擦のひとつになりました。80年代前半、日本車の輸入急増でビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)は議会に圧力をかけ、輸入を阻止しようとしました。労働組合も日本車反対運動を展開し、デトロイトでは労働者が日本車をハンマーで壊すという出来事も起こり、日米自動車紛争が大きな話題になりました。日本の自動車メーカーは輸出の台数を自主規制することで、自動車問題は沈静化に向かいます。同時に、日本の自動車メーカーは摩擦を避けるために現地生産を積極的に行うようになりました。たとえば現在、アメリカ市場で売ら得れているトヨタの自動車の40%程度は現地生産されたものです。またアメリカの自動車会社も“トヨタ生産方式”を取り入れるなど合理化を進めていきました。



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