マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第188回 ”通貨は強いほうがいいのか、弱いほうがいいのか?” (2008/06/10)

先日、バーナンキFRB議長が「ドル安を懸念している」と発言、昨日ポールソン米財務長官もドル安を阻止するため「(為替市場での)介入の可能性も排除しない」と発言をした。アメリカがドル安に対して本格的に懸念を持ち始めてきているようである。

そもそも、国にとって、通貨は強いほうが良いのであろうか?それとも弱いほうがいいのであろうか?
自国通貨が強いということは国の国力が上がるということを意味する。投資資金が国内に海外から沢山流れ込んできているということは悪いことである筈はない。また、通貨が強くなることによって、購買力が高くなることもメリットである。更に言えば、通貨が強くなると、海外からの輸入品の価格が安くなるため、インフレの抑制に寄与するという効果をもたらす。今回アメリカの中央銀行、政府がドル高を望んでいるのは一向に止まらない物価の上昇に楔を打ち込みたいという意思の現れである。
一方、通貨が弱くなると、輸出企業にとっては、メリットが大きい。国際競争力が高まるからである。円安になると日本の輸出企業の業績が上がるということはその典型である。
このメリット、デメリットのバランスで通貨が強いほうがいいのか弱いほうがいいのかということへの結論がでてくる。(もちろん、実際は白黒どちらかという単純な問題ではないが) 

日本はご存知のとおり、輸出主導型経済であるために、政府も円安を好むという傾向が過去からあった。円安に向かうより、円高に向かったときのほうが、神経質になっていたことから、これに関しては異論のないところであろう。
しかし、今後は果たしてそれで正しいのか、これから議論になってくるのではないだろうか。日本は国土も狭く、資源が常に不足する国である。今までは、資源価格が低水準で安定していたため、問題とはなっていなかった。しかし、中国・インドなどの急成長、世界的な人口の急増などにより、資源は明らかに不足してきている。地球の資源は無限ではない。

現在、食料自給率が39%しかないことがあちこちで話題になっているが、それも食料品価格が上昇したために急に注目されてきたが、元々この国の本質的な問題である。また、ガソリン値段も上昇してきている。税金を減らして価格を下げるという手段もあるが、円高になれば、その分輸入価格が下がるので、ガソリンの値段も下がる。
身近なところでいれば、旅行だ。最近ヨーロッパに旅行にいくとあまりの物価の高さにびっくりして帰ってくるのではないかと思うが、これも円安の弊害である。
円安になって、国内の輸出企業中心に景気が拡大し、結果我々の賃金など所得が増えるのであれば、円安になって輸入価格が上昇してもその分を吸収できる。しかし、どうもそういうことも起きていないようである。

企業は円安のメリットを享受しているが、消費者である我々は円安による不利益を被っているということだ。
通貨安は、その国を貧しい国にしてしまう。GDPにしても円ベースでは伸びたとしても、外貨ベースでは目減りをしていってしまう。また、世界的な企業買収ブームの中、円が弱ければ、日本の企業は格好の買収対象となる。通貨安によって割安になってしまうからである。特に中東などの産油国は、技術力の高い日本の企業の買収に非常に積極的なようである。日本も為替政策をどうしていくのか真剣に考える時期に来たのかもしれない。

最近海外でプレーしていたブラジル人のサッカー選手がブラジルの国内チームに戻ってきているという現象が起きているようである。先日、ACミランのロナウドが、今度契約が満期を迎えた後は、ブラジルのチームに移籍していることを計画していると発言して話題になったのはそのいい例である。こうした減少が起きているのは、ブラジルレアルがここ数年ドルや他の通貨に対して急上昇してきていることで、国内チームの報酬に割安感がなくなってきたことが最も大きい。通貨高は国内へサッカー選手も呼び戻してしまっているのである。

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