マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第160回 ”サブプライムローンの余波” (2007/11/20)

「サブプライムローン」この単語を今年一体何回聞いたかわからない。しかし、それでも今現在も私達投資家はこのサブプライムローンの亡霊に悩まされ続けている。

そもそも、このサブプライムローンは低所得者向けの住宅ローンであり、住宅ローン全体に占める金額も1割にも満たない。本来こうしたものが底の深い米国経済の屋台骨を揺るがしてしまうということ事態が本来は有り得ないことであった。しかし、錬金術師のアメリカ人はこうしたローンを使って複雑な金融商品を作り出し、それがいかにも「お金のなる木」のようにお化粧して世界の投資家に売りつけた。こうした錬金術によって住宅価格が上昇し続け活況を呈しているときには投資家に安定的な利益をもたらした。しかし、こうした商品はひとたび歯車が狂いだすと、激しい逆流を起こす。そして投資家は大きなダメージを負ってしまう。人間は本当に学習能力がないのかもしれない。

さて、この問題に関しては2つの点を注意しておかなければならない。

1つ目は、サブプライムローン関連の損失が最終的にどの程度になるかという点である。この証券は流通市場がないために投資家は売却したくても売却ができない。簡単にいえばロスカットができないのである。ロスカットができないということは、損失を確定できないということなので、いくら各金融機関や投資家がその時点の損失を計上しても、また追加損失がでるのではないかという不安が残る。

事実、今回の混乱で最も大きな損失を被っているシティグループは7-9月期の決算で64億ドル(約7000億円)の損失を計上したが、10-12月には更に110億ドル(約1兆2000億円)の追加損失が生じる可能性があることを明らかにしている。しかし、それでもまだ証券は保有したままであり所詮評価損でしかない。実際9月の時点でシティグループにはまだ547億ドル(約6兆円)の関連証券保有残高が残っている。

そのうちの2兆円程度が損失計上されているだけということであれば、最悪更に4兆円も損失は追加される可能性が理論的にはあるということになる。この問題は依然として底が全く見えない。これが投資家を不安にさせてしまうのである。今後、住宅市場が更に悪化すれば、こうした証券も価値も低下する。格付け会社がこれらの証券の格付けを更に引き下げれば、価格の下落に拍車をかける。正に負のスパイラルである。

2つ目は、サブプライム担保証券以外への影響の拡大である。現在市場で関心を集めているのは「モノライン」と呼ばれる米国の金融保証専門会社への影響である。これらの会社は地方債などを保証するために設立されたものであるが、最近ではサブプライム担保ローン担保証券のような証券化商品の保証業務も行っている。こうした保証会社が今回の混乱で多額の損失を被った場合、こうした保証会社自体の格付けが引き下げられる。そうなると保証されていた債券の信用力も当然低下するので、価格は下落し、購入している投資家はまた損失を被ることになる。

また、今後、新規の発行も滞りがちになり、企業や自治体などの資金調達に支障をきたすことになる。そうなると米国経済は機能停止状態に陥ってしまうかもしれない。これはあくまでも最悪の事態であるので、確率は低いかもしれないが、世の中には「絶対」は存在しない。環境が不透明なときは、はっきりするまで様子を見るというのも賢明な選択であるということができるのではないだろうか?

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