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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第187回 ”天災は忘れたころにやってくる” (2008/06/03)
昨年から続いているサブプライムローン問題で、2月から3月にかけて、市場がかなり不安定な状態になっていた。しかし、それ以降金融市場全体が徐々に安定し、為替市場も金利差を反映した緩やかな円安傾向が続いていた。これは1-3月期の金融機関の決算が発表が4月中旬で終わり、それ以降1ヶ月以上の間、金融機関の経営状態に関するニュースがでてきていなかったことが非常に大きかったと考えられる。
「のど元過ぎれば熱さを忘れる」とはよく言ったもので、材料が出尽くし、それから時間が経過するとそれまで非常に心配していたことが記憶の中から遠のいていって、段々忘れてしまう。その根本的な問題が解決していれば問題はない。しかし、今回の場合、問題が解決しているというわけではなく、一時的に小康状態に入ってしまっているだけであろう。
まず、1-3月の決算であるが、各金融機関とも記録的な損失を計上していたことは事実である。しかし、実際の損失が3市場の予想を下回ったために、一時的に安心感が広がったに過ぎない。絶対的な数字は非常に悪かった。また、損失が縮小傾向であるというトレンドを見出すこともできず、4-6月の決算に対して楽観できるような結果とはなっていない。
次にこの4月以降のアメリカの経済環境を考えてみる。まず、住宅価格は依然として下落を続けている。これは、住宅市場の低迷を示し、その他の消費に対するマインドを冷え込ませるという影響がでる。更に、それよりも懸念されるのは金融機関の経営に対する影響である。
アメリカの住宅ローンはノンリコース型のものが殆どである。日本で私たちがよく知っている住宅ローンの場合は、個人に返済義務があるので、住宅を手放してもその人はローンの返済を続ける必要がある。しかし、ノンリコース型の住宅ローンでは、ローンの借り手が返済できなくなった場合、担保である住宅を手放せば、それ以上ローンを返済する必要はない。更に、こうしたローンには担保の価値が上昇、つまり住宅価格が上昇して担保余力ができたときに、それを使って普通のローンを組めるというおまけまでついていた。このローン分も借り手は返さなくてもよくなってしまうのが、このローンの特徴である。
もし、これから住宅ローンを借りている人が、家を持ち続けることを放棄したら、貸し手である銀行はローンの返済の代わりに担保の住宅を保有することになる。しかし、住宅価格が下がってしまえば、担保を処分してもローンをカバーすることはできない。そうなれば、また損失が広がってしまうということが起きる。
金融機関のほかの商売も心配材料だ。今年、アメリカでは企業の倒産件数が急増している。金融機関のダメージは大きくなるのは当然である。また、失業者が増えてば、クレジットカードの延滞なども増えてくる。(事実増えている)金融機関は延滞率が高まると貸し出し基準を厳しくする。1つの営利企業としては当然の行動だ。しかし、こうした行動は消費の低迷を招き、景気全体にはマイナスの状態となり、それが金融機関に打撃を与えることになる。いわゆる「合成の誤謬」の状態である。
我々は景気が減速したことによる金融機関がどの程度悪化しているかという点については、まだ回答をもらっていない。それがこれから判明してくる。
6月から7月に決算が発表になる場合、各アナリストが事前に決算の予測をするので、数週間前からいろいろとニュースが出始める。また、最近各金融機関は決算に合わせて資本増強策を発表するのが常套手段となっているが、マスコミはそれを嗅ぎ付けて事前に記事にする。それがやはり数週間前から出てくる。忘れ去られていた「天災」いや「人災」がまたやってくる時期なのかもしれない。
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