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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第165回 ”グリーンスパンの教え” (2007/12/25)
この週末グリーンスパン元FRB議長の混乱の時代を読んだ。グリーンスパン氏は元々企業コンサルタントであったために、経済のミクロ部分からマクロの現象を予測するというアプローチを得意としている。これは非常に興味深かった。また、政府による規制が如何に経済を停滞させるかと切々と説いており、ヘッジファンドの必要性も強調するなど生粋の自由主義経済推進者であることがよくわかる。2冊に渡って、多くのことに言及しているので、全部を紹介することはできないが、今後の相場展開を考えるに当たって示唆的なものを2つ紹介したい。
まずは、政府の役割と性質についてである。前述の通り、生粋の自由経済主義者であるので政府はできるだけ規制をしないほうがいいという主張をしている。それと同時に政治家がポピュリズムに走る傾向がある点を危惧している。
レーガン政権時代財政赤字と経常収支の赤字、所謂双子の赤字に苦しめられていた米国であるが、クリントン政権のときに、単年度財政黒字に転換した。これに関しては景気回復による税収の増加という要因が大きかったが、それだけで説明できるような改善ではなかった。(グリーンスパンは株価が上昇したことによるかさ上げと結論している)。彼は財政黒字が一時的なものである可能性が高く、これを累積債務の返済に充てるべきとの見解を持っていたが、国はこれを減税などで国民に還元するという選択をした。グリーンスパンはこれを政治のポピュリズムとして批判している。政治家は国民の機嫌を取るような政策を取りがちであるということである。(その後、実際は彼の予想したとおり、財政は再び赤字に転落している。)
ここに日本へのヒントがある。与党自民党は橋本政権以来財政の健全化を国の大きな課題としてきた。小泉政権ではこれを更に推進した。その後の安部、福田政権もその路線を踏襲している。しかし、実際今回の福田政権の2008年度予算案を見ると、明らかに財政健全化から後退している。赤字国債の発行額こそ25兆円余りに抑えられているが、これは所謂財務省埋蔵金によるお化粧である。また弱者救済のため、農業への補助金などを復活している。明らかに選挙対策である。財政再建から大きく後退してしまった。
今後日本は少子高齢化が加速し、人口減少という大変な問題に直面していく。こうした現象の中で経済の拡大を維持しようをすれば、生産性を高めるしかない。しかし、生産性を高めるためには、自由経済を推進し、競争の社会を作りだす必要がある。格差社会の拡大を社会問題としてとらえている現在の日本社会では、こうした政策の推進は国民の同意を得られない。どうしても政治家はポピュリズムに走ってしまう。
また、米国と日本の抱える問題は高齢化である。またそれによる社会福祉の負担増である。これを税金でやろうとすると、国の競争力が低下し、結局は国際競争力の低下で税収も減少し、最悪の結果となる。民間の保険を活用するしか方法がないというのが彼の結論である。よく、高福祉で成功している例として北欧諸国のケースが取り立たされるが、それは経済規模の小さい国での話しである。実際、同様の政策を取っていたイギリスは経済の低迷に陥り、サッチャー政権時に大幅な規制緩和を行ったことで復活した。また、ドイツ、フランスも最近大きな政府での運営に限界がきてしまい、アメリカ型の市場経済に移行している最中である。
こうした中でも、日本政府は将来のビジョンを描くことなく、足元の対応に追われる毎日である。「大きな政府」なのか「小さな政府」なのか、はたまた「第3の道」なのか、この国の目指すところは全くはっきりしない。こうした中途半端な状態は最悪の結果を招く可能性がある。
この仮定の下に立つと、短期的な動きは別として、長期的には円の価値は凋落する。つまり極端な円安が訪れるということである。
極端な円安になれば、輸出産業が強くなるという意見もあるかもしれない。しかしそれは単に価格競争力がつくというだけの意味である。安い価格を武器として輸出を促進するとすれば、それは先進国から新興国への後退を意味する。そんな国家になっていいはずはない。
政府の今後の行動にかかっているが、現状の低レベルの政治体制を見ているとそうなる可能性はかなり高いと結論付けざるを得ない。我々日本国民もこうした事態に備えて、外貨資産をしっかり保有しておく必要があると実感した。
もう1点は現在の中国の問題である。中国はまた、多額の経常黒字を維持している国が自国通貨の上昇を阻止するために、為替市場で外貨を吸い上げることをした場合、市中に自国通貨を垂れ流しにするわけであるので、当然インフレ圧力がかかる。これを阻止するためには垂れ流した資金を吸収する必要があるがそれには債券市場が充実している必要がある。債券と発行して資金を市場から吸収するのである。しかし、その手段を持っていないところは、資金を吸収することができない。従って、今後中国はインフレ抑制のために人民元の上昇を容認せざるを得なくなるということである。私達日本人もいろんな手段を使って、中国の資産を増やす努力をしておく必要がありそうだ。
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