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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第148回 ”ブームとなっているときが最も怖い” (2007/08/28)
先月から今月にかけて、金融市場の混乱は多くの投資家の予想をはるかに上回るものとなった。ここまで、相場が激しく動いたのは1998年以来のことであろう。しかし、今回のケースも決して特殊ではなく、過去にも何度でもこんな相場は起きている。(ただ、逆手に取れば、ここまでの大きな変動は数年の一度しか起きない規模のものであるので、今後数年はもう起きないということも考えられるかもしれないが。)
さて、今回の混乱がここまで大きくなってしまったのは、やはり投資家が慢心して強気になりすぎたことが大きな原因であろう。サブプライムローン担保証券への投資に関しても、堅調な世界経済を背景に多少のリスクは問題ないであろうという投資家の甘さが過剰投資に走らせた原因であると思われる。
我々投資家の身近なところで考えると今回関係しているところでは「FXブーム」がいい例ではないかと思う。現在FXが非常に注目を浴びているが、こうした一種のブームができるときは一般的なパターンがある。
まず、それまでの相場が非常に簡単であったため成功者(大儲けをした人)が沢山現れる。今回もここ数年円安傾向が続き、しかも致命的な調整もなかったため、円高になったら、ひたすらナンピンして耐えれば、また円安に戻って、結果的に為替差益も儲かれば、スワップももらえるという日本人投資家にとってはばら色のような相場環境であった。こうした環境下で大儲けをした人が多発するのは極めて自然なことである。
こうした成功者がでてくるとマスコミがほっとくはずはない。以前出版社の人に聞いたが、投資本は「何年で○○倍になる」とか「××円が3年で○○円に」といったような具体的な数字を入れたタイトルにするとよく売れるそうである。お金に関する本であるので、当たり前なのかもしれないが、ともかく出版社は本を沢山売るために「プチスター」を探して、煽り本を沢山出す。また、雑誌、新聞、テレビなどでも特集が組まれる。そうなれば、一般の人の多くが自分でも簡単に儲かるかもしれないと思い込んでしまうのも仕方のない話である。
特に「私でもできた...」などという本を読むといよいよ簡単に儲かりそうな気がして、ちょっとやってみようかなとよく勉強もしないで安易に投資を始めてしまう。こいうケースの中でも最初に簡単な相場で儲かってしまったというケースが最も危険である。よくカジノに行くと、最初は少し儲けさせて相手が強気になって油断しているところで大きな勝負をさせ、そこからお金を巻き上げるということがよく起きていると聞く。他の博打でも同様で賭け事の世界ではこうしたやり方は常套手段である。
市場自体は、そういう意思をもっているわけではないであろうが、やはり投資でも最初に儲かるとついつい強気になって油断してしまい、その後大怪我をするということがよく起きるという点では非常に共通するものがある。
日本国内の株式市場で考えてみても、1980年代後半にバブルに浮かれて、株式を買い漁ったことでその後の暴落を招いたのはあまりにも有名である。しかし、そうした経験をしていながら、1999年から2000年にかけて、ITバブルでまたしても痛手を負った投資家が多発した。更にその数年後、新興市場のブームが起き、ライブドア事件をきっかけに急速にブームが冷え込んでいった。人間は時間が経つと「喉元過ぎれば熱さを忘れて」しまい同じことを繰り返すのである。今回のFXブームもこの株のブームと基本的には同じ構造である。(ただ、為替市場は非常に大きな市場であるため、前述のいくつかのバブルの後で冷え切ってしまった日本の株式市場とは違うとは思うが)
ブームになっているときというのは、得てして実態よりも行き過ぎてしまっているケースが多いので注意をしなければいけないということである。市場環境は円安をもたらす状況は続いている。しかし、物事には程度問題がある。投資家が強気になりすぎてしまったことで、あまりにスピードが速くなりすぎていると、大きな反動がくるリスクがより高まる。また、今回もブームになりすぎると反動が起きるということを体験させられた。そもそも、投資の世界で1年で2倍、3倍になること自体が異常なんだという冷静な認識を持っておけば、安定した投資を続けることができるのではないかと思う。
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