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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第189回 ”口先介入の効果は限定的” (2008/06/17)
先日、バーナンキFRB議長が「ドル安を懸念している」と発言、昨日ポールソン米財務長官もドル安を阻止するため「(為替市場での)介入の可能性も排除しない」と発言をした。アメリカがドル安に対して本格的に懸念を持ち始めてきているようである。
2週間ほど前から繰り広げられているチームアメリカのドル安懸念発言は、週末のG8の場でポールソン米財務長官がドル高歓迎を強調、それをみんなが賛同するということで一旦幕を閉じた。今回の一連の発言はドル安を阻止する一定の効果があったと思う。しかし、ここから更にドルを上昇させる効果があるかといえば、それに対しては疑問を感じざるを得ない。
今回の一連の発言で最も効果があった発言は、ポールソン米財務長官のドル買い介入の可能性を排除しないという発言であった。アメリカは市場主義が原則であり、政府はできるたけ市場に介入をしないというのが基本姿勢である。こうした原則を外れて為替介入の可能性を示唆したことは市場を驚かせるに十分であった。しかし、この神通力も長くは続かない。確かに介入の可能性を示唆したものの、実施するといっているわけではない。あくまでも可能性である。現状では口先介入に過ぎないのだ。こんなことは市場も直ぐに見抜くので、そのうち効果が薄れてきてしまうということである。
効果が薄れてくると再びドルが下落するという可能性はある。そのとき、アメリカ政府としてはどういう手段をとればいいのだろうか?
もし、自分が責任者であれば、どうするだろうかと考えてみた。
今回のドル安懸念は特にユーロ高ドル安を意識していることはいうまでもない。主要通貨での為替の調整を最初に主張したのは、ユーロ圏の人達だからである。ではユーロドルを下落させなければいけない。どうするべきか。最もよいのは金融政策と為替介入をセットで実施するということである。ECBが利下げを実施し、FRBが利上げをしたうえで、ECB、FRBそしてその他中銀共同でユーロ売りドル買いの為替介入を実施するのである。しかし、これは現状では無理である。ECBは利上げをする意思を既に示しており、FRBは自国の景気減速で金利を上げる環境にはまだない。
アメリカも手持ちの外貨に限りがあるために、外貨売り円買いの介入をするのにも限界がある。大量な金額の介入はできない。下手に持久戦に持ち込むと市場に負けてしまう。一発で効果的な介入をする必要がある。さてどうするか。
現状の環境で考えられる最も効果的な方法は、ECBが7月に利上げを実施した直後に、会見でこれ以上の利上げはしばらくやらないと宣言する。それと同時にECBとFRBがユーロドルでユーロ売りドル買いの協調介入を実施、日本はそれにユーロ円でのユーロ売り円買い介入で参加する。これがユーロを下げる最も効果的な方法だろう。
しかし、ここまで大胆な手段を取ることは、かなり困難であろう。ECBは発足以来ユーロ売りの介入を実施したことがなく、どうしても慎重になる。アメリカもここまでのドラスティックな方法には二の足を踏むだろう。第1次口先介入はここまで功を奏しているものの、本当の戦いはこれからである。
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