- HOME >
- 外為コンテンツ >
- FX・為替レポート >
- マット今井『トレーディングのつぼ』 >
- バックナンバー
マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第179回 ”アメリカのダイナミズム” (2008/04/08)
先週、投資をする際には最悪の状態を想定しておく必要があるという話をした。自分のお金を守るためにはこれはどうしても必要な心構えである。しかし、そうした前提を踏まえた上で、敢えて今回は今後ドルが崩壊するという見方に疑問を投じたいと思う。
今年に入って、ドルの下落がやたらと目立つようになってきたが、実はよく考えてみると米ドルはサブプライムローン問題が発生する前から既に長期的な下落傾向にあった。添付のグラフは、ドルインデックスという米ドルと他の主要通貨との関係を示したものであるが、2002年からドルが長期的な下落傾向に入っていることがわかる。

2002年という年は2つの大きな変化があった年である。 まず、アメリカの経常赤字がこの年から急増し始めている。つまりドルの米国から海外へ流出が拡大しているということである。その結果世界中でドル余りになるので、ドルに下落圧力がかかったわけである。
2つ目は2001年に起きた「9.11」同時多発テロである。この事件を境に米国とドルに対する信認が揺らぎ始め、各国中央銀行が抱える外貨準備を中心にドルからユーロなどへのシフトが継続的に起きるようになった。それもドルの下落の大きな要因となっている。
こうしたドルが下落する環境にある中で、サブプライムローン問題が発生し、ドル下落に拍車がかかってしまったというのが、昨年の後半から今年にかけて起きた現象であったと総括することができる。
サブプライムローン問題発生後は信用収縮による円買いという副作用のため、ドル円でのドル安が顕著となったので、我々日本人にはドルが急に下がったという印象を持たせてしまったが、現実は既に何年間もドルが下がり続けていたわけである。
ただ、極端にドルが下落すると米国企業の国際競争力が増してくるため、経常収支の赤字が縮小することが期待される。実際昨年あたりから経常赤字の縮小傾向が見られるようになってきた。経常赤字の縮小はドルの下落を抑制する効果がある。
もちろん、長い間、基軸通貨としての地位を築いてきた米ドルに世界のソブリンマネー(公的な資金)が偏在していたことへの反動ということで発生しているドルの下落は修正されないので、今後のドルの上昇には限度があると思うが、一方的にドルが下落し続けるということにもやや疑問を感じる。
また、今回のサブプライムローン問題に対する米国の迅速な対応もドルには好材料である。ベアスターンが資金繰りが困難になり、経営危機に陥った際、中央銀行は直接証券会社に資金を提供することができないため、JPモルガンチェースを間に入れて、資金を提供する案を考えた。そして、結局JPモルガンチェース銀行がFRBから融資を受けて、その資金でベアスターンズを買収するという手段にでた。買収して損失がでた場合は中央銀行が負担するというスキームになっているが、これを日本でやったら、マスコミがこぞって金持ち優遇だと批判の嵐となるだろう。
更にポールソン米財務長官は損害がでた場合は連銀の国への納付金を減額してもよいと確約している。実質的な税金の投入である。こういう形で実質的な公的資金注入を行うとは予想がつかなかった。ブッシュ大統領も15兆円に及ぶ経済対策を直ぐに打ち出し、議会の承認を早々と取り付けた。日本ではとてもこんな短時間ではできない荒業をアメリカという国はいとも簡単にやりのけてしまう。やはり農耕民族と狩猟民族の違いなのであろうか。
もちろん、今後米国経済が更に減速し、金利もまだまだ下がることが予想されるので、ドルには当面下落圧力がかかるのは当然である。しかし、もう少し長期的な視野に立つと皆が懸念するほどドルが下落するということに対してはやや懐疑的な見方を持ってしまう。それよりも、将来の財政状態が危うい状態にある中、自国の中銀総裁もろくに決められない国の通貨のほうが長期的には危ないのではないかと思うのは私だけだろうか。
- ●当社提供のレポート類について
- 本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスにより利用者の皆様に生じたいかなる損害についても、外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承願います。





