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マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー
第147回 ”安定した価格が常に市場にあると思ってはいけない” (2007/08/21)
今回市場が大混乱に陥った際に、証拠金取引業者が売り買いのスプレッドを広げたことに対する苦情のコメントが散見されたので、今回はこれに対して説明をしたい。
為替市場の取引は、殆どのケース最終的に銀行間の市場であるインターバンク市場に持ち込まれる。外貨証拠金会社の場合も、顧客からの注文を受けると、それに対して銀行と通じてカバー取引を行うのが通常である。一部には、銀行の提示するレートに多少手数料を乗せて投資家にそのまま提示しているケースもある。
インターバンク市場においては、通常時は安定したスプレッドでレート提示が行われているため、証拠金会社も安定したレート提供を銀行から受けられる。従って、投資家にも安定したレートの提供が可能となる。
しかし、インターバンク市場も市場が混乱してくると、売り買いのレートが非常に不安定になってくる。かつては売り買いのスプレッドが100ポイントも開くようなケースもあった。そういった状況になった場合、当然銀行は証拠金会社に対して、市場レートに沿ったレートの提示をするので当然スプレッドは大きくなる。
カバーすべき市場のスプレッドが大きくなってしまった場合、証拠金会社も通常のレート提示を投資家に提供し続ければ、顧客取引のカバーで損失を被る。例えば、インターバンク市場でのドル円が114円80-90銭となっているときに、顧客に114円82-87銭と提示していれば、まともにカバーをすれば、必ず損がでてしまう。従って、顧客向けのスプレッドも広げる必要がある。市場原理に基づく極めて合理的な行為である。それに対して、文句をいうのは、野菜の値段が高騰しまったので、値上げをしたスーパーに文句を言うようなものである。
逆に言えば、そうした状況でもスプレッドを拡大しないで、顧客に安定したサービスを提供しようとしている業者は投資家に対して特別の待遇を提供していると考えるべきである。
市場が混乱すれば、取引のコストは高くなるというのは当たり前のことであり、それは市場規模の小さな通貨ほど顕著になってくる。それでも、為替市場は他の市場に比べれば健全である。
例えば、株式市場通常は安定的に売り買いの値があったとしても、特別な材料がでた場合などは、ストップ安、ストップ高の状態になることがある。ライブドアの事件で、投資家がライブドア株を全く売れない状態が続いたことは記憶に新しい。また商品市場でも、値幅制限が設けられているために、やはりストップ高、ストップ安の状態が発生する、ときには何日間も取引ができないような状態に陥るケースもある。それと比較すれば、為替市場では、例えスプレッドが多少開いたとしても常に売り買いができる状態にあるわけで、他の市場に比べれば余程恵まれている。まず、このことを理解しなければいけない。
もう1点は、危機管理の問題である。先日柏崎原子力発電所で地震による放射線もれが発生した。想定外の規模の地震が発生したことが原因であったといわれている。これは金融ビジネスにおいても同様ではないかと思う。システムの許容量などを通常時をベースに考えていると、市場の混乱時に対応ができなくなり、システムダウンを起こしてしまうことがある。しかし、それも、放射線漏れと同様想定していないほどの相場変動になったという言い訳は通らないであろう。
我々ユーザー側としては、まさかのために備えて、複数の口座を持つ等の対応は事前に行っておく必要があるだろう。
そもそも、今回の値動き自体が投資家にとっては、驚きであったろうが、こんなことは過去何度も起きている。ある日突然、通常より値幅が大きくなってリスクが拡大する。市場の流動性が悪化してスプレッドが拡大する。業者のシステムに障害がおきる。さまざまなリスクがいつも潜在的に存在していることを十分理解して、今後の投資、トレードに向かっていただきたいと思う。
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