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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第171回”Japan Nothing” (2008/02/12)
先週、ロンドン・ニューヨークに出張に行って来た。サブプライムローン問題の状況調査に行ったのだが、非常に悲観的な見方が多かったことに驚いた。また、米国経済が低迷しても中国・インドなどの新興国が伸びることで相殺されるので、世界経済全体は安泰であるという所謂「デカップリング論」を支持する人もいなかった。世界経済全体に対しても比較的悲観的に見ている人が多いという印象であった。今年は世界中の株式投資家にとっては辛い1年となるかもしれない。
さて、今回は相場のことではなく、1人の日本人として感じたことを紹介したいと思う。 まず、欧米の日本に対する関心が非常に薄れているという点である。 1つの例を紹介する。或る有名なヘッジファンドの領袖に日本株のことを聞いたときの話である。彼の言い方はこんな感じだった。「日本株?興味全くないね。もう2年ほど日本株は全くやっていない。以前あるセクターでいろんな国の株を買っていたけど、上がらなかったのは日本企業の株だけだった。このときから日本は諦めた。大体、中国、インドなどこれから伸びていく国が周辺にこんなにあるのに何故日本に投資をしなければいけないんだ。それに何故、日本の企業は儲けることにもっと貪欲ではないのか解ができない。」
他の人に会っても、以前は日本経済に関心を持っている人が多かったが、今回は儀礼的に一応日本経済のことを聞いておこうという姿勢が見え見えだった。更にある民間金融機関のトップには、中国はこれから凄く伸びると思っているので、重要視しているけど、日本も今のところはまだ世界2位の経済大国なので重要ですよね」と皮肉とも取れる言い方もされた。(もちろん、紳士的に軽くジョークを飛ばしたということなのだろうが)
また、別のヘッジファンドのトップは、何故日本は東京をアジアの金融センターにするということを真剣に考えないのだろうと疑問を投げかけてきた。彼によると、現在北京や上海は環境問題がひどすぎて、外国人はとても住む気にならないと思っている。香港も同様である。シンガポールは投資家、運用者に非常にいい環境を提供してくれるが、何せ国が小さいし、それに地理的にも他のアジアの主要国からやや離れている。(ちなみに欧州の金融センターは大国イギリスのロンドンであり、米州の金融センターは大国米国のニューヨークである)。シンガポールはスイスのチューリッヒのような存在にはなっても、アジアの金融センターとしてやっていくには無理がある。その点日本は大国であり、東京は金融センターになる要素は十分に持っている。しかし、日本は真剣にそういう国策を持っているようにとても見えない。税制での二重課税問題もあるし、様々な規制もありすぎる。英語の環境も他の国に比べて劣っている。
こういう意見であった。耳の痛い話である。私も彼に全く同意見である。今、日本では格差が問題となっているが、一方で我々日本人はグローバル経済の中で生きているわけで、国際競争力もつけなければならない。
金融税制を簡素化して、海外の金融機関、運用機関が進出しやすい環境を作る。或いは法人税を主要国並に下げる。こうしたことをやりながら、一方で格差問題の手当てのために、社会保障を弱者に厚く、金持ちには薄い体系に変えるといったような全体的なデザインをもう書いて早急に実行していかないと本当に「Japan Nothing」になるなと危機感を感じざるを得なかった。
また、教育も重要である。英語を準公用語にするぐらいの思い切りは必要で、他の教育ももっと厳しくしなければいけない。例えば、ヘッジファンドでは運用手法が非常に高度化してきており、元々は有名な大学でMBAを採用していたが、今は経済学ではなくて、大学院で数学の博士号を取得した人を採用している。この中には、インド人、中国人、パキスタン人など沢山の人種がいるが、残念ながら日本人は殆どいない。ゆとり教育などと馬鹿なことをやっているうちに他の国の教育水準はドンドン伸びていってきたのを身に染みて感じた。
それともう1つ、これはロンドンで感じたことだが、ともかく円が安すぎる。円で給料をもらってロンドンで暮らしている駐在員の生活は決して楽そうではない。FXをやっていると、円安になるとスワップも入って、しかも為替売買益も儲かっていいように感じる。しかし、円が安くなるということは自分の資産の価値が落ちるのであるから私達の暮らしが貧しくなるということである。
円が弱いと、海外からの「人物金」が入ってこなくなる。プロ野球だって、助っ人外人を雇ってくれなくなる。日本の優秀な人材もドンドン流出していくだろう。円が弱くなるのを喜んでいる場合ではないのである。 確かに、足元では、円キャリートレードの解消による円高ということで、円高が進んできた。しかし、経済大国からすべり落ちることで急激な円安になるリスクは十分にある。GDPの160%もある国の借金が膨れていけば、円はそれこそ暴落するかもしれない。そうなったときは海外投資で儲かったという話などが取るに足らない問題になってくる。しっかりした国の枠組みの中、安定した経済の拡大に伴った強い円をこの国は将来実現していかなればいけないとつくづく思った。
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