マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第172回”チャイナ要因がドル円の頭を抑える” (2008/02/19)

2004年から2007年前半にかけては、世界経済全体の拡大と、中国・インドなどの新興国台頭による資源価格の上昇からくるインフレ圧力によって、主要国では総じて政策金利の引き上げが継続的に実施されてきた。米国は2004年から2006年にかけて、政策金利を1.00%から5.25%にまで引き上げ、日本も2006年に政策金利を引き上げ、それまで6年に渡って継続してきたゼロ金利政策にピリオドを打った。ユーロ圏、イギリス、オセアニア各国、カナダなど主要国は軒並み金利を引上げてきた。しかし、昨年夏にサブプライムローン問題が発生してからは環境に大きな変化が現れてきた。

米国は9月から金融緩和に転じ、今年1月には合計1.25%の利下げという大胆な利下げも実施した。米国経済の影響を多大に受けるカナダも米国の金融緩和に歩調を合わせる形で金利の引下げを実施してきている。度重なる利上げによって住宅価格が頭打ちとなってきているイギリスは「第2のアメリカ」となる可能性があると懸念されているが、昨年12月に0.25%の金融緩和を実施し、今年2月にも追加利下げを行った。このように金融緩和に転じた国がある一方で、中立、或いは金融引締めの姿勢を維持している国もある。

ユーロ圏はインフレ率が高止まりしている。ユーロ圏も景気の減速が懸念されているものの、欧州中央銀行(ECB)はインフレの抑制を優先する姿勢を崩しておらず、世界の金融市場が安定すれば、再び金利の引き上げを実施する可能性もある。

オーストラリアでは今月5日に政策金利が0.25%引上げられて7.00%となった。資源価格が依然として堅調であることを背景にオーストラリアの経済は拡大を続けている。更に、好景気によってインフレ率も上昇傾向に歯止めがかからない。今後も金利の引き上げは当面継続的に実施されていく可能性が徐々に高まってきた。

ニュージーランドも中国を初めとするアジア諸国の農産物需要が拡大を続けている恩恵を受けて、景気は依然として好調である。現在、金利の据置きを続けているが、物価が再び上昇傾向に入ってきているので、いずれ金利の引き上げを実施する可能性も十分ある。これまでは、米国のサブプライムローン問題にばかり注目が集まっていて、こうした各国の金融政策はあまり重要視されていなかったが、今後再び市場の注目が各国の金融政策に戻ってくるという可能性は非常に高くなってくる。各国のファンダメンタルズ、金融政策をしっかりとフォローしておきたいところである。

ところで、もう1つ注目の国がある。中国である。19日に発表された中国の消費者物価指数1月分は前年同月比7.1%の増加となった。上昇率は1996年9月以来実に11年4ヶ月ぶりの高水準となった。特に食品価格の上昇が18.2%と顕著である。中でも豚肉が58.8%、食用油類が37.1%と大幅な上昇を見せている。貧困層を多く抱える中国では、食品価格の上昇は非常に深刻で、日本の比ではない。中国政府も真剣にインフレ抑制に取り組まなければいけない状況に追い込まれている。手段として考えられるのは、金融の引締めと、人民元の切り上げである。人民元は米ドルに対して1月に1.7%近く上昇した後は、2月に入って膠着状態が続いていた。しかし、昨日から再び急激に上昇を始めている。急上昇して少し揉み合う、そしてまた急上昇してまた揉み合う展開が続くと推測される。おそらく1年間では人民元は米ドルに対して最低でも10%程度は上昇する可能性が高いとみている。

本来、人民元と円相場には相関関係はない。しかし、米大統領選挙の年になるとやや市場関係者の見方が変わってくる。米国経済が減速している中で、アジアとの貿易不均衡問題は非常に神経質なテーマとなってくる。その中で、人民元が上昇してくると円にも上昇圧力がかかってくるという影響がでてくる可能性もある。今年に限っていえば、人民元の上昇がドル円での円安を阻止する展開が見られるかもしれない点は考慮に入れておきたい。


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