マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第152回 ”日銀はいつ利上げを出来るのか?” (2007/09/25)

先週の19日、日銀は政策決定会合を開催し、「8:1」で金利の据置きを決定した。利上げを主張していたのは水野審議委員1人という結果となったわけである。

日銀は今年2月0.25%の利上げを実施したが、このとき福井日銀総裁は以下のような趣旨の発言をした。「成長率が2%台もある堅調な経済の国の金利が、例え物価上昇率がマイナスであってもこんなに低いのは異常である。我々は金利の正常化を目指して今後も利上げを継続していく」所謂金利正常化理論である。しかし、その後福井総裁の発言は微妙に変化していく。彼は、インフレ率がマイナスであっても将来物価が上昇してくると確信できれば利上げを実施するという姿勢に変わった。強硬なタカ派をイメージさせる金利正常化理論から、将来のインフレ予防というやや強気姿勢からの後退をしたことになる。どうして、こうような変化が見られたのかは定かではない。周囲から批判の声が上がっていたのかもしれない。しかし、これで日銀は利上げ早期実施への期待が薄らいだことは事実である。

その後、日銀は利上げをするチャンスに恵まれた。1-3月期のGDPがかなり強い数字となったのである。成長率が高いということは、消費堅調で将来物価が上昇する可能性が高いということを正当化するのには絶好の材料である。日銀は6月に利上げをするチャンスがあった。しかし、もう少し確証を得たいという理由から6月の利上げは見送られ、7月も同様の理由で利上げが見送られた。7月は参議院選挙前であったということも多少考慮されたのであろう。

そして、日銀は恐らく8月に満を持して追加利上げを実施するつもりであったと考えられる。しかし、ここでサブプライムショックがやってきて、金融市場が大混乱に陥った。日経株式も大幅に下落し、円相場も急激な円高に見舞われた。8月17日には金融市場混乱を沈静化させるためFRBが公定歩合0.5%の引き下げを実施した。こうした状況下では、日銀は利上げを見送らざるを得なかった。

その後、市場は落ち着きを見せたが、この間にまた日銀にとっては試練が訪れる。4-6月のGDPが前期比マイナスとなってしまったのである。一部には1-3月期のGDPが強かったことの反動なので、あまり気にする必要はないとの意見も聞かれるものの、やはり前期比マイナスという数字自体は印象が悪い。前述の通り、福井総裁は将来インフレ傾向になってくることが確信できれば利上げを実施するとのスタンスを取っているが、成長率がマイナスでは、将来のインフレ懸念を正当化するのはやや難しい。インフレ率が前期比マイナスという状態の中、利上げを強行するのはかなりの勇気が必要となろう。また福井総裁はリスク要因として米国経済の動向を挙げていた。今回、米国住宅市場の低迷により米国経済が減速する可能性がいよいよ高まっている。日銀が心配していた懸念が現実化しつつあるということである。これも利上げの阻害要因になる公算は高い。

場合によっては、来年の3月の福井総裁退任前に利上げは実施されないかもしれないという状況もでてくるかもしれない。そうなると、中期的には円安要因となってくるのであろう。。

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