マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第168回 ”リスクマネー収縮による円高” (2008/01/22)

昨日の金融市場は今年1番の荒れ相場となった。日経平均株価は先週末比535円安の13325円となり、1日の下げ率は約3.9%に達した。しかし、これはまだ軽症なほうで、他国の株式市場は日本株上の下落となっている。例えば、香港のハンセン指数は、先週末比5.5%の下落、インドのセンセックス指数は一時10%以上の下げ幅となり、引けも先週末比7.4%安と過去3年半で最大の下げ幅となった。その他のアジア株式市場も大幅な下落となり、その後の欧州市場でも欧州各国の株式市場が激しい下落を記録した。世界全体で見ると2001年の「9.11」同時多発テロ以来の大幅な下落である。

先週末のブッシュ大統領の景気対策にも関わらず米国株式市場が崩れたことが引き金を引いた形となった。いよいよ米国の混乱による影響が世界全体に広がってきたわけである。為替市場では、株式市場の混乱によるリスクマネーの縮小により金利差を狙った円キャリー取引の解消が発生、その結果円全面高となっている。

現代は資本のグローバル化現象により各国の資本市場が密接に繋がっている。1つの金融市場で混乱をきたすと、投資家のリスク縮小の動きが世界の金融市場全体に影響を与えるという現象は昨年も起きていた。今回は、こうした負の連鎖が本格化してきたということであろう。米国の株式市場が落ち着かない限りこうした傾向が続く。FRBは既に大幅な金融緩和を示唆しており、ブッシュ政権もGDPの1%程度の景気対策を発表した。それにも関わらず金融市場の混乱はむしろ拡大している。政府、中央銀行は更なる対策を講じる必要があるが、今のところ直ぐに何かがでてくる様子はない。混乱はまだ続く可能性が高いと言わざるを得ない。

ところで、最近デカップリング論なるものが盛んに論じられている。米国経済が減速しても、中国、インドなどの急成長の恩恵で他の国の景気は堅調さを維持するという理論である。筆者はこうした考え方に疑問を感じざるを得ない。確かに、中国やインドが急激な成長と遂げてきたことで、米国経済の世界におけるシェアは相対的に低下した。しかし、2006年の世界のGDPを比較してみると、世界全体に占める米国のGDPは約28%となっている。しかも、米国GDPの7割は消費で構成されている。海外からの輸入を最大消費国である米国の景気が低迷しても、他の国に影響を与えないというのはあまりにも乱暴な議論である。米国経済の減速により他影響を与えることになる。

ここ数年、世界経済の好調さと、日本の低金利をいう2つの条件の下、米ドル以外の主要通貨に対して継続的に円安が進行してきた。しかし、世界経済全体が減速するとこうした前提が崩れる。日本の金利の低下余地が低い中で、各国の金利が低下していけば、金利差縮小で益々円高圧力がかかる。今年は、ここ数年の大きな流れの反動が起きる可能性が高い年であるという認識が必要だと考えている。


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