マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第186回 ”生活のヘッジとしての外貨投資” (2008/05/27)

今、私たちの生活の中で、いろいろなものが値上がりして、生活にマイナスの影響が出始めている。これは日本だけではなく、世界中で起きている現象である。 
通常の景気サイクルでは、物価が上がる、つまりインフレになってくると、中央銀行は金利を引き締め、消費を抑えることで物価が低下するという流れになるのが一般的である。しかし、今回の物価上昇は原因が特殊であるために、こうしたサイクルになりにくい。今回のインフレの原因は世界的なもの不足である。ここ10年ほど中国、インドなどの世界の4割ほどの人口を抱える人口大国が急速な経済成長をしたことによって、資源などが不足し、資源価格の高騰という現象を引き起こしている。それが世界に広がっているということだ。

中国は、かつて「世界の工場」として、世界中に安い製品を輸出して伸びてきた。その結果中国が世界に「デフレ」をばら撒いていたということがいえる。日本で長くデフレ傾向から脱却できなったのも、こうした中国のデフレ効果がかなり影響していたと考えることができる。
しかし、その中国が今度は世界の資源をむさぼり、その結果資源価格高騰の余波を各国が受けている。つまり今や中国が世界に「インフレをばら撒いて」いるのである。

こうした資源価格の上昇は2つの段階を経て我々の生活を直撃する。まず、最初にこうした原料価格の上昇が直接響いてくるものの値段が上昇する。一番わかりやすいのは、ガソリンの値上げだ。しかし、ほとんどの製品は値上げをすると売れなくなることを懸念して、各企業が値上げをしないようコスト削減などの企業努力をする。結果しばらくの間物価は上昇しない。しかし、コスト削減にも限界があるため、最後はあらゆる消費財の値段が上がりだす。最初の値上げにはかなり抵抗があるが、一度値上げをしてしまうと、なし崩しのように継続的な値上げが始まる。こういう現象を起こす。これが現在、我々が直面している状況である。

物価の上昇が世界的な原因であるため、現在の物価上昇を自分の国だけ解決することは不可能に近い。更に悪いことに、日本という国は多くの物を輸入に頼っている。食料自給率が39%しかないことなどはあまりにも有名である。このように輸入に生活を依存する「物を持たない国」に住んでいる私たちは、世界の物不足の影響をもろに受ける。これに対応するには、「物をもつ国」つまり資源国に投資をしておくことで、生活をヘッジするということも考える必要があると思う。資源価格の上昇は、非資源国から資源国への所得の移転を引き起こすため、そうした国の通貨も上昇することが期待できるからである。

1800年に世界の人口はわずか10億人、1900年にも20億人程度であった。それがこの100年あまり人口の爆発的な増加がおき、今や世界の人口は67億人にも膨れ上がっている。生物学的にいえば、これは人類の大量繁殖であり、その結果起きることは自滅である。そういう悪魔のシナリオのようなことは考えたくはないが、せめて、物が足らなくなってくることに対して、防衛手段を講じておく必要はあるのではないだろうか?

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