マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第146回 ”不安心理が投資家の行動を不合理にさせる” (2007/08/14)

7月に始まったハリケーン「サブプライムローン」は勢力が衰えないばかりか、益々周囲を巻き込んで各地に甚大な被害を及ぼしている。今回のハリケーンは米国で発生したが、米国市場をかき乱した後は、欧州方面に移動し、現在欧州の金融市場を混乱させている。

現状の金融市場の状況はこんな感じであろうか。
さて、このように災害(今回は人災であるが)の影響が予想よりはるかに大きくなってしまうと被害者の投資家はともかく被害を最小限に食いとどめようをして、それまでの理論だって考えていた投資をともかく一旦手仕舞いをしなければと考える。こうした状況においては、それまで、相場のトレンドを作っていた要因は(一時的ではあるにしろ)全く無視されてしまう。

こうした傾向は経済指標などに対する市場の反応にも現れる。
直近にでた指標などの中から少し例を出してみよう。昨日、日本の第2四半期GDP速報値が発表になった。前期比年率で+0.9%の予想であったが、結果は+0.5%と予想を大きく下回った。今回の金融市場の混乱を受けて、8月23日の政策決定会合で日銀は利上げを実行できるのかどうかが微妙になってきた中でのGDPの発表であったので、この結果によって、日銀の利上げに黄色信号が灯ったということは十分に考えられる。そのため、本来であれば指標の結果を受けて円安に向かうはずであるが、現実はそうはならなかった。

もう1つ昨日の例を挙げて見よう。

昨日豪準備銀行が金融政策に関するレポートを発表した。その中でインフレ率が年の後半に上昇し、場合によってはインフレターゲットの上限である3%にまで達するとの見方を示した。また、2008年度の景気見通しでは成長率が4%台に達するという非常に強気の見方を示した。実質的な利上げ宣言である。サブプライムローン問題が発生する前の市場環境であれば、1日で豪ドル円が2-3円は上昇してもいいような相場展開であった。しかし、今回は発表後こそ豪ドルは一時的には強含みで推移したものの、しばらくして反転し、結局は大きく下落してしまうこととなった。

これが投資家心理である。それまで、投資家は円の低金利に目をつけて円を売り、資源価格の上昇を見て、資源国通貨を買い、欧州経済の好調さを見て、欧州通貨を買い、新興国市場の急成長を見て、新興国通貨を買うという投資行動をしてきた。その環境に何か変化があったか? 何も変化はない。

しかし、今回のサブプライムローンの問題で、ファンダメンタルズを反映した新規投資ではなく、リスク回避のためのリスク資産の清算(ポジションの手仕舞い)というほうを投資家が選択しているためにこういう反応となってしまうのである。こうなってしまうと、通常のファンダメンタルズは全く機能しなくなる。ともかく投資家がもう安全だと感じるまでは、こうしたリスク回避の動きは止まらないであろう。平時の投資家の行動パターンと有事の投資家の行動パターンは優先するものが変わるために、当然違ったものとなってくるということを今回改めて感じた。

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