マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第167回 ”当局者の発言から相場を読む” (2008/01/15)

為替市場では、様々な政策担当者の発言に影響を受けることがしばしばある。通貨政策に関する権限を持つ当局(日本では財務省)の要人、財政政策に関する権限を持つ政治家なども発言も時に大きな影響を与えるが、中央銀行の関係者の発言もとても重要である。

これは、金融政策を決める当局が現状のマクロ環境をどうみていて、今後金利をどうしていくつもりかが、そこからある程度読み取れるからである。

通常、政府関係者や中央銀行の関係者はその影響力の大きさを考慮するとあまり悲観的な見方を示さないものである。本当はかなり悲観的に見ていたとしてもそのまま真正直に発言してしまうと、投資家などの動揺を招き更に事態を悪化させる可能性があるため、実際よりも楽観的な表現をする傾向になるのである。従って、発言の内容を聞くときはやや割り引いて考える必要がある。

また、若干でも悲観的な見通しを示している場合は、相当悪いのだろうなと想像することも重要である。また、いろいろな発言の中に意図的なものや、本音が隠されているかもしれないのでそれも考える必要があるだろう。こうした観点をふまえて、最近の日米欧の中央銀行トップの発言を見てみることにしよう。

最初はバーナンキFRB議長である。彼は最近の講演の中で以下の通り発言している。

「景気拡大見通しとそのリスクの最近の変化を考慮すると、一段の金融緩和が必要となる可能性は十分にある。」
「景気てこ入れと下振れリスクに対する十分な保険を提供するため、必要に応じて実効ある追加行動を取る用意がある」

先ほどの原則から考えると、バーナンキFRB議長がここまで景気に対するリスクをはっきり言っているということは、本当は彼は米国経済に対してかなり悲観的なのかもしれないなという想像が成り立つ。また、ここまではっきり利下げの可能性を示唆するのは異例であり、そこには利下げを示唆することで市場を安定させたいという意図を感じる。何とか市場が動揺することによるマイナスの波及効果を何とか止めたいと考えているのであろう。逆に言えばそれだけ、危険な状態にあるということなのかもしれない。

こうした、発言から、FRBは今後かなり大胆な利下げを実施するかもしれないということが予想できるため、当面ドルが下落するリスクは高いと考えることができる。

次にトリシェECB総裁の発言を見てみよう。

「物価安定に対するリスクが現実化しないよう、政策委員会は引き続き先制的な行動に出る用意がある」
「物価安定への上振れリスクがあるとした我々の判断は完全に確認されている。」
「ユーロ加盟国15カ国の景気は大幅に拡大、約2%という潜在成長率と同程度の大幅な成長になる見込みである。」
「我々は既に下振れリスクがあるとも指摘している」

サブプライムローン問題による欧州経済減速のリスクに関して本当は認めていながらも、景気に対して強気の姿勢を崩していない。ここから、(やや極端ではあるが)景気拡大よりもインフレの抑制のほうが私にとっては重要なのだという意思が伝わってくる。こうした姿勢から当面ユーロの金利は高止まり、場合によっては利上げの可能性があると考えられ、当面ユーロは強そうだと想像することができる。

最後に福井日銀総裁、最近の発言。
「世界経済についての不確実性がある」
「国際金融資本市場においては、米国のサブプライム住宅ローン問題に端を発した不安定な状態が続いている。」
「海外市場における問題の一段の広がりに伴って、わが国金融機関への影響も当初の想定に比べて拡大している」
「住宅投資の落ち込みなどから減速しているとみられるが、基調としては緩やかに拡大している」(先行きは)当面減速するものの、その後緩やかな拡大を続けるとみられる」
「経済・物価情勢を丹念に点検しながら、金融政策を適切に運営することを通じて、物価安定下での持続的成長の実現に引き続き貢献していく」

物価は上昇していくそうなのだけれども、米国経済が低迷してしまうと日本経済も失速するため、金利を上げることもできない。当面は様子を見るしかないという実に玉虫色の発言であるが、そこから日銀の苦しい立場を垣間見ることができる。当面、円金利が相場の材料になることはなさそうだ。

以上を考えると、現状ユーロを買ってドルを売るのがマクロ的にはよさそうだという基認識を持つことができる。これはあくまでも私の私見ではあるが、こんな風に当局者の発言を聞いてみると予想をする上で役立つのではないかと思う。


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