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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第157回 ”議論の整理” (2007/10/30)
最近、年末までの相場見通しとか、来年の相場見通しに関しての、取材等を受ける機会が増えてきた。丁度、ボーナスシーズンに向けての特集が組まれる時期でもあるので、季節的な要因でこうした取材が増えてきているのであろう。しかし、それも明らかに昨年よりも回数が急増しているので、それだけ外国為替というものに注目が集まってきたことの表れではないかと思う。
さて、こうした予想をするときに、ややピントの外れた論理展開が行われているような気がしてならない。それはドル安=円高という論理展開である。
「来年は100円まで円高が進む」「それは米国経済が今後も減速していくからである」といった表現を沢山見る。確かに、これだけを見れば論理的には違和感はない。しかし、これは本来「来年のドル円は100円までドル安が進む」といったほうがより正確ではないかと思う。ご存知のとおり、ここ数年のトレンドはドル安・円安・その他通貨高という構図になっている。ドルは米国への投資家の信認が低下し続けていること、最近は景気の減速が鮮明になってきていることなどで下落傾向にあり、円は低金利を嫌気して日本の投資マネーが海外流出していることが大きな背景となって安くなり続けている。またその一方で、欧州、新興国、資源国などの景気が堅調であるために、その他の通貨は上昇を続けている。各国間でのファンダメンタルズの格差が鮮明になってきてこうしたトレンドができてきたわけである。
その間、ドル円は110-120程度のレンジを中心として上下動を繰り返している。弱い通貨もの同士であるために綱引き状態に陥っているということなのであろう。
さて、先ほどの件に戻ろう。米国経済が減速し、金利が低下してくれば確かにドル円ではドル安円高が進行するかもしれない。しかし、それはドル安要因によるものであって、円高要因によるものではない。従って、ドル円で円高になっていっても、他の通貨に対しては円安が進むという現象が起きても全く不思議ではない。さて、こうした状況になったとき、この相場を円高相場と呼んでもいいのだろうか?私は違うと思う。このケースでは、ドルは対円だけではなく、他の通貨に対しても下落しているはずであり、円高相場ではなく、ドル安相場なのである。為替市場はいろいろな通貨間での交換レートであり、米国経済の動向を背景にドル相場を予測するのであれば、こうした論理展開は正当なものである。
しかし、円相場が円高になるのか、円安になるのかを議論するのであれば、基本線としては、円に関する要因がどうなっていくかという論点から予想がなされるべきである。日本の投資家の動向が今後どうなっていくのであろうか? 日本の物価動向、景気動向は今後どう展開していくのであろうか?日銀の金融政策はどうなっていくのであろうか?こうしたものを基本軸として予想をしていくというのが本来あるべき姿である。
また、例えば、ユーロ円の動向を予想する場合、当該国はユーロ圏諸国と日本であり、そこには米国は関係ない。為替レートは何もドルだけではないので、円相場を論じるときはいろいろな国の状況も考慮に入れるべきである。
雑誌の特集などで、こうした点をしっかり整理するのがなかなか難しいことは理解しているが、あまりに単純なドル円下落=円高といった旧来の考え方はもう捨てる時期ではないかと思う。
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