マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第161回 ”人民元上昇圧力” (2007/11/27)

今週25日からフランスのサルコジ仏大統領が中国を訪問している。27日にはトリシェECB総裁らが率いる 欧州連合の幹部が北京を訪問する。サルコジ仏大統領は既に人民元の切り上げスピードを上げるように 中国に要請した。

また、トリシェECB総裁、ユーロ圏財務相会議で議長を務めるルクセンブルグのユンケル首相兼財務相、 欧州委員会の経済・通貨担当のアルムニア委員は、人民元が弱いままだと保護主義的な傾向を巻き起こ す可能性があることを訴え、人民元の切り上げを中国側に強く要請する方針であるといわれている。また、 12月12日には米国のポールソン財務長官が訪中する予定となっているが、ここでもまた人民元の切り上 げが強く要望されることになるであろう。

現在、為替市場では世界中の通貨に対して歴史的なドル安傾向が広がっている。しかし、人民元の為替 相場は中国の通貨当局が管理しているために、ドル安人民元高の進行スピードが他の通貨に比べて遅 い。元々人民元の現在の水準は20%から30%近く人民安であるとの批判がある中で、今回の世界的なド ル安の流れによって人民元の弱さが際立ってしまっている形となっている。

中国は急成長して、国民の所得水準も確実に上がっているが、それでも依然として国内消費は小さく、経 済成長は主に海外への輸出に依存している。あまりこの問題がこじれると中国にとっても国益を損なうとい う判断がでてきてもおかしくない状況になってきた。 また、中国は来年北京オリンピックを迎えるため、国 際社会との軋轢はできる限り避けたいという事情もあるのではないかと感じる。

中国の国内事情としては、人民元を急速に切り上げるのは景気を腰折れさせるリスクがあったり、農業保 護の観点からも簡単には応じにくいという事情があった。しかし、ここのところ国内でインフレが加速してい るため、ある程度通貨を強くすることを容認すべきであるという意見も中国国内に出始めている。国内のム ードも少しずつ変わってきたようにも見える。

人民元は2006年には米ドルに対して年間で3%強の上昇に留まった。2007年は11月27日現在で年初来 5.3%程度上昇しているので、切り上げのスピードは昨年に比べて確実に速まっている。しかし、2007年の 為替相場を見ると、例えばユーロは米ドルに対して12%以上上昇しており、その結果対ユーロに対しては 人民元はむしろ今年は人民安となっているのである。従って、この程度の上昇スピードでは当然欧州を中 心とした国際社会が満足する筈はないと考えるのは極めて自然である。

こうした事情を考慮すると、おそらく中国は今後人民元のレートを対米ドルで年10%程度の上昇スピードあ たりまでは容認してくるのではないかと個人的には考えている。人民元は上昇すると批判の対象が今度 は円に向けられてくる可能性もでている。そうなると円にも上昇圧力がかかり円高が加速する可能性もで てくるわけである。円相場を考えるに当たっては人民元の動向にも注目しておく必要がありそうだ。

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