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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第153回 ”通常相場とパニック相場” (2007/10/02)
ここのところ、株式市場、外国為替市場などの各市場が安定してきた。7月8月の激しい動きが嘘のようである。そこで今回は市場の動きということについて考えてみたい。
市場の動きというのは常に変化するものであるが、非常に大きく大別すれば、通常相場とパニック相場に分かれると思う。通常相場では、投資家は冷静な判断に基いて行動を起こすが、パニック相場になると恐怖心などから全く合理的ではない行動を取る。現在、米国株式が下落すると円高になるという通常の理屈では説明できないような相関となっているのも、パニック相場の余波であろう。
パニック相場というのは様々な要因で発生する。まず、政治相場がその代表であろう。G7などで為替政策にある合意がなされると、投資家はその合意事項に敏感に反応する。これだけ投資マネーが膨張している状態で、政府が市場をコントロールできるかどうかは非常に疑問であるが、投資家は過去の経験則から無条件にそういう合意に反応してしまう。いわばイメージがもたらすパニック相場である。
また、戦争やテロなど不測の事態が発生したときも一時的なパニックが起きるときがある。しかし、この手のものは非常に一過性で終わる可能性が高い。
現在の市場環境で最も大きな動きとなるのが、金融市場の混乱によって発生するパニック相場である。今回の「サブプライムローン危機」もこの金融市場の混乱によるものであったことはいうまでもない。
こうした金融市場混乱によるパニックの中で、最も危険なのは金融市場の中で信用不安が蔓延したときである。金融市場は各金融機関・或いは投資家がお互いに資金の供与をすることで資金の還流が潤滑となるという機能を持って成り立っている。そのため、この資金の流れが止まってしまうとすべての前提は崩れ、市場が大混乱に陥る。こうした混乱はしばしば曖昧な不安心理によって拡大することが多い。一旦混乱が起きると、人はともかくリスクを回避しようとできる限りの安全策をとりがちである。金融機関も投資家も資金供給をすることに慎重になることで、市場が縮小し、混乱が更に拡大してしまうのである。
少しケースは違うが個別の例で考えてみたい。例えば或る銀行が危ないという噂が流れると預金者が不安に駆られ一斉に預金を引き出す。また、他の金融機関もとりあえず、様子を見ようとその銀行に対する資金提供を控えるようになる。そうなると、それが全くの噂であったとしても、噂を人々が信用してしまったことで、その銀行は資金不足に陥り倒産してしまう。このような状態になると、本来倒産するはずがない銀行が破綻に追い込まれるという異常事態が発生してしまうということが起き得る。
FOMCでは8月17日に公定歩合の0.5%引き下げを決定し、翌月の18日にはFFレートの0.5%引き下げを断行した。これは実態経済に配慮してという面ももちろんあるが、それ以上に市場を沈静化させるためのアナウンスメント効果を狙ったのではないか。事実、利下げをきっかけとして、各金融機関も通常時のリスク管理体制に戻ってきている。
今回、もちろん非常に大きな混乱であったが、あそこでFOMCが迅速な行動をしなかったとしたら、おそらくもう一段の混乱が生じていたであろう。そういう意味においてはFOMCでの決定は非常に意味のあるものであった。
今後もパニック相場はやってくるであろうが、パニック相場では市場は暴走する。それを止めることができるのは政府や中央銀行しかない。彼らの手腕によって、パニックの震度が変わってくる。この先パニック相場が発生したとき、彼らにどの程度の危機管理能力があるかをよく見極めることは重要であろう。
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