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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第174回 ”爆弾発言” (2008/03/04)
先週末、アメリカの中央銀行FRBのバーナンキFRB議長が「これからいくつかの銀行が破綻するだろうと」という衝撃的な発言をした。これは委員会での質問に対して答えたものであるが、これには正直驚きを隠せなかった。中央銀行の総裁は市場を安定させるということが任務の1つである筈である。しかし、その対場にある人が自国の銀行が破綻する可能性があると発言するということは極めて異例である。しかも、彼は「不動産に多額の融資をしている特に新規の銀行が危ない」と市場関係者に一定の銀行を特定させるような発言もしている。これに対して、質問者側からは「困難な立場にあるにも関わらず、率直な意見を述べていただいたことに敬意を表する」というコメントがあった。本当にそうだろうか。
昔、私が銀行のディーリングルームに入ったときに、当時のチーフディーラーから「ママの貯金」という話をよく聞かされた。私の記憶が正しければ、この話は、ある貧しい家庭の母親が自分大子供達を育てるときに、余計な心配をさせないように「ママには十分貯金があるから大丈夫だよ」と言って、お金が全くないにも関わらず子供達に余計な不安感を与えないように泰然とした態度をとっていたという内容の話であったと思う。当時のチーフディーラーは、リーダーたるもの周囲に余計な動揺を与えるものではないと言いたかったのだと思う。
現在、米国市場は非常に不安定で微妙な環境下にあるのは誰もが認めるところであろう。こういう状況において、一国の中銀総裁が自分の銀行がいくつか潰れるかもしれないとあっけらかんと発言したことを「率直な意見」と敬意を表している場合だろうか。私は正直疑問を感じる。こんなことをいってしまえば、きっとFRBはある特定の銀行が経営危機に陥っていることを知っているに違いないという余計な憶測を生むだけである。そして、そうした憶測によって、銀行の取り付け騒ぎが起きるかもしれない。混乱というのは往往にして人間の不安心理からくる喧騒が原因となる場合が多い。そのため、混乱が必要以上に広がってしまうこともしばしばある。業界用語で言えば「オーバーシュート(行き過ぎ)」である。こういう事態が起きると不の連鎖が発生し、問題が実態より深刻化してしまうこともよくある。だから、そういう混乱を起こさないようにわざと言葉を選ぶというのも為政者など人の上に立つ立場の人には必要な資質となってくるのだと思う。
さて、それはいいとして今回の発言で市場は再び混迷状態に逆戻りしてしまった。そうなると円相場も再び不安定になってくる。不安定な相場は正直言って難しい。やはりトレードは確率の勝負である。できるだけわかりやすい賭けを見つけ、それに賭けるというのは常套手段である。現在、最も確実なことはアメリカの経済が減速していくということである。つまり。為替市場ではドルが下落していくという可能性が最も高いということである。もちろん、世の中には100%ということはない。外れることもしょっちゅうある。しかし、長期間に渡って儲け続けるには、如何に確率の高そうなシナリオを見つけ、それに賭ける(ベットする)ことが一番の近道ではないかと思う。
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