マット今井『トレーディングのつぼ』バックナンバー

第142回 ”ニュージーランド準備銀行の苦悩” (2007/07/17)

今週、ニュージーランドの消費者物価指数第2四半期分が発表になった。市場予想は年率で+1.8%程度であったが実際は+2.0%。第1四半期の+2.5%よりはかなり低下したものの、予想を上回ったことで、追加利上げへの期待が高まり、ニュージーランドドル(NZドル)が続伸した。 ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、今年に入って2度為替市場でNZドル売り米ドル買い介入を実施している。そのときのNZドル・米ドル相場の水準は0.75台から0.76台であった。しかしその後もNZドルの上昇は止まらず、7月17日時点でNZドルは0.79台にまで上昇している。こうした動きに対して、RBNZは静観の姿勢となり、すっかりおとなしくなってしまった。このような一貫性のない行動になってしまうのには、そもそもRBNZが苦しい立場にあることが背景にある。

まず、金融政策と為替政策の整合性の問題である。ニュージーランド準備銀行は今年に入ってから0.25%の利上げを3度実施した。目的はインフレを抑制するためである。最近の為替相場は金利差に敏感に反応する。更に投資家は高金利の通貨を嗜好する傾向がある。ニュージーランドドルのように主要国の中で最も金利水準が高い通貨が利上げをすれば投資家によるニュージーランドドル買いを誘発し、ニュージーランドドルが上昇してしまうのは自明の理である。つまり、現在のNZドル高はRBNZの利上げがもたらしたものであるということができる。自分達の利上げによって強くなった通貨を介入で止めようとするという行為自体がまず正当化されない
また、本来自己通貨が高くなることは輸入コストの低下をもたらすため、インフレ抑制効果がある。つまり、金利を引き上げるということと通貨が強くなるということはインフレ抑制に同様の効果があるということである。従って、インフレ抑制のために利上げを実施している中央銀行にとって通貨高は本来歓迎すべきことなのである。

もう1つの観点は財政面からの問題である。通常中央銀行が自国通貨の売り介入をする場合、債券を発行して資金を調達し、これを活用して介入を実施する。NZドルで債券を発行して、NZドル売り米ドル買い介入を実施した場合、その後、高金利のNZドルで金利を支払って米ドルの運用益を受け取るということになる。つまりこの取引では金利は逆ザヤになるわけである。これでは、中央銀行は介入をすればするほど金利で損をすることになる。こういう環境下では、公的な資金を預かる中央銀行としてはむやみに介入を実施することはできないという苦しい台所事情があるわけである。  更に問題なのは、今回のNZドル高の背景には米ドル安があるということである。米ドルは対円で見るとそうでもないが、他の多くの通貨に対しては、歴史的な下落をしている状態にある。NZドル高の背景に米ドル安があるとしたら、ニュージーランド単独でこのドル安を阻止することは困難である。いくらRBNZが介入をしたとしても孤軍奮闘で全く効果がでないという状態となってしまうであろう。

以上のように、金利差相場の中で高金利通貨であるニュージーランドドルの金利が上昇し、そのためNZドルも上昇するという状態を人為的に止めることは困難であるという結論に達する。この通貨が下落するときは、金利高によって景気が後退し、それによりインフレ圧力が低下してRBNZが利下げサイクルに入るときとなると考えるのが自然である。 もちろん、対円で考える場合は円金利の動向も考慮に入れるべきではあるが、NZドルサイドから考えると、こういう結論となるのであろう。


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